第809話 ロランVSリョフ
(あれがリョフ……なんて威圧感だ、ゴウカさんにも負けていない……!?)
ゴウカに匹敵する威圧感を放つリョフに対してナイは無意識に身体を震わせ、その一方で他の騎士達に至っては顔色を青ざめ、身体が震えて思うように動けない。しかし、ロランだけは態度を変えずに双紅刃を片手に歩み寄る。
リョフは近づいてくるロランに対して雷戟を構え、今度こそシャドウの邪魔が入らないように意識を強く保つ。昼間の時は途中で死霊石に蓄積した魔力が尽きかけてしまったが、現在は違う。昼間の時よりもリョフの肉体に埋め込まれた死霊石は魔力が込められており、これで途中で魔力切れを引き起こして逃げる事態は陥らない。
「リョフ……その名前は何度も聞いたが、こうして顔を合わせるのは初めてだな」
「ふんっ……大将軍がどれほどの実力か、楽しませてもらおうか」
「抜かせ、小僧がっ!!」
ロランは双紅刃を構えると、その場で回転させる。彼の双紅刃は回転を加える事に柄の両端に取り付けられている刃に地属性の魔力が送り込められ、魔力を刃に宿す。回転が早ければ早いほどに魔力が溜まりやすく、ナイの攻撃さえも弾かれる威力を発揮する。
回転する事に刃に紅色の魔力を宿る光景を見てリョフは直感で危険を感じとるが、彼は逃げも隠れもせずに雷戟を構える。そしてロランはリョフを倒すには十分な魔力が蓄積されたと判断すると、彼に目掛けて突っ込む。
「ぬぅんっ!!」
「ぐうっ……!?」
『おおっ!!』
ロランの攻撃をリョフは正面から受け止めるが、あまりの威力に抑えきれずにリョフの身体は大きく後退した。その光景を見た騎士達は歓声を上げるが、その一方でロランの方は眉をしかめた。
渾身の一撃を受けたリョフは後退したが、この際に彼は屋敷の建物の壁に衝突しかけるが、その前にロランは地面に戟を突き刺して衝突寸前で停止する。並の人間ならば鎧を纏っていても衝撃だけで骨が砕けてもおかしくはないが、リョフは何事もなかったように雷戟を構えた。
「良い一撃だ……ここまでの重い攻撃はゴウカでも出せなかったぞ」
「馬鹿なっ……!?」
「そんなっ……」
自分の攻撃をリョフが正面から受け切った事にロランは動揺し、先の一撃はナイですらも岩砕剣と旋斧を同時に魔法剣を発動させて防いだ攻撃である。しかし、リョフは特に技も何も発動させず、攻撃を受ける事に成功する。
リョフは雷撃を振りかざし、今度はロランへと接近する。先の攻撃でロランは刃に蓄積させた魔力を使い果たし、もう一度魔力を込める必要があったが、その隙を逃さずにリョフは猛攻を仕掛けた。
「ふんっ!!」
「ちぃっ!!」
リョフが繰り出した刃に対してロランは双紅刃を振りかざし、攻撃を弾き返す。魔力を蓄積させずともロラン自身の技量も高く、ゴウカにも匹敵する威力のリョフの猛攻を彼は全て受け流す。
「いいぞ、その調子だっ!!もっと俺を楽しませろ!!」
「調子に乗るなっ……亡霊がっ!!」
二人のあまりの戦いぶりに他の人間達は介入する事が出来ず、ナイでさえも迂闊に手出しできなかった。だが、リョフとロランの攻防は徐々にロランが押され、防戦一方に陥る。
(くっ……想像以上だ、これほどの剣士だったとは!!)
リョフの繰り出す攻撃全て一撃必殺の威力を誇り、一瞬でも気を抜けばロランは敗北する事は必須だった。だが、それでもロランは退く事はせず、大将軍の意地として最後まで諦めずに戦う。
ロランは周囲の光景を確認し、この場所は彼が幼少期に暮らしていた屋敷であり、昔と全く変わっていない。それを利用してロランは場所を移動すると、ちょうど花壇が存在する場所に移動した。
(ここだ!!)
屋敷内の敷地に存在する花壇を利用し、彼は地面に双紅刃を突き刺す。そして地属性の魔力を送り込むと、地面の内部に衝撃波を送り込んで大量の土砂と埋まっていた花を利用して目眩ましを行う。
「喰らえっ!!」
「ぬおっ!?」
突如として舞い上がった土砂と花びらに対してリョフは呆気にとられ、その隙を逃さずにロランは距離を置くと、今度は双紅刃を横向きに構えて技を繰り出す。
「閃紅斬!!」
「ぐがぁっ!?」
「やった!?」
横向きに放たれた双紅刃の一撃により、リョフは正面から受けて今度こそ吹き飛ぶ。その光景を見たナイ達は勝利を確信したが、空中に飛ばされた状態からリョフは地面に戟を突き刺し、態勢を整える。
ロランの一撃を受けてもリョフは倒れず、身に付けていた漆黒の鎧の一部に罅割れがはいるが、即座に彼の身体から放たれる闇属性の魔力が罅割れの部分に付着し、やがて罅割れが消え去る。それを見たナイは驚き、まるで鎧が再生したかのように罅割れが消えた事に戸惑う。
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