幕間 《飛行船では……》

――白狼騎士団に同行する予定だったハマーンだが、彼はある事が気になって工場区に保管されている飛行船の元へ向かう。この際、彼の他にもアルトが同行していた。弟子としては師匠の役に立ちたいと思い、彼と共に飛行船へ赴いて調査を行う。



「くそっ……やられていたか!!」

「師匠、何か分かったんですか?」

「飛行船の動力が盗まれておる!!おのれ、いったい誰の仕業じゃ!!」

「飛行船の動力?」



ハマーンは飛行船の内部を検査した結果、船の後部に取り付けられているの噴射口を確認した所、飛行船を動かすための動力源が奪われている事を伝える。


この飛行船は魔石の力を利用して浮かばせる事が出来るが、飛行の際には二種類の魔石を必要とする。一つ目は飛行船を浮かせる風属性の魔石、そしてもう一つは飛行船を動かすための火属性の魔石である。



「この飛行船の動力源は浮揚石と呼ばれる特殊な魔石が使用されておる。そいつに風属性の魔石の魔力を送り込む事で飛行船を浮かせるが、肝心の飛行船を動かす動力源が奪われた!!」

「そ、その動力源とはいったいなんですか?」

「……火竜の経験石じゃ」

「火竜!?あの火竜ですか!?」



アルトはハマーンの言葉に驚愕し、まさか飛行船の動力源の正体が火竜の経験石など彼でさえも知らなかった。この事実を知っているのはハマーンの他には数名しかおらず、彼でさえも飛行船を操縦する際に調べた時に気付いたという。



「火竜の経験石と言っても遥か昔、火竜の化石から代物じゃ。魔力を殆ど失い、もう使い物にならないかと思われたが……経験石を飛行船の動力源として取り組み、火属性の魔石を利用して魔力を送り込む事で火竜の経験石に魔力を蓄積させ、噴射口から蓄積した火属性の魔力を放射させる事で飛行船を動かしておったのだ」

「そ、そうだったんですか……」

「煌魔石と同じように魔力を失った魔石でも、外部から魔力を注入する事が出来る。しかも火竜の経験石となればそんじょそこらの火属性の魔石よりも遥かに性能は上……だからこそ飛行船の動力源としては最適だったのだが、いったい誰の仕業じゃ!?」

「お、落ち着いて下さい師匠!!」



ハマーンは苛立ちを抑えきれずに叫ぶが、ここで怒鳴った所で状況は変わらない。何者が火竜の経験石を盗んだのかは不明だが、今は他にするべき事がある。



(魔力が蓄積されていない火竜の経験石などただの水晶の塊でしかない。盗んだ奴は何を考えておる……まさか、これもシャドウの仕業か!?)



何者かが火竜の経験石をン盗み出したのかは不明だが、ハマーンは嫌な予感を覚え、アルトに声をかける。



「儂等は一旦王城へ戻るぞ!!他の物にもこの事を知らせなければ……」

「はい、分かりました……ん?」

「どうした?」

「いえ、誰かの足音が聞こえたような……」

「足音?こんな場所でか?」



この状況下で飛行船に立ち寄るような人間は普通はおらず、アルトの言葉にハマーンは訝し気な表情を浮かべるが、直後にアルトは何かに気付いた様に大声を上げた。



「先生!!上を見てください!!」

「上じゃと……うおおおっ!?」



ハマーンはアルトの言葉を聞いて造船所の天井を見上げると、そこには予想外の生物が張り付いていた――

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