第794話 ロランVSナイ
「がぁああああっ!!」
「くぅうっ……うわぁっ!?」
「そんなっ!?」
ロランの攻撃を受け止めようと旋斧と岩砕剣の刃を重ね合わせたナイだったが、ロランの所有する双紅刃が振り下ろされた瞬間、強烈な圧力が襲い掛かる。
攻撃を受けた時にナイは初めて理解したのは、ロランの双紅刃は旋斧と同様に地属性の魔力を外部に放出する事により、重力を発散させる力を持つ事だった。しかも回転する事に魔力は強まり、当然だが外部に放出される重力の圧力も強まっていく。
双紅刃から放たれる重力によってナイの身体は建物の壁にめり込み、やがて壁を崩壊させて倒れ込む。その様子を見てロランは双紅刃を止めると、やがて両端の刃の地属性の魔力も消え去る。
「……期待し過ぎていたか」
「ロ、ロラン大将軍……何てことを!!」
壁を崩壊させて建物の中に入り込んだナイを見たリノは彼が死んだと思い込み、ロランを攻めようとした。しかし、即座に瓦礫を押し上げ、ナイは姿を現す。
「くぅっ……」
「何!?」
「い、生きてる!?」
「馬鹿な、あの一撃を受けて……」
「嘘だろ……!?」
ナイが起き上がった事にロランも他の人間達も驚くが、ナイは再生術を発動させてどうにか怪我の治療を行う。壁が崩壊させるほどの強烈な一撃だったが、ナイはどうにか怪我を治して起き上がる事は出来た。
現在のナイは防具は身に付けていないが、彼は子供の頃から強敵と戦い、その度に何度も死にかけていた。しかし、死線を乗り越える度に彼の肉体も成長し、人並外れた耐久力を誇る。
彼が覚えた技能の中には「受身」や「頑丈」といった肉体の耐久性を上昇させる技能も存在し、更に「剛力」や「怪力」といった筋力を高める効果を持つ技能も覚えている。そのお陰でナイは防具が無しでもロランの一撃を耐える事は出来たが、同時に相当に魔力を消耗した。
(今のは危なかった……意識を失っていたら死んでいたかもしれない)
意識が僅かに残っていればナイは再生術で怪我を治せるため、どうにか持ち直す事はできた。しかし、ロランの一撃は想像以上に凄まじく、次に同じ攻撃を受けたら今度は耐え切れる自信などない。
その一方でロランはナイの実力を見誤っていたと判断し、彼は自分の攻撃を受けて立ち上がる人間など初めてだった。ロランの渾身の一撃を受けて起き上がった相手など、後にも先にも一人もいない。
「面白い……ならば次は耐え切れぬ一撃を与えてやろう」
「くぅっ!?」
「ナイさん、逃げて!!」
ロランは再び双紅刃を回転させ、先ほどよりも回転速度が凄まじく、刃に紅色の魔力がまるで炎のように纏う。しかも今度はロランも本気らしく、彼は全身から白炎を迸らせた。
「がああああああっ!!」
「ロラン大将軍!?」
「いかん、離れろ!!大将軍は本気だぞ!!」
強化術まで発動させたロランは双紅刃を構え、それを見たナイは表情を青ざめる。次の一撃でロランは本気でナイを仕留めるつもりらしく、それに対してナイはどうするべきか考える。
(逃げても無駄だ、きっと追いかけてくる……なら、戦うしかない!!)
仮にナイが全力で逃げたとしても今のロランからは逃げ切れるとは思えず、ナイも全力の一撃を繰り出すために強化術を発動させた。
「うおおおおっ!!」
「ふっ……行くぞぉっ!!」
自分と同様に強化術を発動させたナイを見てロランもナイが覚悟ができたと判断すると、彼は更に双紅刃の回転速度を高める。それに対してナイは両手の大剣を重ね合わせ、自分も最大の一撃を繰り出す準備を行う。
地属性の魔法剣を扱うロランに対し、ナイも両手の大剣に地属性の魔力を送り込み、リザードゴブリンを倒した一撃を繰り出す事にした。今のナイが繰り出せる最強の剣技でロランを打ち破る、それ以外に生き残る方法はなかった。
「うがぁああああっ!!」
「うおおおおおっ!!」
本物の猛虎の様な咆哮を放ちながら迫りくるロランに対してナイも正面から大剣を繰り出し、この際に紅色の刃が纏った二つの大剣と両剣の刃が重なる。周囲に凄まじい衝撃波が拡散し、ロランとナイの身体は同時に吹き飛ぶ。
二人は地面に刃を突き刺して衝撃を殺すが、どちらも10メートル以上も吹き飛ばされ、やがて勢いが止まると二人は膝を着く。どちらも魔力を使い果たし、強化術の反動に襲われる。
「ぐあっ……!?」
「ぐふぅっ……!?」
「あ、相打ちか!?」
どちらも生きてはいるが、二人とも動ける状態ではなく、その様子を見ていた者達は二人は引き分けたかと思った。しかし、ロランになくてナイにある物、それは魔力を回復させる魔石の存在だった。
「ふんっ……!!」
「た、立ち上がったぞ!?」
「まさか……!?」
ナイは煌魔石に手を伸ばし、魔石から魔力を吸収してどうにか再生術を発動させる。それで肉体の痛みを抑えつけると、改めてロランと向き合う。ロランの方は立ち上がれず、悔し気な表情を浮かべていた。
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