幕間 《兄弟》
――シャドウによる妨害によってリョフは死霊石に封じられた闇属性の魔力を大量に消耗し、もうまともに身体を動かす事も出来なかった。そして彼はリョフが隠れ家として利用している下水道に赴き、王都に存在する白面の地下施設に辿り着く。
白面はクーノだけではなく、王都の地下にも拠点をいくつか作っており、これらは宰相の協力があったからこそ作り出された。その拠点の一つにシャドウは隠れており、そこにリョフは訪れた。
『シャドウ、貴様……!!』
「……よう、相棒。散々な目にあったな」
『なっ……!?』
シャドウの元に辿り着いたリョフは彼に怒りをぶつけようとしたが、隠れ家に存在した彼の姿を見て驚愕した。そこにいたのは老人であり、もうシャドウは自分の姿を覆い隠すのを止めていた。
実を言えばリョフはシャドウの真の姿を見るのは初めてであり、まさか彼が老人であったなど思いもしなかった。だが、リョフは自分が死んでからどれほどの年月が経過しているのかも分からず、年老いたシャドウを見てもそれほど動揺はしない。
『貴様……随分と年齢を重ねているな』
「そういう事だ、言っておくが俺はお前よりもずっと年上だぞ……」
『ふんっ……普段、身体を隠してるのはその老いぼれた姿を見られるのが嫌だからか』
「……さあな」
リョフの言葉を聞いてもシャドウは上の空で返事を返し、どうにも心ここにあらずといった彼の態度にリョフは疑念を抱く。先ほどまで自分の身体を好き勝手に操られていた事にリョフは怒りを抱いていたが、今のシャドウは覇気が感じられない。
『どうした?何を考えている……俺を使って何か成し遂げるつもりじゃなかったのか?』
「成し遂げる、か……そうだな、そうだったな」
シャドウはゆっくりと首を動かし、部屋の隅に立ち尽くする老人を見つめる。この時にリョフは初めて自分達以外に老人が立っている事に気付き、しかもその老人はシャドウと容姿が良く似ていた。
武人であるリョフが気づかない程にその老人は気配を完全に絶ち、常に視線はシャドウに向けていた。リョフはこの老人が何者なのかをシャドウに問い質す。
『誰だ、その男は?』
「……ただの抜け殻だ、自分の理想を追い求めて、あっさりと味方に裏切られて心が折れた男だ。そいつはもう、何も出来ない」
『なに?』
リョフはシャドウの言い回しに疑問を抱き、老人に視線を向ける。このときにリョフは何かに気付いた様に表情をしかめるが、シャドウはそんな彼に告げる。
「……とりあえず、今のうちに休んでおけ。もうすぐに日が暮れる、その時は思う存分暴れさせてやるよ」
『何だと……』
「夜を迎えれば……俺の世界だ、誰にも逆らわせない」
シャドウはリョフに対して不敵な笑みを浮かべるが、そんな彼を見てリョフは黙り込む――
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