幕間 《冒険者ギルドでは……》

――王都の各地にてナイ達が白面や魔物と争う中、冒険者ギルドの方にも市街地に魔物や白面が現れたという報告は届いていた。しかし、彼等の前に警備兵が立ちふさがり、冒険者達がギルドの敷地内から出ていくことを認めない。



「おい、退けよ!!何であんたらが邪魔をするんだ!?」

「静まれ!!の命により、王都内の全ての冒険者はギルド内へ待機を命じる!!これは王命であるぞ!?」

「な、何だと……!?」



警備兵達は書状を取り出し、その書状には間違いなく王家の印が記されていた。それを見せつけられては冒険者達は何も出来ず、王命に逆らった人間は例外なく死刑となる。


しかし、冒険者達からすれば街を守るはずの警備兵が自分達を閉じ込めるかのように出現し、しかも白面や魔物が市街地に現れた事は彼等も知っているはずなのに動こうとしない。この現状にギルドマスターのギガンは不満を抱き、警備兵に怒鳴りつけた。



「これは何の真似だ!!城下町の住民が危険に晒されているというのに俺達をここへ閉じ込めるつもりか!?」

「ひいっ!?」

「だ、黙れ!!これは王命だぞ、逆らえばお前の命だけではなく、この場に存在する冒険者全員がどうなるか分かっているのか!?」



警備兵はギガンの気迫に押されそうになるが、彼等も王命を伝える様に言い渡された以上は退く事は出来ず、書状を見せつける。


この書状は当然だが宰相が用意した代物であり、意識不明の状態の国王がこんな命令を下すはずがない。だが、書状を見せつけられては冒険者は動く事が出来ない。



(くそっ……いったい、何が起きている!!何だ、この嫌な胸騒ぎは……!!)



ギガンも現在の王都は危機的状況に陥っている事は理解しているが、彼の直感だがこれからとんでもない事態が王都に襲い掛かるような気がした。今朝から彼は胸騒ぎを覚え、この王都に恐るべき事件が起きるような気がした。



「白面と魔物の対処は我々が行う!!お前達冒険者はギルドにて待機しろ、これは王命だぞ!!」

「ふざけるな!!ここでじっとしているというのか!?俺達の家族が今正に危険な目に遭わされているのかもしれないんだぞ!?」

「そうだそうだ!!」

「どうして俺達が出向いたらいけないんだ!!」

「じょ、城下町の治安は我々が守る!!だからお前達は大人しくしろ、言っておくが一人でも逆らえば容赦はせんぞ!?」



冒険者ギルドは商業区に存在し、彼等を取り囲んでいるのは商業区の警備兵を纏める警備隊長であった。彼は国王からの書状を見せつけ、その場を部下に任せて離れようとした。その姿にギガンは違和感を覚え、まるで逃げる様に立ち去ろうとする彼に疑問を抱く。



「畜生、国王様は何を考えている!?そんなに俺達が信用できないのか!?」

「まあまあ、仕方ないだろ……ここは大人しくするしかないぜ」

「そうだな、怪我した奴等の世話もしないとな……」

「はあっ!?本気で言っているのか!?」



冒険者達の中にも王命に不満を抱く者は多いが、反面に命令に従おうと促す冒険者もちらほらと見られた。そんな彼等を見てギガンは更に違和感を抱き、彼はギルドの職員にも視線を向けた。


ギガンが振り返ると職員の中には何人かが険しい表情を浮かべながら顔を伏せ、あからさまに態度がおかしかった。その事にギガンは冒険者ギルド内に何者かと繋がる人間達がいる事に気付き、焦りを抱く。



(これはいったい……何が起きている!?)



既に宰相の手は冒険者ギルドにも伸びており、職員や冒険者の中には彼に従う者も多数存在した。その事にギガンは気付き始めるが、既に時は遅かった――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る