第771話 最終進化形態
「わ、私達でさえも倒しきれなかった魔物を一人で倒したんですの!?」
「た、大したものだな」
「まあ、本当にぎりぎりでしたけど……」
ドリスとリンからすれば自分達でさえも倒す事が出来なかった魔物達を一人でナイが倒したという言葉に動揺を隠せず、今回ばかりは言い訳は出来ない。
もう完全にナイの力は二人を越えていると言っても過言ではなく、恐らくだが王国騎士の中で彼と同等かそれ以上の実力を持つ人間が居るとすれば猛虎騎士団のロランしか有り得ない。
(今のナイさんとロラン団長が戦ったら……どちらか勝つのか全く想像できませんわ)
(単純な身体能力ならばナイが勝るだろうが、ロラン団長も歴戦の猛者、そう簡単に敗れるはずはないと思うが……いや、今はそれどころではないか)
ロランの実力は間違いなく国内最強であり、彼に勝てる騎士や将軍は存在しない。ロランと張り合えた人物といえば「ジャンヌ」しかおらず、そのジャンヌが亡くなった今となっては彼に勝る騎士はいない。
しかし、ドリスとリンの見立てではナイならばロランに対抗できる力を持っていると考え、もしも二人が戦う時が訪れればどうなるのか気になる所ではある。しかし、今はそんな事を考えている暇はなく、急いでハマーンの鍛冶屋へ向かう。
「ほれ、話し込んでいる場合ではないぞ!!さっさと急がんか!!」
「はい!!あ、でも怪我している人は無理をしない方が……」
「問題ない、この程度の怪我で戦えない人間などここにはいないな!?」
『はっ!!』
アッシュの言葉に捕まっていた人間達は声を合わせ、彼等は宰相から脅威と判断された優秀な武芸者達であり、多少の怪我で弱音を吐くような人間はいない。
「行くぞ、何としても宰相を捕まえ、そしてオロカとシャドウも捕まえるぞ!!」
『おおっ!!』
「うおっ……凄い気迫だな」
「うむ、しかしこのまま無事に行かせてくれるといいのだが……」
ガオウとハマーンはアッシュの気迫に気圧されるが、この時にハマーンは既に嫌な予感を抱いていた。今の所は捕まっていた人間も全員解放され、ナイと合流できた時点までは順調に進んでいる。しかし、敵がそうやすやすと反撃を許すのか不安を抱く。
――この時のハマーンの予感は的中し、闘技場を抜け出すとそこには信じられない光景が広がっていた。それはナイによって倒されたと思われたはずのゴブリンキラーがリザードマンの死骸を貪っていた。
「なっ……!?」
「あ、あれは……昨日、私達に襲い掛かってきた奴ですわ!?」
「倒したんじゃないのか!?」
「く、食ってやがる……ゴブリンが、あのリザードマンを……!?」
ゴブリンキラーは全身が血塗れになりながらもリザードンの死骸を喰らいつき、徐々に肉体が変化していく。先の戦闘でナイは確実にゴブリンキラーの心臓を貫いたはずだが、ここでナイは過去にアルから教わった事を思い出す。
――魔物の体内には必ず「経験石」が存在し、この経験石は魔物にとっては心臓以上に重要な器官であるとナイはアルから教わった。恐らくだがゴブリンキラーは心臓を失っても経験石の破壊は免れた事により、息を吹き返してリザードンという餌に喰らいついたのだ
リザードンを食したゴブリンキラーは徐々に肉体が変形し、全身に生えていた毛皮が抜けといていき、やがてトカゲの尻尾のような物が生えてくる。今度は毛皮の代わりに鱗が全身を覆い込み、更なる力を得て進化を果たしたゴブリンキラーは振り返る。
「シャギャアアアアッ!!」
「くぅっ!?」
「う、うるせぇっ!?」
「なんという咆哮を……!?」
より凶悪な進化を果たしたゴブリンキラーは全身が緑色の鱗に覆われ、尻尾までも生やしてしまい、更には顔面の形もよりトカゲに近くなる。破損していたはずの牙と爪は瞬く間に生え変わり、最早ゴブリンとは全くの別物のような姿へと変貌した。
ナイは自分が確実にゴブリンキラーの始末をしていなかった事を悔やみ、他の者は武器がないので戦えないため、この魔物の相手は自分が使用と前に立つ。そしてゴブリンキラーの方もナイを確認すると、憎しみに満ちた表情を浮かべる。
「シャアアッ!!」
「皆、下がって下さい!!」
「ナイさん!?」
「すまんっ!!ここは頼むぞ!!」
「すぐに武器を取ってくるからな!!」
迫りくるゴブリンキラーに対してナイは両手に大剣を構え、抑え込むために刃同士を重ねてゴブリンキラーの体当たりを受け止める。膂力の方も上昇しているらしく、剛力を発動させたナイでも体当たりを抑えきれずに徐々に後ろに下がってしまう。
その光景を見ていた他の者達はナイ達の戦闘に巻き込まれない様に離れ、急いでハマーンの武器屋へと向かう。彼等がハマーンのの武器と防具を回収するまでの間、ナイはリザードマンの特徴を吸収したゴブリンキラーを抑えつける必要があった。
※私の作品のゴブリンはどうしてここまで強いのか……(;´・ω・)
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