第772話 リザードゴブリン
「シャギャアアアッ!!」
「うわぁっ!?」
リザードマンの死骸を喰らった事でゴブリンキラーは更なる力に芽生え、剛力を発動させたナイでさえも力負けし、徐々に後ろに追い詰められていく。
最早ゴブリンキラーの領域を越えた「リザードゴブリン」によってナイは後方に存在する建物にぶつかると判断したナイは足元に視線を向け、一か八かの賭けに出た。
「このっ!!」
「ギャウッ!?」
ナイは瞬動術を利用してリザードゴブリンの顎に向けて膝蹴りを繰り出し、一瞬だけリザードゴブリンが怯んだ隙を逃さず、今度は後方に目掛けて跳躍を行う。そして建物の壁を足場にして三角蹴りの要領でリザードゴブリンに空中から切りかかった。
「だああっ!!」
「シャアッ!?」
リザードゴブリンは斬りかかってきた二つの大剣の刃に対してトカゲの如く四つん這いになり、攻撃を躱す。そのままリザードゴブリンの頭上を通り抜けたナイは着地すると、リザードゴブリンを倒すために両手の魔剣に魔力を送り込む。
(こいつには生半可な攻撃は通じない……なら、全力の二撃を叩き込むしかない!!)
岩砕剣には地属性の魔力を送り込んで重量を増加させ、旋斧には闇属性の魔力を送り込み、二つの大剣の刃が黒色と紅色に染まる。その光景を見てリザードゴブリンは警戒したように後退る。
闇属性の魔法剣に関してはナイも使用は避けたいが、相手は今までに戦ってきたゴブリンの中でも一番得体が知れず、確実に倒さなければならない。
「はぁあああっ!!」
「シャギャアアアッ!!」
ナイが駆け出すとリザードゴブリンは咆哮を放ち、この際に胸元の部分を膨らませ、信じられない事に口元から火炎を迸らせる。それを確認したナイは直感で危険を悟り、その場で跳躍して上空へと避難した。
「アガァアアアアアッ!!」
「
信じがたい事にリザードゴブリンは火炎の吐息を吐き出す能力も持つらしく、先ほどまでナイが立っていた位置に火炎を吐き出す。しかもリザードマンとは違う点はリザードゴブリンはナイから視線を離さず、首を動かして火炎を放つ。
「シャギャアアッ!!」
「うわっ!?」
上空で逃げ場がないナイに対してリザードゴブリンは火炎を放ち、咄嗟にナイは二つの大剣を盾にして炎を防ごうとした。この際に旋斧が炎を吸収したお陰で事なきを得たが、その反面に大変な事態に陥る。
(しまった!?)
無意識にナイは旋斧でリザードゴブリンの火炎の吐息を防いだ際、火属性の魔力を吸い上げてしまい、刀身に「黒炎」が纏う。この黒炎はナイの意志では消す事が出来ず、何処かで発散しない限りは燃え続ける。
黒炎を纏った旋斧を見てナイはリザードゴブリンに振り返り、リザードゴブリンの方は得体の知れない炎を纏ったナイの旋斧に警戒している様子だった。
(この炎はまずい、建物に引火したら建物を燃やし尽くすかもしれない……!!)
黒炎の厄介な点は強力な火力に水属性の魔力では消えない点であり、黒炎を掻き消すには聖属性の魔法攻撃しかない。しかし、逆に言えばリザードゴブリンであろうと黒炎を受けた場合はどうしようもなく、身体が燃やし尽くされるまで燃え続ける。
(これで決めるしかない!!)
岩砕剣を手放したナイは危険性を感じながらも旋斧を構え、リザードゴブリンと向かい合う。リザードゴブリンの方はナイを見て警戒心を抱き、この時にリザードゴブリンはオークの死骸に視線を向け、咄嗟にナイに目掛けて死骸を再び投げ放つ。
「シャギャアアッ!!」
「無駄だっ!!」
市民を投げつけてきたリザードゴブリンに対してナイは旋斧を振りかざし、次々と切り付けては燃やしていく。死骸は黒炎に触れた途端に燃え広がり、跡形もなく燃やし尽くす。
以前に使用した黒炎よりも明らかに威力が上昇しており、次々とオークの死骸を燃やしながらナイは突っ込むと、リザードゴブリンの元に突っ込むと、旋斧を振りかざす。
「喰らえっ!!」
「アガァッ!!」
至近距離まで迫ったナイに対してリザードゴブリンは口元を開き、吐息を放つ。だが、その攻撃に対してナイは旋斧に纏わせた黒炎を放出させ、二つの炎が混じり合って爆炎と化す。
「うわぁっ!?」
「グギャアアアッ!?」
互いに後方へ吹き飛んだナイとリザードゴブリンは地面に倒れ込み、この際にリザードゴブリンの身体に黒炎が襲い掛かり、一方でナイの服にも黒炎が燃える。二人とも地面を転がり込むがそんな事では黒炎は消えず、この際にナイはなりふり構わずに強化術を発動させた。
「くぅっ……消えろっ!!」
ナイは全身に白炎を纏い、その結果は黒炎を白炎で消し去ることが出来た。闇属性の魔法はは聖属性の魔力で打ち消せる事を思い出して試してみたが、無事に成功してナイだけは黒炎から逃れる事が出来た。
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