第751話 最高の再会
「やべぇっ!?避けろ、ドルトン!!」
「ぬおっ!?」
「グギィイイイッ!!」
迫りくるゴブリンキラーに対して咄嗟にイーシャンはドルトンを突き飛ばし、彼の元にゴブリンキラーは爪を振りかざす。イーシャンはもう駄目かと思った瞬間、ゴブリンキラーの横から白い物体が出現して吹き飛ばす。
「ウォオオンッ!!」
「グギャアッ!?」
「うおっ!?」
草原にゴブリンキラーの悲鳴が響き渡り、派手に吹き飛ぶ。驚いたイーシャンは顔を上げると、そこには見覚えのある巨大な狼が存在し、彼に顔を向けると嬉しそうな声を上げる。
「ウォンッ!!」
「お、お前……ビャクかっ!?」
「ビャクじゃと!?という事は……」
「ドルトンさん!!イーシャンさんも……無事でよかった!!」
ビャクの背中から聞き覚えのある声が響き渡り、二人が見上げるとそこにはビャクに乗り込んだナイの姿が存在した。ナイと出会えた事に二人は喜ぶが、即座にナイはビャクから降りると、ゴブリンキラーと向かい合う。
ゴブリンキラーは自分を吹き飛ばしたビャクに対して怒りを抱き、その背中から降りてきた人間の子供を睨みつける。だが、睨みつけてきたゴブリンキラーに対してナイは全く動じず、それどころか睨み返す。
「よくも二人を……」
「グギィッ……!?」
「うおっ!?ナ、ナイ……!?」
「こ、これは……!?」
「クゥンッ……」
人間が発するとは思えない程の怒気を滲ませ、その迫力にゴブリンキラーだけではなく、ドルトンやイーシャン、それにビャクまでも怯えてしまう。
ナイはゴブリンキラーと向かい合い、先日に遭遇した個体との戦闘では窮地に陥ったが、今回は油断はしない。旋斧を片手に掴んだイチはゴブリンキラーに視線を向け、勢いよく踏み込む。
「うおおおっ!!」
「グギィッ!?」
旋斧を振りかざして近付いて来たナイに対し、ゴブリンキラーは脅威を感じて咄嗟に後方へ跳ぶ。しかし、それを予測していたかのようにナイも「瞬動術」を発動させ、ゴブリンキラーの目前にまで迫る。
「があああっ!!」
「ッ――!?」
「なっ……」
「い、一撃!?」
ナイはゴブリンキラーの頭部に旋斧を叩きつけ、そのまま一刀両断する。肉体を左右に切り裂かれたゴブリンキラーは断末魔の悲鳴を上げる暇もなく地面に崩れ去り、旋斧にこびり付いた血をナイは振り払う。
商団の護衛として同行していた冒険者や傭兵達でさえも全く敵わなかった相手をナイは一撃で打ち倒した姿にドルトンもイーシャンも冷や汗を流し、イチノで遭遇した時よりも確実に強くなっていた。
ナイ自身も騎士団の訓練を受けて武芸を磨き、更に昨日のミノタウロスとの死闘を乗り越えた事でより大きな力を手にしていた。改めて旋斧を背中に担ぎ直すと、ナイはドルトンとイーシャンに振り返って二人と再会できた事を喜ぶ。
「ドルトンさん、イーシャンさん!!二人とも無事ですか!?」
「あ、ああ……」
「ははっ……また強くなったな、ナイ」
久々の再会にドルトンとイーシャンも喜ぶが、あまりのナイの強さに二人は苦笑いを浮かべ、特に冒険者だったドルトンからすればナイの成長は明らかに普通ではなかった。
(これほどの力を持っているとは……もう既にアルを越えていたか)
ナイの腕力は完全にアルを上回り、既に彼は亡き養父を越えている事をドルトンは確信する。そして旋斧の方も以前よりも僅かに大きさが増しているように感じられ、ナイがまたもや強敵を相手に打ち勝った事を悟る。
「ナイよ、久しぶりじゃな……元気だったか?」
「はい!!でも、どうして二人がここに?」
「いや、それがだな……」
「お〜い、ナイ君。僕達の事を忘れてないかい?」
二人との再会に喜ぶナイだったが、ここでビャクが運んできた狼車から声が掛かり、アルト達も顔を出す。アルトとはドルトンとイーシャンも初めて会うため、何者なのかと不思議に思う。
「ナイ、その男の子は?」
「あ、えっと……友達のアルトだよ」
「どうも、初めまして。ナイ君の友達のアルトです」
「おう、礼儀正しい子だな。俺はイーシャンだ、こっちがドルトンだ」
アルトは王子である身分を隠して丁寧に挨拶を行い、その様子を他の者は苦笑いを浮かべる。軽々に王子の身分を明かすわけにはいかないのは分かるが、ドルトンもイーシャンもまさかアルトが王子だとは思いもせず、気軽に接する。
改めてナイは二人との感動の再会を果たし、その後にどうして二人がここへ来ているのか、また王都では何が起きているのかを詳しく話を聞く――
※プルリン「ぷるぷるっ(最近、僕の出番減ってない?)」(#^ω^)
カタナヅキ「(;´・ω・)エッ」
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