閑話 《下水道では……》
――クノから連絡を受けたアルトはすぐに警備兵に連絡を送り、下水道に存在する白面の拠点へと向かう。下水道を数十名の警備兵と共にアルト達は移動を行い、先行するのはクノであった。
「地図に寄ればこちらでござる!!」
「ま、待ってくれ!!そんなに早く走らなくても……」
「ナイ殿達が心配じゃないのでござるか!?」
「クノの言う通り……私達も急いだ方が良い」
「そうですね!!早く行きましょう!!」
「はあっ、はあっ……」
「ま、待ってください……もう、体力が……」
普段からあまり運動しないアルトはクノの移動速度に付いて行くのもやっとであり、それは他の警備兵も同じだった。彼等はこの街を守る物として日々訓練をしているが、このクーノでは大きな事件は滅多に起きないため、警備兵達も警戒意識が薄らいでたるんでいた。
実際の所は何年も前から白面の組織が暗躍していたのだが、警備兵の中には白面の内通者が存在した。その人物は移動の際中に他の者と離れ、別の通路から組織の拠点へ向かう。
「やばいな、すぐに知らせないと……」
兵士は身に付けていた装備を脱ぎ去り、白面を顔に装着する。実を言えば内通者は白面側の人間であり、数年前に兵士に入隊して警備兵の情報を漏らしていた。
彼は急ぎ足でアルト達よりも先に拠点へ辿り着ける近道を移動し、危険を知らせようとした。だが、そんな彼に対して背後から語り掛ける者がいた。
「何をしているのでござる?」
「っ……!?」
後ろから声を掛けられた暗殺者は仮面の下で驚愕の表情を浮かべ、咄嗟に後方へ向けて裏拳を放つ。しかし、その攻撃を予測していた様にクノは頭を下げて回避すると、左手を的確に暗殺者の心臓に叩き込む。
「ふんっ!!」
「ぐはぁっ!?」
胸元に掌底を受けた暗殺者は後ろへ倒れ込み、一瞬とはいえ心臓が止まったような感覚を味わい、苦しみ悶える。その様子を見てクノはクナイを取り出し、男の首筋に構えた。
「やはり仲間がいたでござるな」
「ば、馬鹿な……お前、一番前を走っていたんじゃ……!?」
「回り道でござる。ゴエモン殿の地図にはしっかりとこの通路も書き記されていたでござる」
クノはゴエモンが渡した地図を頼りに先を移動し、回り込んで暗殺者が利用するであろう通路に待ち伏せていた。今頃はクノと離れた他の者達が戸惑っているだろうが、クノとしては内通者を見つけ出すために敢えて先を急ぐふりをしていた。
暗殺者は必死に逃げようとするがそれをクノが許すはずもなく、彼を抑えつける。毒薬を飲み込む前なので彼が死ぬ事はなく、クノは語り掛ける。
「さあ、大人しくするでござる。そうすれば命だけは……」
「命だと……笑わせるな、お前等に俺等が救い出せるのかよ!?」
「毒、でござろう?」
「な、何!?」
クノの言葉を聞いて暗殺者は驚愕の表情を浮かべ、どうして彼女が自分達に仕込まれた毒の事を知っているのかと驚くが、そんな彼等にクノは答えた。
「拙者は特殊な家系の生まれで幼少期の頃から様々な毒薬の勉強も行うでござる。その中には毒を仕込まれた途端、奇妙な紋様が身体に浮かぶ類の毒の事も話だけは聞いた事があるでござる」
「そ、そんなっ……なら、お前も暗殺者なのか!?」
「拙者は忍者でござる……安心し欲しいでござる、シノビ一族は毒薬にも精通しているからお主等も救えるかもしれないでござるよ?」
「……ほ、本当、なのか?」
暗殺者はクノの言葉に自分達が助かる道があるのかと考え、そんな彼にクノは頷いた。
「拙者を信じてほしいでござる。さあ、運命に抗うでござるよ」
「……ちくしょう」
彼女の言葉を聞いて暗殺者は観念し、僅かな可能性であろうと自由になれるのであればと彼は降伏を決断した――
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