閑話 《クノの任務》

「兄者、それはどういう意味でござる?」

「言葉通りの意味だ。お前には王都を離れてもらう」

「「ウォンッ?」」



クノはシノビに呼び出され、彼から王都を離れる様に指示を出された。急な話にクノは戸惑い、どうして自分が王都を離れなければならないのか理由を問い質す。



「いきなり何を言い出すのでござるか。拙者、何か悪い事をしたのでござるか?」

「悪い事と言えば……まあ、そうだな」

「どういう意味でござる?悪いところがあるなら直すでござる」

「そうか……なら、言わせてもらうがお前のその口調が問題だ」

「なっ!?」



シノビの言葉にクノは衝撃を受けた表情を浮かべるが、シノビは至極真面目な表情を浮かべてクノの口調に関して指摘する。



「クノ、お前が里に居た時から変わらずにその口調で話していた事は知っている。しかし、今の俺達は王国の人間に取り入り、受け入れられなければならない。お前のその口調は問題があるのだ」

「せ、拙者の口調の何が問題が?」

「ござる、という語尾が最大の問題だな。時々、他の人間からどうしてお前の妹は変わった言葉遣いなのか聞かれて困るんだ。お前の口癖だとは理解しているが、やはり王国に馴染むには口調には気を付けないといけない」

「そ、そんなっ!?」



クノはシノビの言葉に衝撃を受け、まさか自分の口調がおかしな事を指摘される日が来るとは思いもしなかった。シノビとしても別にクノを叱りつけたいわけではないが、もう見過ごす事は出来ない。



「先日、王女様からもお前の口調に関して問題を指摘されてな。バッシュ王子からお前の口調の独特さを追求されて困っていたそうだ」

「王女殿が!?」

「建前上、俺達は王女に従う立場だ。ならば彼女の迷惑にならないように振舞わなければならない……だが、急に口調を変えろと言われても難しいだろう。そこでお前は王都を離れ、修行を積んで来い」

「修行を!?」

「そうだ。普通の人間の話し方を研究し、自然に話せるようになるまで王都に戻ってくるな。これは命令だぞ、クノ」

「そんなっ!?」



一方的なシノビの言い分にクノは愕然とするが、シノビもふざけているわけではなく、現在の二人は王国に取り入らなければならない立場だった。和国の領地を取り戻すまで、二人は王国に従い続けなければならない。


結局はクノはシノビの命令に逆らえず、一時の間だけ王都を離れる事にした。彼女は王都を離れて何処へ向かうか悩み、とりあえずは王都の近くに存在するクーノという街に向かう事にした。

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