過去編 〈二つの伝説〉
――聖女騎士団のジャンヌの噂はリョフも良く耳にしていた。最強の王国騎士団を率いる剣士であり、二つの魔剣を操る天才剣士の名を知らぬ人物はいない。旅をしていた時もリョフは彼女の噂をよく耳にしていた。
最強の武人と謳われたリョフ、国内において敵なしと言われる王国騎士ジャンヌ、彼女を見た時からリョフは確信を抱く。彼女は自分と同類であると気付いた。
ジャンヌもリョフも人間の限界を極めるまで強さを得た二人だが、これまでに一度も戦った事はない。理由としてはジャンヌは王国騎士団の団長ではあるが、この国の王妃である。そんな存在に黄金級と言えども、一介の冒険者に過ぎないリョフが安易に戦える相手ではない。
かつて一度だけリョフはある場所にてジャンヌと対峙し、対戦を求めた。その時の彼は仕事帰りであり、偶然にも盗賊を追っていたジャンヌと出会う。彼女が追い続けた盗賊はリョフと遭遇し、彼に全員始末された後だった。
『お前がジャンヌか……』
『貴方は……リョフね』
『こ、これは……貴様、何てことを!!』
『ひ、酷すぎる……!!』
聖女騎士団が追っていた盗賊達はリョフによって皆殺しにされ、中には死体の原型を残っていないのも存在した。リョフの有り余る力のせいで普通の人間では彼の攻撃を受けただけで肉体が崩壊する。
その時のリョフは自分の強さの限界を知り、生きる目標を失いかけていた。そんな時に彼はジャンヌと出会い、彼女を一目見ただけで同類だと見抜く。
『最強の王国騎士……相手にとって不足はない』
『な、何を言っている!!正気か!?』
『貴様、冒険者ではないのか!!』
『……下がりなさい、皆』
リョフはジャンヌを見て自分が求める相手だと判断し、武器を構えると他の騎士達が立ちはだかる。そんなリョフに対してジャンヌは剣に手を伸ばすが、彼女は腹部を抑える。
『うっ……!?』
『何!?』
『王妃様……まさか、お腹の子が!?』
『何だと……!?』
だが、この時のジャンヌは既に身ごもっており、本人でさえも気づいていなかった。この時の彼女は戦える状態ではなく、結局はリョフを見逃す――
――それから時は流れ、ジャンヌは赤子を生み、そして最近になって騎士団を復帰しした。この日をリョフは待ち続け、シャドウと手を組み、もう一度ジャンヌと戦う機会を伺う。
「……待ちわびたぞ、この日を」
『いいのか、相棒……あんた今日、歴史上で最悪の悪党として名前を刻むかもしれないぜ?』
「それでも構わない……準備はいいのか?」
『ああ……エリザ、大丈夫か?』
「……ちっ、うるせえよ」
シャドウは柱に背中を預けるエリザに視線を向けた。彼女は全身が包帯だらけであり、腹部には未だにジャンヌから殴られた跡が残っていた。それでも彼女は生きており、血走った目を見開く。
「さあ、始めようか……この国をぶっ壊してやる!!」
――後に王国史上最悪の事件が発生する事を王都の人間は知らなかった。
※過去編はこれで一旦終わりです。本編がある程度進んだら続きを書くかもしれません。
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