過去編 〈ジャンヌの強さ〉

聖女騎士団の団長であるジャンヌは最強の王国騎士と呼ばれていた。彼女が騎士団を設立する前から優秀な王国騎士として知られ、その強さは他国にも知れ渡っている。


ある時にジャンヌの元に手紙が送り込まれ、その内容は聖女騎士団の団員を人質として捉えたという内容であり、ジャンヌだけで王都のある場所に赴くように指定されていた。条件としてジャンヌは他の団員を連れ出さない事、そして彼女が扱う魔剣は置いていくことが指定されていた。


ジャンヌは言う通りに従い、たった一人で武器も持たずに指定された場所へ向かう。そこには闇ギルドの人間達が待ち構え、その中には当時の時代でも腕利きで名が知られた傭兵も含まれていた。



「これは……どういう事かしら、エリザちゃん?」

「見ての通りさ。あたしはこいつらに就くと言ったんだよ」

「くくくっ……まんまと騙されたな」



指定された場所にジャンヌは辿り着くと、そこには捕まっているはずのエリザという名前の団員が闇ギルドの長と共にならんていた。長はエリザの肩を掴み、今回の呼び出しが罠だと告げる。



「まさか馬鹿正直に一人でやってくるとはな……噂通りの女だ」

「悪いね団長……あんたの事は嫌いじゃないけど、やっぱりあたしはこっちの方が性に合うのさ」

「そう……悪い子ね」



エリザは元々は盗賊だったが、聖女騎士団に捕らえられた。その後、本人は命乞いをして今後は人々のために尽くすという事で特例として聖女騎士団に迎え入れた。


しかし、エリザは聖女騎士団を裏切り、自分が人質のふりをしてジャンヌを呼び出す。ジャンヌはそんな彼女の行動に溜息を吐き、そんな彼女に対して周りの男達が騒ぎ出す。



「ひひっ……いくら強いといっても武器無しじゃこの人数を相手にどうしようもねえだろ」

「いっておくが援軍なんか期待するなよ。俺達以外にも外で仲間がいるんだ。異変に気付けばすぐに知らせてくれる」

「国王の妻を好きにできる日が来るなんて夢みたいだな……」

「ふふふ、殺してはいかんぞ。王妃を人質に取れば国王は意のままに操れる。さあ、捕まえろ!!」



闇ギルドの長が号令をかけると、ジャンヌを取り囲んでいた者達が武器を構えながらゆっくりと近づく。そんな悪党たちに対してジャンヌは目をつぶると、それを見た者達は彼女が観念したかと思ったが、直後に信じられぬ光景を目の当たりにした。




「――はあっ!!」




ジャンヌが気合の雄叫びと共に片足を強く踏みつけた瞬間、建物の床に亀裂が広がり、建物全体に衝撃が走る。その行動に悪党たちは呆気に取られ、一方でジャンヌは笑みを浮かべる。



「言い忘れていたけど……私、素手でも強いわよ」

「なっ……」

「覚悟しなさい!!」



微笑みながらもジャンヌはエリザに視線を向け、彼女は床を強く踏みつけると瞬間移動の如くエリザの懐に潜り込み、腹部に崩拳(中国拳法の中段突き)を放つ。



「せいりゃあああっ!!」

「ぐふぅうううっ!?」

「なぁっ!?」

『ひいいっ!?』



殴りつけられたエリザは建物の壁に叩きつけられ、そのまま血反吐を吐きながら座り込む。彼女の腹部には陥没し、ジャンヌの拳の痕が残っていた。それを見た悪党たちは信じがたい力に焦りの表情を抱く。


慌てて闇ギルドの長は他の配下にジャンヌを捕まえる様に命じようとしたが、ここで外の見張りが駆けつけ、報告を行う。



「た、大変です長!!外から聖女騎士団の連中が迫っています!!」

「な、何だと!?」

「あら、あの子達もう来たの……残念だったわね、最初からエリザが裏切っているのは知っていたわ」

「ど、どういう意味だ!?」

「言葉通りの意味よ。エリザを聖女騎士団に迎え入れたのは貴方達と繋がりがある事を知っていたからよ。まあ、本当に改心するのなら許してあげたけど……悪党には容赦しないわ」

「ひいっ!?」

「さあ……全員、大人しくしなさい!!」



こうしてジャンヌは闇ギルドの悪党たちに襲い掛かり、今回の一件で闇ギルドは壊滅の危機に陥ったという――

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