閑話 〈ナイとガロ〉
「では、ここから先は私達だけで話し合いたい。ナイ君、悪いが席を外してくれないか?それと、今日は屋敷に寄ってくれ。せめてお詫びに夕食を御馳走したい」
「え、いいんですか?」
「ああ、テンの奴や他の者も連れてきて構わないぞ」
「じゃあ、伝えておきますね」
「すまんのう、坊主……約束通り、魔石の件は儂が用意しておこう。明日、取りに来てくれんか?」
「はい、分かりました」
「今回の件、うちの冒険者が迷惑をかけて本当にすまなかった。二度とこんな事が起きない様にお灸をすえて置こう」
「う、うむ……お手柔らかにな」
ナイは3人に頭を下げると退室し、これからの事を考える。思いもよらずアッシュの公爵の屋敷に誘われたので他の人間に伝えようかと考えた時、ここで思いもよらずにある人物と再会した。
「なっ……てめえ、どうしてここに!?」
「えっ……ガロ?」
聞き覚えのある声がしたのでナイは振り返ると、そこにはガロが存在した。仕事帰りなのか彼は随分と汚れており、お互いにどうしてここにいるのかと戸惑う。しかし、すぐにナイはガロが冒険者になっていたことを思い出す。
ガロは最も自分の今の姿を見られたくない相手と遭遇し、不機嫌そうに顔を逸らす。そんなガロにナイはどう声を掛けるべきか悩むと、ガロはナイを指差す。
「おい、覚えておけよ……何時か俺は必ずお前よりも大物になってやる!!」
「えっ……?」
「……絶対に忘れるなよ」
ナイにガロはそれだけを言い渡すと彼の横を通り過ぎ、そのまま立ち去る。ガロの態度にナイは戸惑い、今までの彼ならばもっと自分に突っかかってもおかしくはない。
少しだけだが以前とガロの雰囲気が異なり、前に会った時のガロは切羽詰まった表情を浮かべ、ナイに対して劣等感を抱き、敵意を露にしていた。だが、今のガロはナイに対抗心を抱いているのは変わらないが、何処となくだが焦りが消えている。
「よう、ガロ!!お疲れさん!!」
「なあ、ガロ……また一緒に仕事受けてくれよ!!お前の腕が必要なんだよ!!」
「ちっ、うるせえぞお前等……また今度な」
「おっ、約束だぞ!?今の言葉、忘れるなよ!!」
「……ああっ、分かったよ」
他の鉄級冒険者にガロは話しかけられ、彼は面倒そうな表情を浮かべながらも適当に相槌を打つ。前にナイが見かけた時は他の冒険者と喧嘩していたが、今は良好な関係を築けているらしい。
「なんか……変わったな」
ガロの後ろ姿を見送りながらナイは以前よりも彼が変わったというか、吹っ切れた様に感じた。そして先ほどガロに言われた言葉を思い出し、ナイは呟く。
「約束、か……ちゃんと覚えておこう」
ナイはガロの姿を見て何だか少し嬉しく思い、彼が元気そうにしているのを知れたのでガロを心配してたマホ達にもまた出会ったら彼の事を伝えようと思った――
※頑張れガロ!!
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