特別編 〈ゴブリンナイト戦〉

『――お待たせしました!!あの伝説の挑戦者、クロノ選手が返ってきました!!』

『うおおおっ!!』



闘技場の試合場にて変装したナイ改めクロノが現れると、観衆は盛り上がる。今回もナイはクロノとして出場し、戦う事が決まった。ちなみにミイナとヒイロは本名で参加し、クロノと共に戦う。



『今回はあの白狼騎士団に所属の斧姫と名高いミイナ選手と、爆剣と悪名高いヒイロ選手も一緒に出場しています!!この3人はどういう関係でしょうか!?』

「そんな二つ名があったの二人とも!?」

「斧姫……悪くない」

「悪名高いって、どういう意味ですか!?」



ナイは二人に異名があった事に驚き、ヒイロに関してはあまりにも不名誉な渾名であった。やがて試合場の城門が開かれ、今回の対戦相手である「ゴブリンナイト」が出場した。



「よし、こっちだ!!下手な真似はするなよ!!」

「ほら、付いてこい!!」

「ギギッ……!!」

『で、出ました!!この闘技場一の問題児、最強のゴブリン!!ゴブリンナイトの登場だぁああっ!?』



城門が現れたのは身長は3メートルを超える体躯のゴブリンであり、確かにホブゴブリンよりも一回り以上は大きく、体格も筋肉質だった。普通のホブゴブリンよりも大きく、雰囲気もゴブリンキングと似通っており、ナイ達は緊張感を抱く。


以前にナイは闘技場で「ゴブリンナイト」と呼ばれていたホブゴブリンと戦ったが、あのゴブリンナイトはあくまでも異名にしか過ぎず、このゴブリンナイトとは異なる。


ゴブリンナイトは巨人族兵士が数人がかりで身体に巻き付けた鎖を引き寄せられ、試合場へと移動させられる。同時に他の兵士達がゴブリンナイトの武器を運び込み、それは巨人族用に設計されたランスと大盾であった。



『さあ、ゴブリンナイトの装備が運ばれてきました!!果たして勝利するのはどちらか……まもなく試合開始です!!』

「……二人とも、気を付けて」

「は、はい……」

「大丈夫、ナイがいるから絶対に負けない」



緊張するヒイロに対してミイナは落ち着かせるように肩を置くが、当のナイ本人はゴブリンナイトに視線を向け、嫌な予感を浮かべる。この時のナイの予感は外れた事はなく、試合が始まれば即座にナイは仕掛ける事にした。



(先手必勝……やるしかないか)



覚悟を決めた様にナイは旋斧と岩砕剣を両手で構えると、この時にゴブリンナイトは鎖に巻き付かれた状態で目を見開き、自分を引っ張る数名の巨人族に対抗するように力を込めた。



「ギィアアアアッ!!」

「うおっ!?」

「うぎゃっ!?」

「や、止めろ!!落ち着け……ぐはあっ!?」

「そんな馬鹿なっ!?」



ゴブリンナイトは力を込めただけで巨人族の兵士達が引き寄せられ、彼等は必死に抑え込もうとするが、びくともしない。それどころかゴブリンナイトは鎖を引きちぎると、兵士達を殴り倒す。


試合が始まる前に兵士を殴りつけたゴブリンナイトは他の兵士が運び込んできたランスと大盾を掴み、この時に殴り倒した巨人族の兵士からも兜を奪うと、それを頭に装着した。装備を身に付けたゴブリンナイトはナイ達に振り返り、咆哮を放つ。



「ウギィイイイイッ!!」

「なっ……!?」

「何て迫力……!!」

「み、皆さん!!早く離れて!!」

『ひいいいいっ!?』



試合場の兵士達は慌てて城門の方角へと向かい、逃げ出していく。ゴブリンナイトはそんな彼等には目もくれず、ナイ達に目掛けてランスを突き出す。



「ウギィッ!!」

「うわっ!?」

「きゃっ!?」

「は、速いっ!?」



繰り出されたランスに咄嗟にナイ達は躱すが、ゴブリンナイトは攻撃を避けられても冷静に対処し、ランスを幾度も繰り返して突き出す。



「ウギィッ!!」

「く、このっ……うわわっ!?」

「こいつ、強い!!」

「危ないっ!?」



ゴブリンナイトの連続攻撃によってナイ達は分断され、反撃を仕掛けるためにナイは「迎撃」の技能を発動させて左手の岩砕剣を振りかざし、ゴブリンナイトに放つ。



「だああっ!!」

「ウギィッ!?」

「やった!!」



岩砕剣の強烈な一撃をゴブリンナイトは大盾で防ぐが、あまりの威力で大盾が凹んでしまい、更にゴブリンナイトの巨体が吹き飛ぶ。その光景を見てヒイロは喜ぶが、ゴブリンナイトは即座にランスを地面に突き刺して勢いを止める。


凹んだ大盾を確認してゴブリンナイトはもう使い物にならないと判断し、放り投げる。すると今度はランスを構えると、ナイに向けて投擲の構えを行う。



「ウギィッ!!」

「うわっ!?」

「危ない!?」

「避けてっ!!」



ランスを投げてくるとは思わなかったナイは咄嗟に上空へ跳躍して回避するが、それがゴブリンナイトの狙いであり、そのままゴブリンナイトは空中で身動きが取れないナイへと迫ると、拳を放つ。



「ウギィイイイッ!!」

「ぐはぁっ!?」

「そんなっ!?」

「ナイ!?」

『ああっ!?クロノ選手が……!!』



空中にてゴブリンナイトは空手の「正拳突き」のようにナイを殴りつけ、そのまま彼を試合場の壁まで吹き飛ばす。どうやらゴブリンナイトは武器だけではなく、格闘家からも技術を盗んでいた事をナイは身を以て知る――





※すいません、あと1話だけ続きます!!

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