特別編 〈ゴブリンナイト戦 後編〉
「がはぁっ……!?」
「ナイさん!!」
「駄目、ヒイロ!!そっちに近付いてる!!」
壁に叩きつけられたナイを見て慌ててヒイロは救援に向かおうとした。しかし、その前にゴブリンナイトは動き出すと今度はヒイロに目掛けて接近し、彼女に前蹴りを繰り出す。
「ウギィッ!!」
「くっ……火炎剣!?」
「ギャアッ!?」
咄嗟にヒイロは魔剣「烈火」に炎を纏わせて振り払うと、炎を見て驚いたゴブリンナイトは狙いを外し、ヒイロの頭上に足が通過する。この時にミイナは如意斧と輪斧を手にしてゴブリンナイトの背中に突っ込む。
「はああっ!!」
「ウガァッ!?」
跳躍したミイナは両手の斧をゴブリンナイトに叩きつけると金属音が鳴り響き、ゴブリンナイトの身に着けていた巨人族用の鎧に罅が入る。しかし、すぐにゴブリンナイトは振り返ると空中のミイナに裏拳を放つ。
咄嗟にミイナは両手の斧で防ごうとしたが、空中では足場がなので踏ん張る事も出来ず、そのまま彼女はゴブリンナイトに殴りつけられて派手に吹き飛ぶ。
「フンッ!!」
「あうっ!?」
「ミイナ!?くっ……よくも二人を!!」
ヒイロはナイとミイナを殴りつけたゴブリンナイトに怒りを抱き、彼女は烈火を構えた状態で突っ込む。しかし、怒りによって冷静さを失ったヒイロを見たゴブリンナイトは地面に向けて拳を叩き込む。
「ウギィイイッ!!」
「なっ!?」
『え、煙幕です!!ゴブリンナイトのお得意の煙幕で姿を隠しました!!』
地面に拳を叩きつけた際に発生した土煙を利用してゴブリンナイトはヒイロの視界から姿を消すと、彼女は驚いて立ち止まってしまう。姿が見えなければ何処から攻撃くるか分からず、彼女は身構える。
(いったい何処から……!?)
ミイナは烈火を構えてゴブリンナイトの攻撃に備えるが、やがて風が吹いて土煙が消えると試合場からゴブリンナイトの姿が消えている事に気付き、唖然とした。
観客席の観衆もゴブリンナイトが姿を消した事に戸惑い、いったいどうなっているのかと困惑していると、ここで一人の観客が上空を指差す。
「あ、あそこだ!!」
『っ!?』
全員がその声を聞いて上を振り返ると、そこには遥か上空を浮かぶゴブリンナイトの姿が存在し、いつの間にか回収していたのかランスを手にした状態でヒイロに迫っていた。
「ウギィイイイッ!!」
「なぁっ……!?」
ランスに全体重を乗せて落下してくるゴブリンナイトの姿を見てヒイロは焦った表情を浮かべ、逃げようにも既にゴブリンナイトは迫っていた。ここから回避行動を取っても間に合わず、万事休すかと思われた時、柄が伸びた斧がゴブリンナイトへと叩き込まれた。
「「おりゃああっ!!」」
「ガフゥッ!?」
「えっ!?」
『こ、これは……クロノ選手とミイナ選手!?二人とも無事でした!!』
上空から降下してきたゴブリンナイトに攻撃を繰り出したのは如意斧を伸ばしたミイナと、彼女と共に柄の部分を掴んで一緒に力を合わせたナイの姿がヒイロの視界に映し出される。
先ほど二人ともゴブリンナイトに殴りつけられた際に戦闘不能に陥ったと思われたが、ナイの方は既に再生術で全回復していた。但し、ミイナの方は限界なのか膝を着く。
「うっ……もう無理、後はナイに任せた」
「分かった、ゆっくり休んでいて……もう、終わらせるから」
「ウギィイイイッ!!」
如意斧で殴りつけられたゴブリンナイトは怒りの咆哮を放ち、罅割れた鎧を引き剥がす。そして改めてランスを拾い上げると、ナイと向き合う。
この時にナイは岩砕剣を地面に突き刺し、旋斧を両手で構えた。それに対してゴブリンナイトはランスを構え、正面からナイを突き殺すつもりだった。
(相手も次で終わらせるつもりか……上等)
いい加減にナイも我慢の限界であり、ここで強化術を発動させる。限界まで身体機能を強化させ、ナイもゴブリンナイトと正面から打ち合う覚悟を抱く。
「ウギィイイイッ!!」
「がぁああああっ!!」
両者は全く同時に駆け出すと、ゴブリンナイトはナイに目掛けてランスを突き刺し、その攻撃に対してナイは旋斧を強く握りしめながら跳躍を行う。
「ここだぁっ!!」
「ッ――!?」
跳躍の技能を生かしてナイは跳び込むと、繰り出されたランスを足場に利用して一気にゴブリンナイトの懐に潜り込む。ゴブリンナイトは眼前に迫るナイに対して目を見開くが、ナイはゴブリンナイトに目掛けて旋斧を振り払う。
この際にナイは旋斧に火属性の魔力を送り込み、刀身に炎を纏わせて切り裂く。ゴブリンナイトの肉体に熱した刃がめり込み、切り裂かれるのと同時に身体に炎が襲い掛かる。
――ギィエエエエッ!?
闘技場にゴブリンナイトの悲鳴が響き渡り、後に伝説の試合として闘技場の観客者に語り継がれる試合は終わりを迎えた――
※今回の話は読者様のご要望で書きましたが、思ったよりも長くなりました(笑)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます