閑話 〈火竜の経験石の再利用〉

――黄金級冒険者にして鍛冶師でもあるハマーンは王都へ帰還した後、冒険者の仕事は一時休業してとある作業に励む。それは火竜の経験石を利用し、煌魔石を作り上げる実験だった。



「親方、竜種の経験石から煌魔石なんて作れるんですか?」

「やってみないと分からんな……」

「でも、経験石を煌魔石に変えるなんて聞いた事がありませんよ?」



経験石は魔石の一種に捉えられているが、基本的には経験値を得るだけの魔石としか認識されていない。しかし、ゴーレムや火竜の一部の魔物の経験石は良質な火属性の魔石としても価値がある。


ハマーンは魔力を失われた火竜の経験石に火属性の魔力を送り込み、煌魔石を作り出せないのかを試す。ちなみにこの作業はマグマゴーレムの経験石では利用できず、マグマゴーレムは経験石が無事ならば再生する能力を持つため、下手に魔力を与えると取り返しのつかない事態に陥る。



「確かに普通の経験石ならば煌魔石に変えるなど不可能じゃろう。だが、これまでに火竜の経験石を手に入れた者が何人おる?その中で経験石を煌魔石に変えようと試みた奴はどれくらいおる?おらんじゃろう、だから試す価値はあるんじゃないか?」

「親方……」

「さあ、お前達はもう休め。ここから先は儂一人でやる」



煌魔石を作り出すには魔術師の協力が本来は必要なのだが、ハマーンはマグマの中に魔力を失った魔石を沈むと、魔力が回復する事を知っている。


それならば火竜の経験石も熱する事で魔力を復活させる事が出来るのではないかと考え、特別な炉の中に経験石を放り込み、常に熱し続ける。この実験が正しいのかどうかは分からないが、試してみる価値はあると思った。




――だが、残念ながらハマーンの実験は失敗し、2日ほど熱し続けても火竜の経験石に代わりはなかった。この事からただ熱するだけでは駄目だと判明し、彼は他の方法を探す。




(マグマの中に放り込むしかないか?いや、それだと回収できるかどうかも分からん、運に頼る真似はしたくないのう……)




ハマーンの実験は終わらず、彼は何としても火竜の経験石を復活させる方法を模索する。





※この話は本編に取り込もうかと悩みましたが、閑話にしました。火竜の経験石が煌魔石になる日が来るのか……

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