第549話 ナイVSテン (再戦)
「ちょっと待ちな……あんた、何時から二つの剣で戦うようになったんだい?」
「え?えっと……最近、ですかね」
「よくそんな馬鹿でかくて重い剣を二つとも扱えるね……また、腕を上げたという事かい」
旋斧も岩砕剣も普通の剣士では持ち上げる事も難しい武器であり、そもそも大剣を両手で扱う剣士など聞いた事もない。だが、ゴブリンキングとの戦いを経てナイは一段と腕力に磨きが掛かり、現在は二つの大剣を両手で扱えるようになっていた。
二刀流で戦う事自体は別に初めてではなく、盗賊との戦闘でもナイは使用していた。最もテンのような実力者を相手に二刀流で戦うのは初めての事のため、緊張は隠せない。
「よろしくお願いします!!」
「よし、来な……今回はこっちも本気で行くよ!!」
「二人とも、準備は言いな?では……始めっ!!」
審判役はレイラが務めると、試合の合図を行う。この際にテンはナイへ向けて退魔刀を構えて突進しようとしたが、先に動いたのはナイだった。
(ここだっ!!)
剛力を発動させてナイは両腕の筋力を強化させ、まずは右腕の旋斧から振りかざす。テンはナイの攻撃に対して退魔刀で受け止めるが、予想以上の衝撃に彼女の身体は後ろに押し込まれる。
(重いっ!?)
以前に戦った時よりもナイの攻撃力が増しており、彼女は片腕のみで振り抜いたナイの一撃を受けて危うく防御を崩しそうになる。その隙にナイは左手の岩砕剣を振りかざし、今度は反対方向から放つ。
「だあっ!!」
「うぐぅっ!?」
「テン!?」
「吹き飛ばされた!?」
テンは旋斧に耐え切った直後に岩砕剣の攻撃を受けて今度は踏み止まる事が出来ず、後方へと吹き飛ぶ。その光景を見て他の者達は驚き、一方でナイの方はテンの後を追う。
後ろへ吹き飛びながらもなんとかテンは地面に退魔刀を突き刺して体勢を整えようとするが、そんな時に正面からナイが迫り、それを見たテンは反射的に退魔刀を振り払った。
「このぉっ!!」
「なんのっ!!」
「う、受け止めた!?」
「馬鹿な、しかも片腕で!?」
横薙ぎに振り払われた退魔刀の攻撃をナイは反射的に左手の岩砕剣で受けると、片腕のみでテンの攻撃を受け切った。テンは自分の一撃を片腕のみでナイが受け切った事に驚愕し、その一方でナイは旋斧を放つ。
「せいやぁっ!!」
「くっ!?」
「躱した、あの体勢から!?」
「テンも負けてない……!!」
振り払われた旋斧に対してテンは咄嗟に後ろに身体を逸らすと回避に成功し、彼女は距離を取る。それを見たナイは改めて両手の大剣を構えると、テンは冷や汗を流しながらナイに告げた。
「な、中々やるようになったじゃないかい……前に戦った時よりも強くなったね」
「ありがとうございます」
「けど、今度は本気の本気で行かせてもらうよ!!」
「テン、まさか!?」
「強化術を使うつもりか!?」
「ずるいぞ、テン!!」
このままでは押し切られると判断したテンは奥の手を使用し、彼女は強化術を発動させて限界まで身体能力を強化させる。それを見たナイはテンが動き出す前に距離を取ろうとしたが、その前に彼女は退魔刀を振りかざす。
「うらぁあああっ!!」
「くぅっ!?」
「ナイ君!?危ない!!」
「駄目よ、モモ!!」
ナイに向けてテンが全力の一撃を振り下ろした瞬間、咄嗟にナイは両手の大剣の刃を重ね合わせて彼女の攻撃を受け止めた。それを見たモモが咄嗟に危険を察してナイに近付こうとしたが、それをヒナが抑える。
テンの渾身の一撃を正面から受けたナイは両手に握りしめた大剣で抑え込もうとするが、身体能力を強化されたテンは容赦なく力を込めて押し返す。
「このぉっ……いい加減に降参しな!!」
「ぐぐっ……!?」
「止めろ、テン!!頭に血が上がり過ぎた!!」
「あの馬鹿を止めろっ!!」
これが試合である事を忘れて本気でナイを倒そうとするテンに対して他の者が止めようとしたが、ここでナイに異変が生じる。テンの大剣を正面から受け止めた状態でナイは笑みを浮かべ、あろう事か彼は両手の大剣を手放してしまう。
「ここだっ!!」
「うわっ!?」
突如としてナイが力を抜いた事で彼の二振りの大剣とテンの退魔刀が地面に落ちてしまい、意表を突かれたテンはそのまま勢いあまって地面に大剣を突き刺してしまう。そのせいで地面に剣を引き抜く間は動きが取れず、ナイはドルトンから教わった護身術を思い出す。
本来は身を守るための術だが、ナイはルナとの戦闘から剣以外の戦い方を見出し、腕鉄鋼を装備した左腕を振りかざす。それに対してテンは避ける事が出来ず、咄嗟に彼女は両腕を交差して身を防ごうとしたが、ナイの剛力を発動させた状態の掌底突きを受けて吹き飛ぶ。
「はあああっ!!」
「がはぁっ!?」
『えええええっ!?』
ナイの掌底突きを受けたテンは派手に吹き飛び、彼女は地面に倒れ込む。この際に強化術の効果が切れたのか、彼女は白目を剥いてしまい、その様子を見ていた者達は驚愕の声を上げた――
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