第545話 ナイVSルナ
「そんな馬鹿な話があるか!!剛力の技能を覚える事なんて出来ない!!今までにいろんな奴等とあって来たけど、剛力を覚えている奴なんて一人もいなかった!!」
「そういわれても……」
「お前は何故、嘘を吐く!!この力が呪われていると思っているのか!?だから言いたくないのか!?」
「いや、違っ……!?」
ルナは興奮した様子でナイへ目掛けて戦斧を振りかざし、その攻撃はあまりにも力任せで腕力頼りの攻撃だった。
「ふざけるな、この力はそんな簡単に手に入る力なはずがない!!この能力のせいで私はどれだけ……!!」
「ちょっと、落ち着いて下さい!!言っている事が無茶苦茶ですよ!!」
「うわぁあああっ!!」
暴走したかのようにルナはナイの言う事を聞かず、昔に剛力のせいでどれだけ辛い経験をしてきたのか思い出したルナは理性を失って暴れ狂う。どうやら彼女のトラウマにナイは知らず知らずに触れてしまい、仕方なくルナを止めるためにナイも戦う。
(攻撃が雑になった、今なら止められるかも……!!)
無茶苦茶に戦斧を叩きつけるルナに対してナイは隙を伺い、彼女の手元から戦斧を引き剥がすために岩砕剣を振りかざす。そしてルナが戦斧を上段から叩きつけようとした瞬間、ナイも岩砕剣を下から振りかざす。
二人の攻撃が衝突すると激しい金属音と共にお互いの武器が手元を離れ、ナイとルナは武器を失う。ルナは驚愕の表情を浮かべるが、ナイの方は既にルナに向かって駆け出す。
「はぁあああっ!!」
「ナイさん!?」
「まさか素手で!?」
「くっ……このガキぃっ!!」
自分に向かってきたナイに対してルナは拳を振りかざし、二人は同時に腕を繰り出す。しかし、ルナよりもナイの方が腕が長く、ナイが繰り出した左手の掌底はルナの額に叩きつけられ、彼女は派手に倒れ込む。
「あうっ!?」
「ふうっ……ありがとう、ドルトンさん」
ナイは左腕にはドルトンから受け取った腕鉄鋼を装着しており、結果的にはルナはカウンターの原理で腕鉄鋼を装着したナイの攻撃を受けてしまい、意識を失う。頭に鉄の塊を叩きつけられた事に等しく、普通の人間ならば即死していたかもしれない。
だが、ナイが倒したのは普通の人間ではなく、彼と同じように剛力の使い手でしかも彼女の場合は生まれた時から剛力を使い続けた事で普通の火とよりも肉体が鍛えられているはずだった。だからこそナイも手加減せずに全力の一撃を撃ち込めた。
(ドルトンさんから教えてもらった掌底突き、初めて役に立ったな……)
実はナイはイチノを発つ前にドルトンから護身術を教わり、もしも手元に武器がない場合を想定して戦える手段を身に着けるように教わっていた。そして初めて役に立ち、ドルトンに感謝した――
――その後、気絶したルナを連れてナイはとりあえずはテンに連絡を行い、ひとまずは彼女をアルトの屋敷に連れ込む。ルナは目が覚めると自分がベッドの上でしかも他の人間達に見守られている事を知り、戸惑う。
「こ、ここは……」
「やっと起きたね、この馬鹿娘」
「あいたっ!?」
目を覚ましたルナに対してテンは呆れた表情を浮かべて彼女の頭を小突き、ルナは涙目で睨みつけるが、テンはそんな彼女に顔を近づけて睨みつける。
「少しは頭が冷えたかい?あんた、どれだけの人間を心配させたと思ってるんだい?」
「その通りだ」
「反省しなさい」
「そうだな」
「うっ……」
テンの他にもアリシア、レイラ、ランファンの3人は頷き、流石のルナもこの状況下では言い返す事は出来ず、自分の行為を振り返って今更ながらに反省する。
ルナは助けを求める様に他の人間を探すが、生憎とナイもヒイロもミイナも彼女を庇う義理はなく、誰もルナの味方はいない。その事を理解したルナは悔し気な表情を浮かべながらも告げた。
「ご、ごめんなさい……」
「……そう、それでいいんだよ。悪い事をしたら謝る、あんたが王妃様に最初に教わった事だろう」
「えっ……?」
テンの言葉にルナは驚いた表情を浮かべ、自分を許してくれるのかと思ったが、そんな彼女に対してテンは拳を振り下ろす。
「だけどね、反省すればいいだけの話じゃないんだよ!!」
「はぐぅっ!?」
今度は先ほどよりも重い一撃が頭に響き、ルナは両手で頭を抑えつける。そんな彼女にテンは痛めた右手を摩りながら告げる。
「いいかい、あんたは昨日と今日だけでどれだけの人間に迷惑をかけたと思ってるんだい?団員の皆、街の人たち、それにあんたをわざわざ探しに来てくれた子達まで迷惑をかけたんだよ」
「で、でも……」
「でもじゃない!!返事ははいだろうがっ!!」
「は、はいっ!!」
言い返そうとしたルナに対してテンは厳しく叱りつけると、彼女の頭に手を伸ばす。また殴られるのかと思ったルナだったが、予想に反してテンは彼女の頭を優しく撫でた。
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