閑話 〈とある情報屋〉
「――どうやら噂以上だね、あの坊主の強さは……」
「チュチュッ」
ナイ達がルナとの戦いを終えた後、彼等が去った後に立ち寄り、教会内部に事前に隠していた鼠を呼び寄せる。正確に言えば彼女が従えているのはただの鼠ではなく、魔獣である。
彼女が従えているのは「灰鼠」と呼ばれ、元々はこの地方には存在しない魔獣だが、彼女が連れ出してきた。この王都に暮らす灰鼠は全て彼女の配下であり、額に魔法陣が刻まれていた。
魔物使いは魔獣と契約を行い、その魔獣と意識を共有化させる事が出来る。これを利用してネズミは王都中に灰鼠を送り込み、情報収集を行う。
「まさか狂犬ルナとあそこまで戦えるなんてね、例の火竜殺しの噂もホラでもなさそうだね」
「チュチュッ……」
「あんた達、よくやったね。ほら、今日の餌だよ」
ナイ達の戦いの一部始終を実際に見ていたのは灰鼠たちであり、彼女は籠を取り出すと中身の果物をばら撒く。それに対して灰鼠たちは嬉しそうに食らいつき、皆で仲良く分け合う。
灰鼠は仲間意識が強い魔獣であり、決して単独では行動しない。そんな彼等を利用してネズミは教会内の戦闘を確認し、良い情報を手に入れたと考える。
「さてと……そろそろあたしも行こうとするかね。闇ギルドの連中はどれくらい高く買ってくれるかね」
ナイの事を注目しているのは一般人だけではなく、闇ギルドも彼の存在に注目していた。かつて彼等は闇ギルドとも繋がりがあった商人のバーリがナイに関わった事で捕まっていた事を覚えており、中にはナイを警戒する者もいた。
しかし、ナイは王族のアルトと親密な仲であり、あの聖女騎士団の団長であるテンと関りがある事も判明している。そのため、闇ギルドも迂闊には手を出せなかった。だからこそ彼等は情報屋であるネズミに彼の身辺を調査させる。
今の所は発覚したのはナイに関わる噂の類が殆どが真実である事、そして彼が聖女騎士団の狂犬と恐れられたルナと互角以上に渡り合う実力を持つという事だけである。しかし、時間をかけてネズミはナイの事を調べ上げ、その情報で稼ぐつもりだった。
「さてと……テンの奴はあの坊主を庇える事は出来るのかね。自分の命も危ないというのに」
「チュチュッ?」
「何でもないよ、ほら行こうか」
テンの名前を口にした時、何故かネズミは懐かしい声を上げ、その態度に灰鼠たちは不思議に思うが、彼女は灰鼠たちを連れてその場を立ち去った――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます