閑話 〈恋のライバル〉
――モモがナイのために煌魔石の製作に集中する中、彼女と同様にナイの事を意識しているリーナは偶然にもハマーンから話を聞かされていた。
「えっ!?モモちゃんがナイ君のために煌魔石を!?」
「うむ、少し前に儂に魔石に魔術痕を刻むように頼んできてな。大方、あの坊主のために頑張って作ってる頃合いじゃろう」
「モモちゃんが……」
煌魔石を製作してナイに渡そうとしている事はハマーンも把握しており、それをあっさりと他の人間に暴露してしまう。流石にナイ本人には言わない様に口止めされているが、それ以外の人物には話さない様に注意されわけではないため、彼はあっさりとリーナに煌魔石の事を話してしまう。
ヒナは煌魔石の事を魔術師の間に伝わる「お守り」のような物だと説明したが、これは半分は正しくて半分は誤りである。魔術師が時間と労力を費やして作り出す煌魔石は特別な意味合いが存在し、この煌魔石は想い人を守るためのお守りとして伝わっている。
(モモちゃん、やっぱりナイ君の事が好きなんだ……)
リーナはモモがナイの事を意識しているのは薄々と勘付いており、彼女がナイに煌魔石を渡すという事は告白するのに等しい。そんな話を聞かされてリーナは胸元を抑えた。
(何だろう、この感じ……胸がちくちくする)
モモがナイに煌魔石を渡すという事は告白する事に等しく、もしもあの二人が付き合う事になったらと思うとリーナは落ち着かない。そんな彼女を見てハマーンは不思議な表情を浮かべる。
「どうした?何か気になる事があるのか?」
「え、いや……何でもないです」
ハマーンに尋ねられて慌ててリーナは誤魔化すが、彼女はそのまま立ち去ろうとする。だが、そんな彼女を見てハマーンは何かを察すると、彼女を呼び止めた。
「待て、リーナよ……実はこの街の住民から面白い話を聞いてな」
「面白い話……?」
「この街には恋愛成就する有名な装飾品が販売されていたそうじゃ。まあ、街がこんな状態では店も潰れているかもしれんが……この近くにあるそうじゃ。お土産にでも買ってきたらどうじゃ?」
「恋愛成就……」
リーナはハマーンの話を聞いて彼から詳しい店の位置を訪ね、その場所に向かう――
――結論から言えば店は開いてはいなかったが、店を経営する人間はこの街に戻っていた。幸いにも店の主人は大きな怪我はなかったが、リーナが尋ねに来ると驚いた様子で聞き返す。
「え?お守り?確かにうちはその手の商品も扱っていたけど……今、欲しいのかい?」
「えっと……ちょっと、興味があって来たというか」
「そうかい、なら好きなのを選びな。どうせこんな状態だと店なんて開けないからね」
「え、いいんですか?」
「ああ、どうせこのままだと店も開けないからね」
店の中は酷い状態であり、どうやら主人が避難している間に店の中はゴブリンか強盗にもで入り込まれたらしく、荒された形跡が残っていた。
店の商品の殆どは床に散らばっており、片付けようにも主人一人だけでは時間が掛かるらしく、殆どの商品が使い物になりそうに無い状態だった。これでは店を開くなど出来ず、店主は好きな物があれば好きなだけ持っていくように促す。
「ほら、うちの店で一番のお守りはこいつだよ」
「わあっ……綺麗ですね」
「そいつは特別な加工で作り出された代物でね。簡単には壊れない様に出来ているよ……相場は銀貨1枚程度なんだけど、今回は無料でいいよ」
「えっ!?そんな……」
「いいからいいから、どうせこのままだと処分するしかないんだから持って行きな。ほら、彼氏の分も渡してあげるからさ」
「ええっ!?」
気前のいい店主はリーナの態度を察して彼女が贈り物を使用としている事に気付き、二人分のペンダントを渡す。このペンダントはどちらも変わった形をしており、この二つ組み合わせる事でハートの形になる事を説明する。
「ほら、このペンダントはこうして二つ合わせるとハートになるだろう?恋人同士で身に付ける装飾品に一番ふさわしい代物だよ」
「わあっ……か、可愛いですね」
「どうだい、気に入っただろ?」
店主の言葉にリーナは渡されたペンダントに視線を向け、これを自分とナイが身に着ける姿を想像するだけで頬を赤くする。彼女は店主の言葉に頷き、有難く受け取る事にした。
(こ、これをナイ君が身に着けてくれたら……嬉しいかも)」
渡されたペンダントを握りしめながらもリーナは笑みを浮かべ、今度ナイと会う時が楽しみであるのと同時に自分がどのように渡すべきか悩む。
(あれ、これってもしかして告白になるんじゃ……い、いや、違うよね?僕は店で買ったお土産の品を渡すだけだし……うん、そうだよね)
自分自身に言い訳しながらもリーナはペンダントを手放さず、とりあえずはナイが戻るまで待つ事にした。
※同時刻
モモ「っ!?今、何か悪寒が……(;´・ω・)」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます