閑話 〈その頃の王都では……〉
――深夜、王都に存在する廃墟にてテンはアリシア達と共に訪れていた。この場所は闇ギルドの代表たちが集まっていた場所だが、既に彼等は撤退していた。
「テン、どうやら奴等はもう逃げ出したようだな」
「ちっ……ここも外れかい、あたしの勘も鈍っちまったのかね」
「いや、ついさっきまで人が残っていた痕跡はある。今回は運が悪かっただけだろう」
テン達はこの場所へ訪れたのは闇ギルドに属する者達を捕縛するためだが、既に逃げられた後だった。ほんの少し前までは人が残っていた痕跡はあるが、一足遅かったらしい。
この場所を見つけ出したのはテンであり、彼女は勘を頼りにここまで辿り着いた。昔からテンはこの手の悪人を見つけ出す際の勘はよく働くのだが、今回は運悪く間に合わなかった。
「闇ギルドめ、まだ残っていたのか……テン、どうして放置していた」
「あたし一人であいつらをどうにか出来るはずがないだろう?それに闇ギルドなんていくつぶっ潰そうと、その代わりにまた新しい闇ギルドが出来上がるもんだよ」
「闇ギルドを完全に潰すためには……奴等を一斉に潰す必要があるという事か」
「そういう事だね。けど、そんな事はあたし一人に出来るはずがない」
「だが、今は私達がいる」
テンの言葉に他の者達は笑みを浮かべ、そんな彼女達を見てテンは昔の事を思い出す。現役を引退してからは彼女は一人で動く事が多かったが、やはり心強い仲間が側にいると安心する。
ここに王妃ジャンヌがいない事だけは寂しく思うが、続々と聖女騎士団に所属していた団員達は集まってきており、それに元団員の中には将来有望な人材を連れてくると連絡してきた者も多い。
聖女騎士団に所属していた団員達は全員がテンと同世代か、彼女よりも年を重ねた者も多い。現役から離れている者も多く、流石に昔の面子だけを集めて騎士団が成り立つとはテンも思っていない。
(若手も集めて鍛え上げる必要があるね。そういう意味ではうちの子達も向いてるとは思うんだけどね……あの不良娘達、帰ったら覚えておきな)
ヒナとモモが飛行船に乗り込んだ事はテンも既に把握しており、見送りに出向いた二人が飛行船の近くで姿を消したと兵士から報告は受けている。最初は闇ギルドの仕業かと思ったが、あの二人を人質に取るつもりなら既に何かしらの連絡を送っているはずだが、今だにそれはない。
それでも念のためにテンは他の仲間達を連れて闇ギルドの動向を探り、万が一にもヒナとモモが捕まっていた事を想定して探索を行っているが、ここまで闇ギルドに所属する人間一人も捕まえられていない。
(妙だね……あいつらにしては行動が早過ぎる。まるであたし達の動向を把握しているような……考え過ぎかね)
これまでにテンはいくつもの闇ギルドをつぶしてきたが、どうも最近は闇ギルドの動向が読み取れない事があった。今回も闇ギルドの連中尾取り逃がしてしまい、手がかりさえも得られていない。
嫌な予感を浮かべながらもテンは仲間達を連れて引き返そうとした。しかし、最後にテンは廃墟に並べられている中央が黒塗りの円卓に視線を向け、目つきを鋭くさせる。
「テン、どうしたの?」
「ここに残っても仕方がないぞ」
「……ああ、そうだね」
「……?」
テンの態度に他の仲間達が不思議そうな表情を浮かべるが、この時に彼女達は気づいていなかった。円卓の中央部分には影が差しており、その影はテン達が消えた途端に内部から人間が姿を現す。
『やはり勘が鋭い……これは苦労しそうだ』
シャドウはテン達を見送り、今回は彼女の暗殺を諦める事にした。だが、隙を狙ってテンを始末するつもりであり、彼はそのまま影の中に姿を消し去る――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます