貧弱でも英雄になれますか？

第499話 シノビとクノとの対面

飛行船に一度戻ったナイは荷物を纏めると、この途中でナイは仕事中のヒナを見かけた。彼女はナイが荷物を持ち歩いている事に驚き、話しかける。

「ナイ君！？その荷物、どうしたの？」

「ちょっと色々と事情があって、ニーノという街にいる叔父さんに会いに行くことになって……」

「あ、ああ……そう言う事ね。でも、ナイ君に叔父さんがいるなんて初めて聞いたわね」

ヒナはナイが叔父のいる街に向かうと聞いて納得し、彼女はこの時に何か考え込む素振りを行い、ナイに尋ねた。

「……何時頃、ここへ戻ってくる予定なの？まさか何日も離れるわけじゃないわよね？」

「明日の夜までには帰るつもりだけど……」

「そう、それなら悪いんだけど明日の夜にモモと私の部屋に来てくれる？あ、予定よりも早く戻って来た時は私に先に会いに来てくれる？」

「え？いいけど……何か用事があるの？」

「ううん、大したことじゃないんだけどね……その、ともかく約束よ」

ナイが予定よりも早く帰還した時は真っ先に自分の元へ訪れるようにヒナはナイに約束させ、彼女の真意は掴めないがナイは頷く。

その後はヒナに見送りされる形でナイはビャクと共に飛行船を降りると、地図を広げて現在の位置とニーノの位置を確かめる。

「よし、これぐらいの距離ならビャクならすぐに辿り着けるな。頼りにしているぞ、相棒」

「ウォンッ！！」

ビャクは久々にナイと二人きりで旅に出れる事に嬉しく思い、顔を摺り寄せる。そんなビャクの頭を撫でながらもナイは背中に乗り込もうとした時、ここでナイは異様な気配を感じた。

「っ……誰だ！？」

「ウォンッ！？」

ナイが大声を上げるとビャクも驚いた様に振り返り、この時にビャクは鋭い嗅覚で自分達以外に何者かが存在する事に気付く。やがて何処からともなく声が響き渡り、二つの人影が出現する。

「……まさか、我々に気付くとはな」

「驚いたでござる。前に出会った時よりも相当に腕を上げているでござるな」

「貴方達は……思い出した、確か前に街で助けてくれた冒険者の……」

「ウォンッ？」

ナイとビャクの前に現れたのはシノビとクノであり、二人はナイが自分達の存在に気付いた事に驚いていた。ナイはこの時に二人の顔を確認し、前々回にイチノが魔物の大群に襲われた時に遭遇した二人組の冒険者だと思い出す。

この二人の事は印象深かったのでナイもはっきりと覚えており、これからナイが向かうニーノと呼ばれる街で冒険者稼業を行っているはずだった。階級は金級で実力はかなり高く、ナイよりも優れた「隠密」の技能の使い手だと思われた。

(ここまで接近されて全然気づく事が出来なかったなんて……前に戦った疾風のダンとかいう奴と同じぐらい隠密の技能を極めている)

かつてナイを敗北に追い込んだ疾風のダンという傭兵は「隠密」の技能を得意とする剣士であり、存在感を消し去る隠密の技能を極めれば姿が透明になったように見えなくなり、それを利用して不意打ちを仕掛ける事が出来る。

シノビとクノは隠密の技能で完璧に存在感と気配を立ち、人間よりも五感に優れているビャクでさえもナイが気づいた後に二人の存在を感じとる。鋭い嗅覚を持つビャクが二人の接近に遅れて気付いた辺り、相当な実力者なのは間違いない。

「どうして貴方達がここに……」

「我々はリノ王女に直々に依頼されて現在は行動を共にしている」

「最も今は特にやる事もないのでここで待機していたのでござるよ」

「グルルルッ……！！」

二人の言葉にビャクは警戒心を露にしており、その態度からナイは二人に対してビャクが得体の知れない力を感じている事に気付く。目的が何なのかは不明だが、ナイは率直に尋ねる。

「僕達に何か用ですか？技能をわざわざ使って近付いて来た辺り、何の用事もないはずはありませんよね」

「……すまんな、別に大した用事があるわけではない」

「拙者達は常日頃から目立たないように隠密の技能の訓練をしているだけでござる。別に驚かせるつもりはなかったでござるよ」

「クゥ〜ンッ……」

二人の話を聞いてビャクはナイの背中を鼻先でつつき、早く移動するように促す。ナイは二人が自分に用事がないのであれば先に行く事を伝えてビャクの背中に移動する。

「そうですか……なら、僕達は急ぎの用事があるのでこれで失礼します」

「待て……もしもニーノに向かうのであれば我々の助けは必要ないのか？」

「えっ？」

「拙者達はニーノの冒険者でござるよ。道案内も出来るし、色々と役に立つでござるよ」

思いがけない二人の言葉にナイは驚愕し、言われてみればこの二人がニーノの冒険者である事を思い出す。確かに二人の言う通りに道案内役がいてくれれば助かるが、ここでナイは疑問を抱く。

※深夜にナイがイチノへ訪れた時にこの二人と会う場面もあったかもしれませんが、その時は人が多すぎて気付く事が出来なかった感じです。