第449話 空賊の頭
「うぎゃああっ!?」
「あ、足がぁっ……」
「ひいいっ!?」
ヒッポグリフと共に両足を切り裂かれた男達は床に倒れ込み、切り裂かれた足を必死に両手で抑え込む。その様子を見てリンは鞘に刀を戻すが、全員を仕留めきれなかった事に悔しく思う。
「何人かはしくじったか……距離が離れ過ぎていたな」
「いやいや、でも半分くらいは始末できましたよ」
「暴風……相変わらず恐ろしい威力ですわ」
「凄い……」
「これが魔剣の力か……」
イリアは甲板に存在する全員を倒すつもりだったが、位置と距離の関係で全員を仕留めきる事が出来なかった。前方に並んでいたヒッポグリフのせいで彼女の斬撃は威力が落ちてしまい、距離が離れていた後方のヒッポグリフと背中に乗り込んでいる者達は無傷だった。
「ば、化物め……くそっ、ここは退くぞ!!」
「空へ逃げろっ!!」
「クエエッ!!」
生き残った空賊たちは仲間を見捨ててヒッポグリフを飛翔させ、再び空へと逃げていく。空へ移動されるとナイ達も攻撃手段がなく、流石に刺剣やフックショットで狙うわけにはいかない。
命中の技能を発動させれば刺剣やフックショットなどでヒッポグリフや背中の人間を倒す事は出来るだろうが、その場合は相手を殺しかねない。ないとしてはヒッポグリフはともかく、背中に乗り込む人間を殺したくはなかった。
(まだ地上までかなりの距離がある。ここであいつらを攻撃して落とせば間違いなく死ぬ……でも、このまま放置するわけにもいかない)
相手を殺さない様にどうにか捕まえる方法がないのかとナイは考えていると、この時に飛行船の上空の方から大きな影が差す。何事かとナイは顔を見上げると、そこにはヒッポグリフとは異なる魔物に乗り込んだ大男が現れた。
大男が乗り込んでいる魔物は鷲の頭と翼を生やし、下半身の方は獅子を想像させる姿かたちの魔物だった。すぐにナイはその魔物を見てかつて絵本で見た事がある「グリフォン」と呼ばれる魔物だと見抜く。
「ふんっ!!」
「ガアアッ!!」
グリフォンに乗り込んだ大男は甲板に降り立つと、この際にグリフォンは鷲の頭でありながら獅子のような鳴き声を放つ。これまでに倒した奴等とは雰囲気が異なり、グリフォンに乗り込んだ大男は片目に傷を負っていた。それを見たドリスは槍を構える。
「……何者ですの!?」
「名乗る必要はない……どうせ貴様等はここで死ぬのだからな」
「ガアアッ!!」
「ウォンッ!!」
大男はグリフォンから降り立つと背中に背負っていた二つの手斧を引き抜き、ナイ達と向かい合う。この際にビャクはナイの元へ移動し、グリフォンを威嚇する様に鳴き声を放つ。
異様な雰囲気を発する大男を見てナイ達はすぐに彼が空賊の頭だと判断し、武器を構えた。その一方でグリフォンを従えた大男は両手の手斧を構えると、ナイ達へ向けて放つ。
「ふんっ!!」
「うわっ!?」
「くっ!?」
「きゃっ!?」
「ぬおっ!?」
大男が放った手斧をナイ達は避ける事に成功したが、まるでブーメランのように手斧は空中で旋回し、大男の元へ戻って来た。それを見たナイ達は驚き、大男は笑みを浮かべながら両手で手斧を回転させる。
「よく避けたな……だが、今度はどうかな!?」
「こんな物っ!!」
「待て、ドリス!!迂闊に手を出すな!!」
再び手斧を大男は投げつけると、この時にドリスは真紅を突き出して手斧を弾き返そうとした。だが、真紅に触れる寸前に手斧は軌道を変更させると、真紅を繰り出したドリスの顔面に向かう。
「きゃあっ!?」
「危ないっ!!」
咄嗟にナイはドリスの顔面に迫る手斧に対して刺剣を引き抜き、手斧に衝突させる。その結果、僅かに手斧の軌道が変化した事でドリスの頭上を通過し、最悪の事態は免れた。その様子を見て大男は舌打ちし、一方でドリスは冷や汗を流す。
「た、助かりましたわ……ありがとうございます」
「いえ、気にしないでください」
「油断するな、まだ攻撃は終わっていないぞ!!」
ドリスは礼を告げるとナイは大男に視線を向け、攻撃を仕掛けようとした。だが、リンの言葉を聞いて振り返ると、先ほど刺剣で弾いたはずの手斧が旋回して戻って来た。
どうやらただの武器ではないらしく、攻撃を避けても弾こうとしても手斧は空中で軌道を変更させ、大男の元へ戻っていく。恐らくはミイナのような魔斧型の魔道具だと思われ、大男は二つの手斧を繰り出す。
「しぶとい奴等だ……ならば、これならどうだ!!」
「ひいっ!?また早くなりましたよ!?」
「いかん、後ろに下がれ!!」
「キャインッ!?」
再び投げ込まれた手斧は高速回転しながらナイ達へ襲い掛かり、この時にゴンザレスはイリアを守るために自ら盾となり、ビャクも迫りくる手斧を躱す。
ナイは優れた動体視力で手斧の動作を読み取り、回避しながらも大男に近付こうとした。ドリスとリンも彼と同じように手斧の攻撃を回避しながら接近しようとしたが、大男の意志に従うように手斧は軌道を変化させ、3人を近づかせない様に執拗に狙う。
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