閑話 〈伝説の鍛冶師と旅人〉

――100年以上前、伝説の鍛冶師と呼ばれたフクツの元に一人の旅人が訪れた。その旅人はフクツがどんな武器も作り出せる優秀な鍛冶師だと知り、その噂が真実かどうかを確かめるためにフクツの元へ訪れた。


旅人の名前は「レイ」という名前の青年であり、彼は剣士としては一流であるが、生まれた時から腕力が強すぎてどんな武器もすぐに壊してしまうという悩みがあった。



「何?どんなに使おうと壊れない武器を作ってほしいだと?」

「ああ、そうだ。俺はあんたと会う前に99人の鍛冶師に仕事を依頼した。だが、誰も俺の願いを叶える事は出来なかった……しかし、伝説の鍛冶師と呼ばれるあんたなら俺の望み通りの武器を作れるはずだ」

「……ほう」



フクツは最初にレイの言葉を聞いた時は自分をからかっているのかと思ったが、彼の眼は真剣そのものだった。試しにレイは自分が作った武器の中でも一番の強度を誇る武器を渡すと、この数日後に青年は戻って来た。



「駄目だ……この武器では満足に戦えない」

「これは……馬鹿な」



これまでにフクツが作り上げた武器の中でも最高の強度を誇る剣でさえも青年はたった数日の間に折ってしまう。この武器の素材は魔法金属で構成されており、並大抵の事では折れる事がない。



「頼む、フクツさん。俺が欲しいのはこんな鈍らじゃない。あんた以外に頼れる人間はいないんだ……絶対に壊れない武器を俺にくれ」

「絶対に壊れない武器と来たか……いいだろう、なら俺の全てを賭けてでも作ってやろう」



レイの言葉にフクツは彼のために絶対に壊れない魔剣を作り上げるため、これまでに培った技術を注いで魔剣の製作を行う。




――単純に強度が高い武器を作って渡したとしても、使い続ければ何時の日か必ず壊れてしまう。しかし、もしも武器その物が自力で修復する機能があれば壊れない武器と化すのではないか、そう考えたフクツは魔剣を作り上げた。




そして完成した武器は一見はただの剣に見えない代物だったが、レイは彼から渡された剣を気に入った。彼の注文通り、フクツに作り出した剣は決して折れる事はなく、レイの生まれ持った異常な腕力にも負けない魔剣が作り上げられたという。


後にフクツはもう1本だけ魔剣を製作した後、彼は鍛冶師を辞めた。理由は定かではないが、フクツは2本の魔剣を作り上げた後にこう語った。



「俺にはもう……あれ以上の魔剣を作り出す事は出来ない」



彼が作り上げた二つの魔剣の内、どちらの魔剣の事を指しているのか不明ではあるが、フクツは二つ目の魔剣の製作以降は鍛冶師を辞めて隠居した。その後、レイは彼から受け取った武器を自分の家の家宝にしたという――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る