第359話 連続攻撃
「はあああっ!!」
「っ!?」
『おっと、今度はクロノ選手から仕掛けました!!』
ナイは雄たけびを上げながらリーナに近付くと、その気迫にリーナは気圧され、危険を感じ取って彼女は後ろに跳ぶ。その行動は間違いではなく、直後にナイの振り下ろした岩砕剣が地面に叩き込まれる。
全身の筋肉を利用した一撃によって岩砕剣は地面にめり込み、土煙を舞い上げる。まるで巨人族級の怪力を誇るナイの攻撃にリーナは驚き、下手に彼女が防御しようとしたら敗北は免れなかっただろう。
(凄い……こんな攻撃、受けたらひとたまりもないや!!)
攻撃速度はリーナが勝るが、一撃の威力と重さはナイの方が上回り、もしもリーナがナイの攻撃をまともに受ければ敗北は免れない。だが、それを理解した上でリーナは笑う。
(こんなにドキドキする戦いは久しぶりだよ!!)
強敵を前にするとリーナは興奮を抑えきれず、彼女は痺れた腕が感覚を取り戻した事を確認すると、槍を構える。それを見たナイはリーナが動く前に追撃を行う。
「はああっ!!」
「うわっ!?」
『今度はクロノ選手が仕掛けた!!リーナ選手、逃げるのに精いっぱいでしょうか!?』
「頑張れ、リーナ!!」
「そのまま押し込め、クロノ!!」
観客席も二人の戦闘に夢中になり、声援を送る。ナイは大剣を薙ぎ払い、攻撃範囲を広めてリーナの後を追う。その一方でリーナは距離を取りながらもナイの隙を伺う。
「はああっ!!」
「……ここっ!!」
「なっ!?」
ナイが大剣を振り払った瞬間、リーナは後ろに躱すのと同時に槍を地面に突き刺し、棒高跳びの選手のように上空へと浮き上がる。その様子を見てナイは驚愕するが、空中に跳んだリーナは地面に突き刺した槍を引き抜く。
上空へ跳んだリーナは大きく後方へ下がると、ナイと距離を置いた状態で着地する。この際にリーナは体勢を低くした状態で槍を構える。最初の時のように一気に距離を縮めて自分に攻撃するつもりかと思ったナイは身構えると、リーナは動き出す。
「やああああっ!!」
「っ――!!」
気合の雄叫びと共にリーナは駆け出すと、彼女は槍を突き出す。先ほどと違い、一撃で仕留めるために彼女は全力の一突きを放つ。
――しかし、リーナの放った槍はナイに掠る事もなく避けられてしまう。彼女が動き出した瞬間、ナイも後方へ跳んで攻撃を回避していた。攻撃を躱されたリーナは信じられない表情を浮かべた。
先ほどの攻防でナイはリーナの瞬間移動のような高速移動の正体を「跳躍」の技能だと見抜いていた。彼女は恐らくはリンと同様に「俊足」の技能を習得しており、更に跳躍の技能を組み合わせる事で高速移動を行っていたのだ。
リーナの戦法は相手と距離を取る事で油断させ、俊足と跳躍を組み合わせた高速移動を行い、距離を詰めて敵の意表を突き、槍で仕留める。しかし、この攻撃法の弱点は相手がリーナと同じ移動方法を身に着けていた場合、彼女が動いた瞬間に動けば攻撃を躱される事も容易い。
(危なかった……!!)
ナイはリーナが動いた瞬間、自分も後方へ跳躍を行う。リーナのように彼も昨日の時点で俊足の技能を覚えていた事が功を奏し、跳躍の技能と組み合わせる事で「高速移動」が行えるようになっていた。
しかし、リーナの攻撃を回避してナイは距離を取る事に成功したが、ここでナイはミスを犯した。逃げるのに必死でナイは後方の確認を行わず、ナイは背中に衝撃が走る。
「あいてっ!?」
『えっ!?クロノ選手、何故か試合場の端にまで移動しています!!い、いったいこれはどういう事でしょう!?』
「何時の間に移動したんだ!?」
「まさか、転移魔法か!?」
どうやら逃げる際にナイは試合場の端まで移動してしまったらしく、背中から試合場を取り囲む防壁に衝突してしまう。観客席に座っている一般人からすればナイが瞬間移動でもしたかのように試合場の壁際まで移動したように見えたため、騒ぎ出す。
(しまった……距離を取り過ぎた。これだと逃げられない!?)
ナイは後方の壁を確認して焦った表情を浮かべ、後ろを塞がれてしまった。その一方で自分の槍を躱されて呆然としていたリーナだが、壁際に移動したナイを見て気を取り直す。
「僕の槍を躱すなんて……君が8人目だよ!!」
「結構、いるんだね……」
リーナの言葉に突っ込みを返しながらもナイは内心焦りながら岩砕剣を構えた。この状態でリーナが接近した場合、ナイは後ろに跳ぶ事は出来ない。かといって別の方向に逃げ出そうにも、リーナがそれをみすみす見逃すとも思えない。
ナイが壁際から離れる前にリーナは距離を詰めようとするが、ここで彼女は何故かすぐに仕掛けようとせず、足元を気にする。その態度を見てナイは高速移動の影響で彼女の足に負担が掛かり、体力も削られている事を見抜く。
二つの技能を同時に発動させるのは肉体に負荷をかけ、更に攻撃を組み合わせるとなれば体力も大きく消耗する。つまり、高速移動は連続で使用する事は不向きな技であった。
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