第310話 王都の冒険者ギルドでは……
――王都に存在する冒険者ギルドは国内でも優秀な冒険者を取り揃えており、冒険者の数と質は王国一と言っても過言ではない。この王都には優秀な冒険者を取り揃えており、冒険者の中でも最高階級である黄金級冒険者も数名存在する。
冒険者の階級は鉄級、銅級、銀級、金級、黄金級に分かれており、彼らはそれぞれの階級に合わせた冒険者バッジを渡される。鉄級ならば鉄製、銅級ならば銅製のバッジを配布されるが、金級と黄金級のバッジは素材は同じ物だった。
この金級と黄金級のバッジの違いがあるとすれば黄金級の冒険者の場合、バッジに自分独自の紋様を刻む事を許可されている。つまり、バッジに紋様が刻まれた人間は黄金級冒険者の証明であり、同時に刻まれた紋様は冒険者個人の象徴でもある。
アルトが大迷宮に挑戦する事を決意した日、その晩にギルドマスターは王都内に滞在している黄金級冒険者を呼び出した。今回の依頼は国の王子からの依頼でもあり、ギルドマスターとしては最も実力があり、信頼の厚い冒険者に今回の依頼を引き受けてもらいたかった。
「皆、急な呼び出しに応じてくれて感謝する」
「いやいや、お気になさらずに」
「どうせ暇してたしね~」
「それで、今回はどんな用事ですか?」
王都の冒険者ギルドのギルドマスターは巨人族の男性であり、名前はギガンという。元は黄金級冒険者として活躍していた優秀な冒険者だったが、現在は引退してギルドマスターの位に就いている。
ギガンの前に集まったのは3人の男女であり、全員が黄金級冒険者の証であるバッジを身に付けている。彼等こそが王都の誇る最高の冒険者達であるが、その内の二人はまだ少年と少女のような風貌をしていた。そして最後の一人は小髭族の老人であり、ギガンとも長い付き合いのある男性だった
「それにしても儂等を呼び出すとは……何事ですかのう?」
「うむ、まあ話をする前に座ってくれ」
全員に座るようにギガンは促すと、改めて全員が机を挟んで向かい合う形となる。この時にそれぞれが手にしていた武器を下ろす。
小髭族の老人は身の丈の倍は存在する巨大な鉄槌、少年はミスリルで構成された杖を置き、最後の赤髪の少女は青く光り輝く刃の槍を壁に立てかける。それぞれの持っている武器が魔道具であり、その価値は計り知れない。
――白髪頭の小髭族の老人の名前は「ハマーン」彼は冒険者であると同時に超一流の鍛冶師でもあり、冒険者ギルド専属の鍛冶師の一人でもある。彼の作り出す武器や防具は一級品ばかりであり、ギガンも若い頃は彼の作り出した装備品を身に付けて戦っていた。
鍛冶師としての腕前も一流ではあるが、冒険者として実力も高く、かつてロックゴーレムと呼ばれる全身が岩石を構成された魔物の群れをハマーンは一人で討伐を果たした事がある。だが、現在は年齢のせいもあって昔ほどに活発的に冒険者活動はしていない。
「ギルドマスターよ、儂等を呼び出す程の事態とは何事じゃ?何か大きな問題が起きたのか?」
「……実は昼間、第三王子が直接にこの冒険者ギルドに訪れて依頼を申し込んできた」
「へえ、あの変わり者で有名な第三王子が?」
「これ、口を慎まんか。変わり者など王子様に失礼であろう」
アルトが訪れたという言葉に少年のような容姿の冒険者が反応し、彼は興味深そうな表情を浮かべる。この少年の名前は「ガオウ」頭には虎を思わせる獣耳を生やしており、一見は少年のように見えるが実年齢はギガンと大差はない。
若々しく見えるがガオウの年齢は30代前半であり、ギガンとは同期でもある。ギガンとは互いに冒険者になった時からの付き合いで気ごころの知れた仲だった。
「ガオウ、今のは聞かなかった事にしてやる。だから真面目に話を聞け」
「はいはい、分かりました。それで、王子様はどんな依頼を申し込んできたの?」
「……大迷宮に潜りたいとの事だ。依頼内容は大迷宮に道案内、成功報酬は大迷宮内で入手した素材の3分の1を提供するとの事だ」
「えっ!?アルト王子が大迷宮に挑むの!?」
ギガンの言葉を聞いた少女は驚いた声を上げ、彼女だけがアルトの事を第三王子ではなく、名前を付けて呼ぶ。実を言えば彼女だけは他の者と違い、アルトとは縁がある人物だった。
――少女が身に付けているバッジには紋様が刻まれており、その紋様の形がアッシュ公爵家の紋様と全く同じ形状だった。彼女こそがアッシュ公爵の一人娘であり、わずか16才という年齢で黄金級冒険者に上り詰めた最年少冒険者でもある。
彼女の本名は「リーナ・アッシュ」公爵家の令嬢でありながら冒険者として活動し、現在は
※やっとアッシュ公爵の娘を出せました。
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