第221話 色々な後始末

――ナイがガーゴイル亜種を倒した後、すぐに銀狼騎士団と黒狼騎士団が到着し、屋敷内にいた兵士と傭兵の拘束、及びバーリに捕まっていた女性たちの保護が行われたという。


モモが話していた通りにバーリの方は先に警備兵に捕まっており、モウタツやノイの証言もあって彼の悪事は暴かれた。ちなみにモウタツが属していた闇組織の方はテンによって壊滅させられ、組織の組員は全員捕縛済みだという。


テンが駆けつけて来た時には全てが終わっていたので彼女としては拍子抜けだったが、問題なのはそこから先の話である。今回の件はバーリがミイナを誘拐したのが切っ掛けであり、仮にも王国騎士である彼女が悪党に捕まったのが問題でもあった。



「バーリはああ見えても商人としては名が通っていたからね。それにあんなにも騒ぎを起こした以上は街の住民に隠し立てする事は出来ない。だから説明する必要もあるんだよ」

「ガーゴイルが暴れた件は既に街中に噂になっています。あれほど大騒ぎを起こせば当然ですが……」

「安全なはずの王都に魔物が入り込んだ事に民衆も不安がっている。だから事情を説明しないといけない」

「なるほど……」



ガーゴイルの件は既に一般人の間でも噂になっているらしく、あれほど派手に暴れてしかも王国騎士団が出動したとなれば隠しきれるはずがない。それに今回の件で「赤煙筒」が使用された事は大勢の人間に目撃されている。


流石に今回の件は住民にも何らかの説明を行わなければならないのだが、仮にも王国騎士(見習い)のミイネが誘拐され、それを助けるために表向きは一般人であるナイ達が乗り込んで彼女を救い出すためにバーリを捕まえた――などと説明できるはずがない。



「仮にも王国騎士の称号を持つ人間が捕まったとなれば、騎士の沽券にも関わる大問題なんだよ。でも、結果的にはバーリが裏で行っていた悪事を暴く事も出来た。そういう意味ではあんたらはお手柄だけど、流石にその事を馬鹿正直に説明するわけにもいかないのさ」

「なら、どう説明するんですか?」

「その辺に関してはちゃんと考えてあるよ。今回の騒動は白狼騎士団、銀狼騎士団、黒狼騎士団の3つの王国騎士団が共同作戦でバーリの屋敷に突入し、秘密裏に持ち込まれていた魔物の討伐及びに国家反逆を企んでいたバーリの捕縛を実行した。そういう風に噂が流されるだろうね」

「えっ……?」

「要するに今回の騒動は偶然ではなく、最初から3つの騎士団が計画的にバーリを捕まえるために行動を起こした事にするのさ」



テンによると今回の騒動は全てバーリの悪事を暴くためであり、3つの王国騎士団が結託して彼の屋敷に突入し、魔物の討伐とバーリの捕縛を計画していた事に仕立て上げた。


この内容ならばバーリを悪者に仕立て上げ、更に彼が屋敷の警備のために外国の商人から購入したガーゴイルに関してもバーリが国の反逆者として仕立て上げるのに十分な理由だった。



「この国では魔物の売買は厳重に禁止されているからね。その法律を破ってバーリは裏で魔物を王都へ持ち込み、いずれ魔物を利用してこの国に災いを齎そうとした……という筋書きにしたのさ。まあ、あいつも裏で色々とやらかしていたからね。国の平和を乱すという意味では反逆者というのもあながち間違ってはないだろうけど……」

「じゃあ、バーリはこれからどうなるんですか?」

「魔物の密輸、誘拐、監禁……数え切れないほどの罪を犯してるからね。処刑は免れないだろうね。まあ、同情の余地はないけど」

「あいつは女の敵、処刑が妥当」

「自業自得です!!」



バーリに苦しめられた人々を思うと彼の処刑は当然の事であり、その事に関してはナイも異論はない。そもそもガーゴイルを密かに購入している時点で違法であり、実際にガーゴイルのせいで被害も生まれている。


彼に雇われていた兵士や傭兵は事情聴取が行われ、捕まっていた女性や無理やりに使用人として働かされていた者達は保護され、いずれは家族の元へ送り返される事になるだろう。



「ノイという娘もあんたに感謝してたよ。けど、ここからが問題でね……民衆の方はさっきの話で誤魔化す事が出来ても、あんたの場合は事情が違う」

「え?」

「ナイは当事者だから今回の一件の真実を知っている。でも、それを他の人に話されると色々と困るから、治療も兼ねてこの王城へ連れて来られた」

「それでなのですが……意識が戻り次第、ナイさんと会いたいという方達がいます」



3人の言葉を聞いてナイは自分がどうなるのか不安を抱き、いったい誰が自分に会いたいと言っているのかを尋ねる。



「僕に会いたい人って……誰ですか?」

「……この王都の守護を任されている王国騎士達さ」

「王国騎士……!?」



王国騎士という言葉にナイは動揺を隠せず、ヒイロやミイナとは違い、正式に王国騎士の位を与えられている人物達が自分に会いたいという言葉に焦りを抱かざるを得ない――

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