第166話 王国騎士団
――王国騎士団の中でナイが知っているのは第二王子が指揮する「銀狼騎士団」と、今日出会った少女二人組が所属する「白狼騎士団」だけである。だが、白狼騎士団の場合はまだ正式に騎士団とは認められていない。
理由としては彼女達が仕える王子が成人しておらず、未成年の間は白狼騎士団は正式に騎士団としては認められない。但し、今年で誕生日を迎えれば二人が仕える王子が成人年齢に到達するため、今年中には騎士団として正式に認められる。
他の二つの騎士団を率いているのはこの国の第一王子であるバッシュ王子と、現国王であるロラン王が指揮している。バッシュ王子は「黒狼騎士団」そして国王は「猛虎騎士団」と呼ばれる騎士団を率いているという。
国内には他にも騎士団はいくつか存在するが、王国騎士団を名乗る事を許されているのはこの4つだけであり、他国にもその名前は知れ渡っている。特にバッシュ王子の黒狼騎士団とリノ王子の銀狼騎士団は多大な功績を上げており、国王の猛虎騎士団は彼が王子の頃から支え続け、彼等の力があったからこそ国王は王位に就けたと言われるほどである。
「へえ、そんなに凄い騎士団に二人は入ってるんですか?」
「え、ええまあ……そうですね」
「……実際の所、私達の場合は他の騎士団に所属していた頃は周りと上手く馴染めなかったから、二人とも厄介払いも兼ねて白狼騎士団に入れられただけ」
「ミイナさん!!」
「厄介払い?」
ナイの言葉を聞いてヒイロは言いにくそうな表情を浮かべるが、ミイナと呼ばれた少女によると彼女達は元々は別の騎士団に所属していたらしい。それがどうして白狼騎士団に配属になったかというと、前の騎士団で問題を起こしたという。
「私もヒイロも元々は別の都市の騎士団に入っていた。でも、ある時に問題を起こして二人とも白狼騎士団に無理やりに異動させられた」
「わ、私は問題なんて起こしていません!!街に入り込んだ魔物を倒すため、ちょっとだけ建物を壊しただけです!!」
「建物を半壊させておいて問題がないと言い張るのは無理がある」
「半壊!?」
ヒイロは前の騎士団に所属していた時は街に侵入した魔物を倒すため、民家を一つ半壊させてしまった。魔物を倒す事には成功したので解雇は免れたが、彼女は前の騎士団から追放されるように白狼騎士団に異動させられたという。
「そういうミイナさんこそ、前の騎士団では仕事をさぼってばかりで追い出されたんでしょう?」
「見回りとかすると、眠たくなる……睡魔には勝てない」
「犬猫じゃあるまいし、職務はちゃんと果たさないと駄目ですよ!!」
「……建物を壊した人に言われたくはない」
「な、何ですって!?」
「まあまあ、落ち着いて……」
喧嘩を始めそうな二人をナイはどうにか宥め、ともかく二人の事情を知ったナイは今回の件に関しては責めない事にした。結果的にはヒイロは勘違いしてナイを襲ってしまい、ミイナの場合もヒイロが襲われていると間違えてナイに攻撃を仕掛けただけに過ぎない。
元々はヒイロが最初の時点で話を聞いていれば誤解も解けて争う事もなかったが、彼女から見れば血塗れの武器を所有した少年、腕を怪我した二人組が倒れている場面を見てはナイが人を襲っているように見えても仕方がない。それに彼女が言っていた様にこの近辺では人攫いの被害が相次いでおり、その犯人と勘違いしたらしい。
「ナイさん、と言いましたね?今回の件は誠に申し訳ございませんでした!!」
「急に切りかかってごめんなさい」
「いや……それよりもこの人達はどうするですか?」
「他にいる仲間の情報を吐かせるために連れて行きます。必ず他にもいるはずですからね、ナイさんをここへ誘導したという商人風の男も見つけ出して捕まえておきます!!」
ナイをこの路地へ誘導した男性も悪党の仲間である事は既に判明しており、そちらの方も二人が対処するという。後の事は王国騎士見習いである二人に任せてナイは去る事にした。
「じゃあ、僕はもう行きますね。宿を探さないといけないので……」
「そういう事なら、ここを真っ直ぐ抜けると白猫亭という宿屋がある。そこの宿屋の女主人とは昔からの知り合いだから、私の名前を出したらきっと宿代を安くしてくれる。そこの狼君も泊めてくれるはず」
「え、本当に?」
「迷惑をかけたお詫び……これを持って行けば女主人も信じてくれる」
ミイナは懐に手を伸ばすと猫の肉球を想像させる髪飾りを取り出し、それをナイに渡す。この髪飾りを見せれば女主人にナイがミイナの知り合いだと通じるらしく、有難くナイは受け取る事にした。
「じゃあ、その白猫亭に行ってみますね。髪飾りの方は女主人さんに渡しておきます」
「そうしてくれると助かる」
「本当にご迷惑をおかけしました……それと悪党の捕縛の御協力もありがとうございます!!この度の恩は忘れません、仕事が終わった後に埋め合わせします!!」
「ウォンッ(今度からは気を付けろよ)」
「……この狼君、もしかして私達の言葉が分かる?」
ナイとビャクは悪党をヒイロとミイナに任せると、彼女達が教えてくれた白猫亭という宿屋に向かう。何だかんだあったが、王都の宿屋の位置を知れたのは幸いであり、王都の宿屋がどんな物なのだろうかとナイは期待しながら歩いていく――
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