第165話 王国騎士見習い
「うおおおっ!!」
「っ……!!」
ナイが気合を込めて叫び声を上げると、少女の方もナイが仕掛けてくると判断して戦斧を構える。ナイは剛力を発動させて脚力を強化させると、少女へ向けて駆け出す。
迫りくるナイに対して少女は戦斧を振りかざし、横向きに振り払う。しかし、その攻撃に対してナイは右腕の盾を構え、迫りくる戦斧の刃を弾き返す。
「だりゃあっ!!」
「うにゃっ……!?」
盾が戦斧に衝突した瞬間に衝撃波を発生させ、戦斧を弾かれた少女は可愛らしい悲鳴を上げて体勢を崩す。それを見たナイは今ならば少女を抑え込めると思い、右手に旋斧を持ち換えて左腕を伸ばす。
「……舐めないで」
「なっ!?」
だが、少女は戦斧を弾かれた勢いを逆に利用し、身体を回転させながら柄の長さを調整させ、正面から迫るナイに向けて柄を突き出す。迫りくる戦斧の柄に対してナイは目を見開き、反射的に「迎撃」の技能を発動させる。
「このぉっ!!」
「えっ……!?」
迫りくる柄に対してナイは左腕に装着した腕鉄鋼で受け流し、直撃を避ける。まさか攻撃を受け流されるとは思わなかった少女は目を見開くが、その間にもナイは距離を詰めて旋斧を構えた。
迎撃を発動させたナイは迅速な動作で反撃行動へと移り、少女の首元に目掛けて旋斧を放つ。少女はもう駄目かと思って目を瞑ったが、いつまで時間が経過して刃が自分の身体を切り裂く事はなく、不思議に思った少女は目を開ける。
「ふうっ……話、聞いてくれる?」
「えっ……?」
少女が目を開くと、そこには旋斧を背中に戻すナイの姿が存在し、彼の手には少女の戦斧が握りしめられていた。どうやら少女が目を閉じた隙にナイは戦斧を奪い、少女が戦えない状態に追い込んで話し合いに持ち込むようだ。
武器を奪われた以上は少女は対抗する手段はなく、彼女は若干警戒しながらもナイが自分を殺そうとしない事から不思議に思い、とりあえずは話を聞く事にした――
――しばらく時間が経過すると、ナイは目を覚ました赤毛の髪の毛の少女と、銀髪の少女と共に盗賊達を縛り上げる。怪我をした盗賊に関してはナイが回復魔法を施して治してやると、その様子を見た赤毛の少女は額が地面にめり込むほどに頭を下げる。
「本当に申し訳ございません!!まさか、襲われていたのがこの男達ではなく、貴方だったなんて……」
「同僚が迷惑をかけてごめんなさい。危うく罪のない人を斬る所だった……」
「……まあ、誤解が解けたのならいいんですけどね」
「ウォンッ!!(ちゃんと反省したか!!)」
ナイは目を覚ました赤毛の少女と銀髪の少女に事情を説明すると、捕まった盗賊達が白状した事で無実が証明される。自分の勘違いのせいで危うく一般人に手を掛ける所だった少女二人は申し訳なさそうに謝罪を行う。
「ヒイロ、どうしてこんな勘違いしたの……どう見てもそっちの男達の方が悪人顔してるのに」
「い、いや……私が来た時にはこの人達が倒れてましたし、それにそちらの魔獣さんが倒れている男の人を食べようとしているように見えたので……そ、そういう貴女こそいきなり切りかかったそうではないですか」
「私の場合は屋根で昼寝しようとしたら、大きな音が聞こえてきて様子を見たら倒れている貴方とこの男の子がいたから襲われてると思ったけど……仮にも見習いとはいえ、王国騎士が一般人に負ける方が問題」
「な、何を言いますか!?そういう貴女こそ、勤務中に昼寝とは何事ですか!?」
「あの、喧嘩は後にしてくれません?それよりも王国騎士って……?」
言い争いを始める少女二人の話を聞いていたナイは戸惑い、とりあえずは赤毛の少女の方は名前は「ヒイロ」というらしく、彼女はナイに対して改めて自己紹介を行う。
「おっと、これは失礼しました!!私達は王国騎士団の「白狼騎士団」に所属する王国騎士……見習いです!!」
「見習い?」
「まだ白狼騎士団は正式に騎士団とは認められていない。だから所属している私達も騎士見習いとして活動している」
「正式に騎士団に認められていない?それに白狼騎士団って……」
二人の話を聞いてナイは以前に王都から派遣された「銀狼騎士団」の事を思い出す。銀狼騎士団も王国騎士団の一つであり、半年前にゴブリンキングの捜索のためにわざわざ遠い王都からナイ達が暮らしていた辺境の街にまで訪れた騎士団である事を思い出す。
名前の響きからナイの前に存在する二人が所属する騎士団も銀狼騎士団と関わりがあると思われ、そもそもナイは王国騎士団がどの程度存在するのかを知らない。この際にナイは騎士団の事を詳しく尋ねる事にした。
「あの、実は僕は田舎から来たばかりで王都の事を良く知らないんです。王国騎士団はどれくらいいるんですか?」
「あ、そうだったんですか。確かに遠方から来られた方なら王国騎士団を知らないのも無理はないですね。王国騎士団は国内では4つしか存在しません」
「騎士団自体は別にいくらでもある。だけど、王国騎士団を名乗る事を許されているのは4つだけ……この国の王族に仕える騎士だけが王国騎士団を名乗る事が許されている」
「王族に仕える……騎士団?」
二人の話によると王国騎士団とは王族直属の騎士団らしく、この国には王族が4人存在し、それぞれが騎士団を率いているという。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます