第144話 広域魔法
(頼む、ゴマン……力を貸して!!)
ナイはゴマンから受け取った盾を構えると、火球に向けて敢えて向かう。そして盾の表面が火球に触れた瞬間、爆音が鳴り響く。
「くぅっ!?」
『グギャアアアッ!?』
「ギィッ……!?」
火球が盾に衝突した瞬間、衝撃波が発生して火球はあらぬ方向へと弾かれ、近くに立っていたホブゴブリンの集団へと向かう。火球が爆発した瞬間に数体のホブゴブリンが火だるまと化して暴れ狂う。
攻撃を仕掛けたゴブリンメイジは信じられない表情を浮かべ、一方でナイの方は魔法攻撃を弾き返した盾に驚く。どうやらこの盾は外部からの衝撃を跳ね返すだけではなく、魔法攻撃さえも弾き返す力を持つらしい。
(凄い……ゴマン、本当に凄いよ!!)
ナイはゴマンが自分のために力を貸してくれたような気分に陥り、力が湧きあがってきた。そしてゴブリンメイジに視線を向けると、ナイは盾を構えながら突進する。
「うおおおおっ!!」
「ギィアッ!?ホ、ホノオヨ……!!」
「させるかぁっ!!」
ゴブリンメイジが次の魔法を発動させる前にナイは刺剣を取り出すと、ゴブリンメイジの顔面に目掛けて放つ。投擲の技能を発動させ、ナイは全力でゴブリンメイジに投げ込むと、ゴブリンメイジの眼球に刺剣は突き刺さり、悲鳴が響く。
「ギィアアアアッ!?」
「これで……終わりだっ!!」
目をやられたゴブリンメイジは悲鳴を上げるが、その間にナイは距離を詰めると旋斧を振りかざし、首を繰り裂く。ゴブリンメイジの頭は地面に転がり込むと、その様子を見ていた他の魔物達は顔色を一変させる。
ゴブリンメイジが殺された瞬間にホブゴブリン達は顔を見合わせ、ゴブリン達も忙しなく首を左右に振る。一方でファングたちは唐突に黙り込み、やがて背中に乗せていたゴブリンを振り落とす。
「ガアアッ!!」
「ギギィッ!?」
「グギィッ……!!」
「……何だ?」
ナイは唐突に周囲の魔物達が騒ぎ出した事に戸惑い、勝手に魔物達は同士討ちを開始した。ファングは今までに自分達をこき使ったゴブリン達に襲い掛かり、一方でホブゴブリン同士はお互いに掴み合い、殴り合いを始める。
――ギィイイイイッ!!
街中に魔物達の怒声や悲鳴が響き渡り、最早ナイ達の事など魔物達は眼中もなく、仲間割れを引き起こす。この事からナイは自分が倒したゴブリンメイジが魔物の統率者ではないかと気づく。
マホの話によれば魔物の大群を指揮する存在がいるはずであり、その大群の統率者を倒せば魔物達は勝手に仲間割れを起こして自滅する。それが今回のマホの作戦だった。
作戦の予定ではマホが統率者を倒す予定だったが、偶然にもナイが倒したゴブリンメイジがどうやら統率者だったらしく、魔物達は仲間割れを起こす。そして遂に建物の屋上にて待機していたエルマが駆けつけ、その後ろにはガロを避難させたビャクも戻ってきた。
「ゴンザレス、ナイ君!!早く下がって!!」
「ウォンッ!!」
「エルマさん?それにビャクも……」
「さあ、今のうちに早く!!師匠がもうすぐ広域魔法を発動します!!その前に早く避難しないと……!!」
「広域……魔法?」
エルマの言葉を聞いたナイは広域魔法という今までに聞いた事もない単語に戸惑うが、すぐにエルマとビャクと共にナイはゴンザレスを抱えてその場を移動する。
「ぐっ……すまない」
「クゥ〜ンッ……」
「ほら、頑張って……早く離れないと巻き込まれますよ!!」
「あの……広域魔法って、なんですか?」
「説明は後で!!今は早く離れないと!!」
3人がかりでナイ達はゴンザレスの巨体を運び込み、魔物達から距離を取る。逃げる際中も魔物達は追いかけてくる事もなく、互いに争い合う。
統率者を失った魔物の群れは新たな統率者を決めるため、残された魔物達は争うのはよくある事だった。しかし、統率者が決まるまでは魔物達は同士討ちを止まらない。その間にも建物の上で待機していたマホは魔法の準備を行う。
(まさか統率者を倒すとは……中々やるではないか、若い頃のドルトンを思い出すわい)
屋根の上からマホはナイ達を見下ろし、彼等が安全な場所まで下がるのを確認すると、彼女は杖を掲げて意識を集中させる。これから発動させる魔法によって街にも被害が出るだろうが、それでも魔物を駆逐するためにマホは発動を行う。
『荒れ狂う竜巻よ、我が敵を薙ぎ払え……トルネード!!』
マホが杖を振り下ろした瞬間、彼女の杖に取り付けた水晶玉が光を放ち、やがて地上に存在する魔物の大群に向けて周囲の風が集まっていく。周囲から押し寄せる風圧に魔物達が気づいた時には既に彼等は「竜巻」に取り囲まれていた。
魔法の力で生み出された竜巻は魔物の群れを飲み込むと、徐々に範囲が狭まり、竜巻の中に閉じ込められていた魔物達は吹き飛ばされていく。武装したホブゴブリンも、ゴブリンも、ファングも竜巻の力で遥か上空まで吹き飛ばされ、彼等は悲鳴を上げる暇もなく天の彼方へと吹き飛んだ――
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