第108話 邪魔だ!!
――屋敷を抜け出したナイは街道を駆け抜け、街の北側に向けて移動を行う。この時に街を徘徊していたゴブリンやホブゴブリンと何度か遭遇するが、それらを蹴散らしてナイは街の北側へと向かう。
「邪魔だ、退けっ!!」
『ギィイイイッ!?』
『グギィイッ!?』
次々と現れるゴブリンやホブゴブリンをナイは旋斧で蹴散らし、邪魔者を排除しながら街の北側に向けて移動する。だが、いくら倒しても新手が現れて切りがなく、街の広場にてナイは取り囲まれてしまう。
「ギィイイッ!!」
「ギィアッ!!」
「くそ、しつこいな……このっ!!」
ナイは旋斧を振り回し、この時に円を描くように振り抜く。ナイが独自で編み出した「円斧」を利用し、次々と敵を倒す。磨き上げられた旋斧は以前よりも切れ味が鋭く、使いやすくなっていた。
ゴブリンの群れを蹴散らしながらナイは進んでいると、この時に甲冑を身に付けたホブゴブリンが出現し、ナイに向けて戦斧を振りかざす。
「グギィイッ!!」
『ギィアアアッ!?』
「うわっ!?」
戦斧を手にしたホブゴブリンは他の仲間を巻き込む事も構わずに振り回し、この時に数匹のゴブリンが戦斧によって吹き飛ばされる。その光景を見たナイはゴマンから借り受けた盾を構え、攻撃を弾く。
「このっ!!」
「グギャッ!?」
戦斧の刃が盾に触れた瞬間にナイは腕を振り払うと、盾から衝撃波が発生してホブゴブリンが手にしていた戦斧が上空へ弾かれる。
武器を失ったホブゴブリンは呆気に取られるが、そのホブゴブリンに対してナイは旋斧を振りかざし、剛力を一瞬だけ発動させて放つ。
「はあああっ!!」
「アガァアアアッ!?」
『ギギィッ!?』
甲冑を纏っていたにも関わらず、ホブゴブリンの左肩から旋斧の刃がめり込み、そのまま切り裂かれる。鋼鉄製の甲冑を纏っていようと、ナイは半年前の時点で鋼鉄の塊と表現する程に硬い赤毛熊の肉体を切り裂いた事もある。
一撃で重武装したホブゴブリンをナイは打ち破ると、それを見ていた他のゴブリン達は恐怖を浮かべ、更にナイは上空から落ちてきた戦斧を左手で掴み取る。右手に旋斧を握りしめ、左手で戦斧を掴んだナイは自分を取り囲むゴブリンの群れを蹴散らす。
「退けぇっ!!」
『ギィアアアアッ!?』
広場に集まったゴブリンを蹴散らしながらナイは先へ進み、包囲網を突破する。広間を抜け出して大通りに辿り着いたナイは戦斧を放り投げ、真っ直ぐに駆け抜けようとした。
(確か、ここを真っ直ぐに行けば目的地のはず……)
街の地図は事前に頭に叩き込んでおり、一度も訪れた事はないが大通りを真っ直ぐに行けば冒険者ギルドに辿り着ける事だけは知っていた。ナイはゴブリンに追いつかれる前に駆け出そうとした時、ここで彼の足元に矢が突き刺さった。
「うわっ!?」
「グギィッ!!」
「ギギィッ!!」
何処からか飛んできた矢に危うくナイは足を射抜かれそうになったが、どうにか避ける事に成功する。矢が放たれた方向に視線を向けると、そこには建物の屋根の上で弓矢を構えたホブゴブリンと、ボーガンを手にしたゴブリンが存在した。
(弓とボーガン!?そんな物まで使いこなせるのか……まずい、ここからだと狙い撃ちされる!!)
屋根の上にいてはナイも攻撃手段はなく、盾では防ぎきれないと思ったナイは狙い撃ちされる前に駆け出す。だが、既にナイの周囲の建物の上にはゴブリンとホブゴブリンが待ち構えており、彼に向けて矢を放つ。
「グギィッ!!」
『ギィイイッ!!』
隊長格と思われるホブゴブリンが号令を上げると、ゴブリン達はボーガンを発射させてナイを狙う。大量の矢がナイの元へ放たれ、それに対してナイは盾で身を防ぎながら駆け抜けるが、全ての矢を防ぐ事は出来ない。
身体のあちこちに矢が掠り、このままでは駄目かと思われた時、ここでナイは「跳躍」の技能を発動させて前方へ向けて飛び込む。
(もっと早く……!!)
跳躍の技能は何も高く跳ぶ事だけが全てではなく、高度よりも飛距離を伸ばす事を意識してナイは足に力を込める。そして彼は10メートル近くも離れた場所に目掛けて一気に飛び込み、矢の雨を掻い潜る。
「グギィッ!?」
「ギギィッ!?」
「ギィアッ!?」
ホブゴブリンとゴブリン達は急に加速したナイに驚愕の声を上げ、慌てて矢を撃とうとするが、彼等が狙おうとした時には既にナイは矢の射程距離外まで移動していた。
(やった、上手く行った……跳躍はこんな風にも使えるのか)
低空跳躍を繰り返す事でナイは高速移動を行える事を初めて知り、この方法は平地だからこそ出来る手段だった。今までナイは高低差がある山や、障害物が多い森の中ばかりで戦ってきたので跳躍を生かす機会はあまりなかったが、ここへきて新しい移動法を編み出す。
跳躍を利用した移動法でナイは一気に加速し、一気に目的地まで向かおうとした。しかし、何度目かの低空跳躍の際にナイは足元に力が上手く入らず、転んでしまう。
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