第173話 セシルを止める
「ねえねえ、まだ何かあるの?」
リニさんの目が輝いています。
「小さいのも、大きい果物がある。野菜もある。」
「もっと出して!」
「どうぞ。」
セシルはダンジョンで収穫した果物を、数は少ないけれど沢山の種類を出しているようです。
まあ全種類相当数収穫しているはずなんだ。
セシルとロースがこれでもかという勢いで収穫していたはず。
それに、いつでも収穫をしに行けるし。
「わ・・・・これは・・・・さっきのとは違う美味しさがあるわ!これが下層の味・・・・凄いわあ。」
確かに甘いし、濃厚?という味がする果物があったけれど、そこまで凄かったかな?
しかしデルクはまた盛大な勘違いをしていた。
下層で収穫した果物を日常的に食べていたので、下層の味が当たり前と感じてしまったのだ。
「これって数はあるの?」
「分からない。数えた事がない。」
セシルが全部出そうとしているので、僕は慌てて止めに入りました。
「セシル駄目だ!いけない!」
セシルは手を止めてくれました。
「何で止めるのよ!」
あ、リニさんが怒った。
「リニさん、別に出し惜しみしてるんじゃないんです。数が多すぎて、この場に全部出すととんでもない事になるんですよ。」
「え?何それどういう事?」
「僕達がダンジョンに籠ってどれぐらいの期間を過ごしたか分かりますか?」
「えーと、確か・・・・約3年かしら?」
「ええ、つまりは3年色々な食べ物を収穫したり、ドロップアイテムを得たりしてるんです。」
「それってつまり?」
「果物だけでもこの部屋に収まりませんよ?」
しばらくの沈黙。
「そんな訳ないだろ!」
ヴィーベさんは納得していないようです。
「・・・・馬鹿ヴィーベ!今デルクが何を考えているのかわからないの?」
「へ?なんだそれ?」
「つまり・・・・きっとヴィーベ、あんただけ別室でデルクの持ち帰ったアイテムを確認する事になるわよ。」
「お?いいのか?任せろよ!」
僕は無言で収納かばんを渡し、その場を後にします。
そうそう、リニさんが別の部屋を用意してくれました。
そこで・・・・何故か商人ギルドの女性がかわるがわる現われ、果物を食べていきました。
そして更に何故か副ギルドマスターも混ざっています。
「デルク殿、こんないいのがあるなんて、何で言ってくれないんだ!これでも私は女なんだ!女は甘いものに目がないんだよ!!!」
ギルマスの仕打ちを上書きするかの如く、必死に果物を食べています。
「そんなにがっつかなくでも。まだあるんですから。」
そう、数ヶ月にわたり果物を収穫しているので、そんじょそこらの使用量では在庫はなくなりません。
勿論他の食材もです。
そして賑やかな別室とは違い、さっきまでいた部屋ではヴィーベさんが叫んでいました。
暫くしてその叫びもやみ・・・・
「リニ、デルクが虐める・・・・」
部屋の入り口には憔悴しきったヴィーベさんの姿がありました。
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