第145話 Side セシル その3
教母様が私に用意して下さったのは、白いワンピース。
・・・・無理だろう。
こんなのを着て街中へ行けと?
「すれ違った男性が皆振り向くわよ。私が保証いたします。」
そう言われてもこれは・・・・恥ずかしすぎる。
肌の露出は抑えられているが、ロングスカートに長袖だからいいのだが、恥ずかしい・・・・あまりにも恥ずかしい。
凹凸のないこの身体には似合わなさすぎる。
そして白いつばの大きな帽子。
そして無理やり着させられたが、やはり・・・・似合わない。
「まあ!思っていた以上に似合っているわ!やはり抜群のスタイルと、そしてそのお顔!」
教母様の目は3年の間に曇ってしまわれたようだ。
まあいい・・・・当たって砕けてこよう。
きっとあまりもの酷さにデルクは私と会うのをためらうだろう。
そしてこの時になって私は気が付いた。
待ち合わせの日と場所は聞いていたが、時間は?
しまった!朝なのか昼なのか、夕方なのか・・・・こうなれば朝から待ち合わせ場所で待つしかない!
私は教母様に本日待ち合わせがある旨を伝え、慌てて飛び出した・・・・さらに重大な事を忘れていたのだがこの時は考えてもみなかった。
・・・・
・・・
・・
・
この姿なので、修道院を出てからはむやみと走らず、歩いて移動する。
もう既にデルクが待っているのではないか?もしそうであれば申し訳ない。そう思いつつひょっとして私はデルクが時間を伝えてくれていたのを聞きそびれてしまったのではないか?そんな事を思いながら進んでいたが、あっという間に目的地の前へ到着してしまった。
まだ誰もいない感じだ。ちょっと安心。
ギルドの建物は以前と変わっていない。
そしてその近くには腰をかける椅子がいくつかあり、その1つに私は座る。
先程道行く人々が私をじろじろと見ているのに気が付いたのだが、やはり似合っていないのだろう。
しかしこの姿で出てきてしまった以上、デルクとの待ち合わせはこのまま行うしかない。
私はできる限り背筋を伸ばし、デルクを待つ。
待つ。
ひたすら待つ・・・・
デルクが来ない。やはり昼からだった?
う・・・・少し離れた場所に誰かが座ったのがわかる。だがじろじろ見るのは失礼だから見ない。
デルクなら声をかけてくるだろうからデルクではないはず。
私はじっと待つが・・・・誰も声を掛けてくれない。
昼を過ぎてもデルクは来ない。
そして・・・・夕方近くになってしまった。
もう今日は来ないのだろうか?もしや何かあったのでは?
それにもう我慢の限界だ。
これ以上我慢はできない。
そろそろ立ち上がろうと思ったが、どうやら少し離れた場所で座っていた誰かが立ち上がり、ギルドに入っていったようだ。
後ろを付いて行くと怪しい人と思われる。少し待とう。だが我慢も限界なのだ。あまり待てん。
駄目だ限界が近い。
この際仕方がない。ギルドに伝言を頼もう。そしてトイレを借りよう・・・・これ以上我慢をしては粗相をしてしまう。
私は意を決してギルドに向かうが、先程ギルドに入っていった誰かと入れ違った。
私は我慢していてその人の顔を見なかったが、もしかしてデルク?
そう思ったがデルクなら声をかけてくれるはず。たとえ私が恐ろしく醜くい姿であってもだ。
だからやはり違うようだ。
私は受付に声をかけ、伝言を頼むべく聞いてみた。もしかしてデルクから伝言があったりしないか、と思い頼む前に何かないか確認をしておこう。
「すまない。私はセシル・ヴァウテルスと言うのだが、私宛に伝言はないだろうか?」
すると受付の女性は何か変な顔をして・・・・やはり私の顔は醜いのだろう。
「あなたがセシルさん?こう言っては何だけど貴女外にずっといたわよね?デルクさんですか、その少年もいたわよね?何で直接言葉をかけないの?まあ預かっているけれど。」
受付の女性が何を言っているのか理解できない。
「デルクと待ち合わせをしていたが会う事が叶わなかったのだ。だが伝言があるという事は、ここには来ていたのだな。」
「ねえセシルさん、貴女私をからかっているの?さっきのデルクさんと2人して受付をからかうもんじゃありません。」
何の事?
「すまないが何の事を言っているのかわからない。私は待ち合わせでずっと朝からあの場所で待っていたが、私は誰からも声をかけられなかった。」
「・・・・ねえそれ本気で言っている?さっき入り口ですれ違ったわよね?」
「いや、誰か知らない人とはすれ違ったが、デルクではないだろう。デルクなら声をかけてくれるはず。」
「・・・・何かかみ合わないわね。まあ伝言確認して。」
【セシルへ、デルクです。今日見かけなかったので何かあったのか心配です。明日のお昼にギルド前で待ってます。明日来なければ探します。】
・・・・え?もしかしてさっきすれ違ったのは本当にデルクだったのか?
顔を見ておけばよかった・・・・だが我慢も限界で周囲を確認する余裕はなかったのだ。
それに何故気が付かなかったのだ?
そして私は突然気が付いた。デルクは私をあの鎧姿でしか見ていない。
デルクは私の顔を見ていないんだった!そう、知らないのだ!
しまった!デルクは私が鎧の姿で現れると思っていたのではないか?
これは・・・・私のミスだ。
私は肩を落とし、トイレを借りてお花を摘み終え、力なく修道院に戻る。
明日はこのワンピースを着こみ、その上にあの鎧を着て待ち合わせに向かう事にしよう・・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます