第64話 塩

 さて移動をしようと思いますが、何処に向かえば安全なのか。

 周囲を確認しますがその間にも魚が囲いにぶつかってきます。


 しかし全て囲いの刃で撃退。

 というより仕留めています。

 むしろ相手が自分で死にに来ています?

 なにしろ僕とセシルは囲いの中にいるだけですから。


 ドロップアイテムは囲いの中に入ってくれるので回収できていますが、もし囲いの外へドロップしたら、回収できたかどうか。


 しかし残念ながら全て囲いの中にドロップするわけではなく、囲いから離れた場所で力尽きる魚もいる訳で、その場合はドロップアイテムの回収は諦めます。


 そして魚はどうやら右回りに回遊しているグループと、左回りに回遊しているグループがある事がわかります。

 しかもそれぞれの回遊する高さが微妙に違うので、お互いにぶつかる事なく回遊できているようです。


 そんな中進むのですが、一番近い階段を探します。


「デルクあっち!」


 セシルが先に見つけてくれました。

 ここからでは上に向かうのか、下に向かうのか分かりませんが、目に見えるのはそこだけなので、その階段を目指します。


「セシル、床を固定している魔法を解除するよ。解除したら囲いごと移動するよ。」


「ん、わかった。」


 魔法を解除し、進み始めます。


 その間にもあちこち魚がぶつかりますが、何とか耐えます。


 そしてたまに全く予期せぬ場所にぶつかってくる魚がいるので驚きます。


 どうやら周囲と同じような回遊をしない魚もいる模様。


 魚がぶつかるたびにあっちフラフラこっちフラフラ。

 何せまだフライの効果が残っているので、囲いは魚がぶつかった衝突によって必要以上に動いてしまうんです。

 だから土魔法で固定していたのですけど、今は階段と思われる場所を目指すので固定してません。


 そして時に恐ろしく大きな魚が突進してくるので、その場合は流石に囲いが耐えらるかどうかわからないので囲いを固定し、魚の進路上に土魔術で壁を作り、魚の突撃速度を落として何とか凌いでいます。

 そして土の壁が破壊され、その大きな魚が囲いにぶつかってきますが、その頃には速度は落ち、何とか凌ぎきります。


 そして仕留める事に成功すると、時に見慣れぬアイテムをドロップします。


 今回はひれ?何故にひれがドロップするのか分かりませんが、それに歯でしょうか。歯もドロップします。


 それらを回収できる時は回収しますが、無理そうなら諦めます。


 更に前進すると、時々床に異変が見受けられます。

「セシル、あの床ってなんだと思う?」


 僕は少し窪んだ床を発見し、セシルに問いかけます。

 何か窪みから粉っぽいのが出ているように見えますが、もう少し近づかないとよくわかりません。

「何かしょっぱい。」


 !?


 そう言われると何だかしょっぱいです。

「セシル!あの床の近くへ移動するよ!」

 これはもしや塩が窪みから噴き出しているのでは!と思い、何とか移動を試みます。


 この際です、魔力の残りはまだ余裕がありそうですので、土魔法で囲いの周囲に土壁を展開し、その窪みまで魚に邪魔されないように道を作ります。


 本当はもっと魔力を温存したいのですが、ここは魔力を惜しむ時ではないと判断。

 一気に進みます。

 そして辿り着いたその場所。

「塩だ・・・・」


 窪みから何故か塩が噴き出ていました。

 しかも粉で。海水みたいな状態だと、後で塩だけにするのは面倒だったので運がよかったというべきでしょうか。


 僕は急いで囲いから出て、かばんに塩を詰めていきます。


 セシルは周囲の警戒。

 もし魚が壁を突破しても、数が少ない場合はセシルが何とかしてくれるはず。


 時間にしては短かったと思いますが、これで暫く塩の心配はないと思われるほど大量に確保。

 暫くと言うか、数年は問題ない量かな。

「セシル、やったよ!囲いに戻って安全な場所まで一気に行くよ!」


「わかった。」


 囲いに戻り、壁を逆に辿ります。

 この囲いはどの方向へも進めるので、今は反対方向へ向かっています。


 そして僕が壁を作った場所まで戻り、その先には安全地帯である階段が目視できているので、そのまま魔力を総動員して土魔法で壁を作り、一気に進みます。


 そして辿り着いた安全地帯。


 囲いを回収し、階段を下ります。

 残念ながら階段は下に向かう方でしたが、そのまま下ります。

 恐らく次の階層には魔物が現れませんので、万が一魚が階段まで突っ込んでくる事を考えると、ここも安全とは言い切れませんので、移動します。


 そして階段を下りきって周囲に魔物が居ない事を確認。

 安心してしまったのか緊張が解けたのか、僕は魔力の使い過ぎによる疲労からその場につい倒れてしまいます。


「デルクしっかり!」


 セシルが何とか受け止めてくれますが、小さな体の彼女に僕を支え切れるはずもなく、そのまま2人して床に倒れます。それにセシルも疲れ切っていたのでしょう。


 そのまま2人して座り込んでしまいます。


 少しだけ寝よう。

 そう思い収納カバンからマットを出し、2人してマットに寝ます。


 今後どうしよう?と思いましたが今は休む事を考えよう。

 そう思ったまではいいのですが、あっという間に寝てしまったようです。

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