第32話 5層のボス部屋

 いくらダンジョンだから油断はできないと言っても、4層のゴブリンが弱すぎて拍子抜けです。

「デルク、もういいだろう?さっさとボス部屋攻略しちゃって、6層へ行くぞ?」

 ヴィーべさんせっかちですよ。


「何慌ててんのよ?もう少しゆっくりとダンジョンに慣れたほうがいいわよ。そう思うでしょ?デルク。」

 僕もそう思います、リニさん。


「いいよな毛糸のパンツ穿いてるやつは、尻暖かくて。」

 まだ言っているんですか?

「大穴に落ちてしまえ!」

 リニさん見事なキック・・・・毛糸のパンツが丸見えですけど・・・・そして、

「落ちたら死ぬ!やめてくれええ!!!!」


 大穴の近くでは大変危険な行為なので、皆さんやめましょう。

「ふん!さ、デルク行きましょ?」


 大穴に落ちかかっているヴィーべさんを無視して、僕とリニさんはボス部屋に向かいます。

「おーい助けて・・・・」


 もう少しリニさんに優しくした方がいいと思うんです。

 そして5層。

 気が付けばヴィーべさんが先に来ています。

 え?僕とリニさん、たぶん最短距離でボス部屋の扉へ来たはずですよ?

 抜かされた覚えはありませんし、あそこから走ってダッシュしても、よほど隠ぺいのスキルを使い倒していない限り、先回りは難しいはずです。


 そう思っていると、

「ふふん!俺様がどうやって先回りしたのか、わからないのだろう!」

「え・・・・ええ、まさにその通りです。全く気が付きませんでした・・・・どうやって先回りしたのですか?まさかテレポート?」

「へ?いやいやそんな高度な魔法、まだ俺っちには使いこなせねえ・・・・ってそれはどうでもいい!そうか・・・・デルクの頭脳をもってしてもわからなかったか・・・・」

 分からないものはわかりませんよ?

「デルク、このあん▽ん■んの言う事、真剣に聞く必要ないわよ?」

「アン●パ●マ●?」

「違うわよ!アン●パ●マ●に失礼よ!あ◇ぽ◇た◇よ!」

「ひでえ・・・・想い人にそりゃあないぜ?」

「何が想い人よ!あ、デルク・・・・ズルしてんのよ、ズル。」

「え?リニさんズルって何ですか?」

「このダンジョンだけのズルだけどね・・・・ほら、あそこ・・・・あの大穴から下ってきたのよ。」

 あ・・・・なるほど・・・・どう見てもこの大穴、下までズドーンとあいていますから・・・・そういった事もできるんだ・・・・

 じゃあ万が一落っこちても・・・・何とか何処かの階層に着地できれば助かる?


「まあ魔法使うか、道具使わねえと無理だがな!」

「ヴィーベ、こう見えて浮遊の魔法と、軽量化の魔法が使えるのよ。あ、フライ・・・・飛行の魔法も使えるんだっけ?」

「まだレベルは低いからな・・・・5層ぐらいまでなら難なく行けるぜ!」


 あ・・・・僕もそういった魔法は少しかじってます・・・・

 言わないほうがいいのかな?


 僕の場合、広く浅く魔法を覚えています。

 例えばファイヤーボール。

 攻撃手段というより、けん制するために使う感じです。

 威力がないから。もっと極めれば有効打になりえますが・・・・それに火が必要な時に着火剤として使えますし。

 それに水魔法。

 まあ、飲み水確保?

 あとは土魔法もちょっとした壁ができますがその程度。あ、地面にちょっとした穴ぐらいならあけられますよ?

 何事も応用ですから。

 ですが・・・・この会話が後に重要な関わりを持つ事になるとは思ってもみませんでした。


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