第16話 国家権力と教会の勢力
明け方トゥーニスは自宅の書斎に設置してある、とある魔道具を操作していた。
暫くすると、魔道具から声がする。
「トゥーニスか、こんな明け方から余を呼び出すとはどうしたのだ?」
「すまないな親父、いよいよ教会の遊び人狩りが始まったぞ。」
「何?そう言われるともうそんな時期か・・・・相変わらず教会は遊び人を追い回しておるのか、口惜しいのう・・・・」
「今日も10名程保護、若しくは救出したがどうにかならないのか?」
「すまぬな・・・・国王と言えども、教会には手が出せぬのだよ。」
「どうしてこうなったので?」
「仕方あるまい・・・・教会は大陸中に勢力を伸ばしておる。わが国だけではないからな。」
今、魔道具で会話をしているのはデルクが訊ねた先でデルクを留めおいているトゥーニスと、その父親・つまりは国王その人。
「ですが私にも限界がありますよ?きちんと国に遊び人の出現を報告している司祭は問題ありませんが、隠している司祭もかなりおりますからな。」
「ああ・・・・自身の昇進に響くと思っておるのだろう。司祭なら誰でも大司祭になりたいものだしな。そしていずれは枢機卿に・・・・と。」
この大陸にある教会の権力は公にはなっていないが、国を上回るという認識がなされており、特に影響が大きいのが、子供はおよそ10歳になると受ける職業選定を取り仕切っている事であり、そして管理している事である。
その後子供が15歳前後になるまでの影響は大きく、更に正式に職業へついてからも絶大な影響を持っている。
そんな中、何故か遊び人については執拗に管理をしており、中には遊び人が現れると自身の出世に影響があるのを懸念し、遊び人が現れると自身の街からひそかに闇へと葬り去っていると言うもっぱらの噂・・・・
そして今回も冒険者を雇い、若しくは教会所属の冒険者や人には言えない、公になっていない組織に頼んだり・・・・
トゥーニスは貴族の立場から、何とか遊び人になったばかりの子供を探し当て、保護しようと努めていたが、それも限界がある。
なので父親である国王に頼むのだが、
「その、すまぬな。教会に対し、国は無力なのだよ。」
この後何を話したのか、暫く経ってから起動している魔道具を止めるトゥーニス。
さてどうするか。
この街の事なら大抵何とかなるが、それ以外は現地の同志に託すしかない。
ただ、元が遊び人の彼・彼女達を動かすのは容易ではない。
一歩間違えれば教会を敵に回し、自身の命も危なくなりかねないからだ。
ここは地道に行くしかないか。
それに今回は、過去になかった出来事・・・・つまり自分が遊び人になった場合を想定し、前もって接触をしてきていたデルクという少年の事だ。
彼は運良く?3つの職業を引き、その全てが遊び人という今まで存在していなかった人物だ。
ひょっとしたら彼が教会の考えを改めさせる事ができるのではないか・・・・
ついそう思ってしまうのだった。
そして彼には愛弟子の中でも最も優秀な2人、ヴィーベとリニに任す事にした。
本来なら彼自身の手でじっくり育てたいが、他の遊び人を救出すべく動く必要があるためそれも適わず。
【無事に15歳を迎え、レベルが上がってくれればよいが・・・・】
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