第15話 運が良くてもどうにもならない事はある
デルクはこの後、2人の兄弟子にこの建物を案内してもらい、食事と風呂を・・・・この建物にはお湯を張って入浴できる設備があった!
やっぱり貴族なんだなあと。
普通の人は、せいぜい週1度か、月に2、3回しか入浴できません。
公衆浴場もそれなりに値段が高く、各家庭に風呂なんて以ての外。
精々湯を沸かしタライに入れ、体を拭くぐらい。
夏ならば川の一部を囲い、魔物対策をしてある場所で川に入って体を洗ったりできるけれど・・・・今はもうすぐ冬。
そんな事をしたら凍えてしまいます。
しかもここには男女別の風呂があって、デルクは生まれて初めて大きな湯船に一人で入るという贅沢を味わった・・・・
今日は兎に角休めと言われ、素直にベッドに・・・・なんとここには立派なベッドがあった!
普通の家にはベッドなんかなく、床に藁か布団をひいて寝るのが当たり前、精々すのこを作ってその上に布団?をひくぐらい。
こんな贅沢いいのだろうかと思いながら・・・・気が付けば驚く事に朝になっていた。
しかしデルクは知らなかった。
デルクが寝ている間に、今日の選定で遊び人を選んでしまった人々・・・・この街には本日1000人以上が選定を受けた。そのうち20人程が遊び人になった。
あくまでこの街だけで。
この国全体ではおよそ100名が遊び人に選ばれ、一晩で約半数が姿を消していた。
この街でも10名程の若者が行方不明になっていたのだった。
ある遊び人に選ばれた男の子。
自分が選ばれるとは夢にも思っておらず、家に帰ると追い出され、どうしたらいいか途方に暮れていたところ・・・・誰かに声をかけられ、気が付けば切りつけられていた。
必死に逃げるも・・・・追いつかれ・・・・
ある教会では、女の子が司祭様に呼び止められ、このまま外に出るのは危険だから、皆が去るまでここに留まるように言われ・・・・
奥の部屋に案内され、そこで待っていると、
優しい司祭様が、飲み物と食事を持ってきて下さり・・・・夜までには戻るからと言い残し去っていき・・・・
感謝の気持ちで少しずつ飲んだり食べたりしていたが・・・・何だか眠くなり、少しだけと思い・・・・横になってしまう。
そして暫くして・・・・
「待たせたね・・・・あれ?寝ているのかい?」
そう言って司祭様がその女の子を揺するが・・・・女の子は熟睡してしまった。
「仕方ありませんね・・・・まだ10歳の子供だが・・・・将来それなりになりそうですからね・・・・それに行方不明になるなんてよくありますから・・・・」
またある者は、遊び人と言うのがどういった扱いを受けるか知っていて・・・・自身が選ばれた瞬間から、身の危険を感じ・・・・秘かに闇に溶け込んだ。
翌日、こうしてこの街では、10名程の新たな遊び人が残った。
10名とも既に身の危険を感じていたが、どうすべきか判断が付かないのだった・・・・
因みに遊び人に選ばれた全員は、知力、精神力共に高く、最も突出しているのはその運の高さだったのだが・・・・
彼・彼女達はまだ10歳、若しくはその前後。
そのステータスを生かす事も出来ず・・・・
特に知力が高いと言ってもまだ10歳。圧倒的に経験不足。
それ故遊び人は日に日に街から消えていくのだった。
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