第21話

「のうまくさんまんだあ ばあざらだん せんだあ…。何だっけ。」


アルバイトの休憩中も教本を開いて、真言と般若心経の練習。真言は短いからなんとか言えそうだけど、般若心経は本当に長くて覚えるのに大分苦労した。


いつも通り仕事帰りのあみちゃんがコンビニにやってきて休憩中も一緒に過ごした。岩田さんに事情を説明するとすんなり受け入れてくれる以上にあみちゃんを匿ってくれることに協力をしてくれる。


俺が夜勤の日は朝の4時から5時ぐらいまで居させてもらうことが出来た。相変わらずベムとよしえさんは着いてくるし、監視されているらしい。あみちゃんの調子も良くないように見える。いつも頭が痛そうだ。


「あみちゃん、体調大丈夫??」


「うーん、頭が痛いけど痛いこと我慢するのは慣れてるから。それよりさ、私調べたんだけど関東大三不動っていうのがあるらしくて、1番はこの前の新勝寺。次が伊勢原の大山寺っていうところなんだって。さめちゃん力貰えるかもしれないから行ってみようよ。」


「そうだね、次2連休あるからその時行ってみよう。」


そろそろ休憩時間終わりだ。あみちゃんを事務所に置いてレジへ急いだ。


「岩田さん、休憩です。」


「もうそんな時間か。じゃ、あとよろしく頼むね。でさ、あの黒い人ずっと入り口のところに立ってるんだよ。さめちゃん達は大丈夫なの?」


「あ、はい…。今のところは。」


「俺も協力できることはするから、頑張ってね。」


そして次の休み、俺たちは大山寺へ向かう。お互い用事が有り出発が午後になってしまった。JR伊勢原駅からバスに乗り込む。大山寺は大山という山の中腹にあるらしい。


バスを降りさっそく向かうがとーっても長い階段の道に仲見世通りがある作りになっている。本当に山だこりゃ。お店を見つつ先に進む。気づけばもう夕方だ、早く行かなきゃお寺が閉まってしまう。


「さめちゃん、ちょっと待って。」


「…ゼェゼェ、、ん、どうしたの??」


「また声が聞こえる。良く来たって言ってくれてる。でも今来ても帰れなくなるからまた明日来いだって。」


よくよく調べてみるとこの調子で進んでも、大山寺まで辿り着くにはこの後ケーブルカーに乗らなくてはならないらしい。でも最終便が17時で、お寺に辿り着いたとしても帰れなくなる。せっかくここまで来たのに!!帰らねばならぬのか…。


お互い明日も休みでいちいち帰るのが面倒だ。今日は近場のホテルに宿泊することに決めた。


伊勢原駅から何駅かで来られる本厚木。始めてくる町。とても都会で賑わっている。俺たちはこの町にあるホテルを予約した。なんか本当に遊びに来たみたいな気分だ。ご飯も食べておやつもいっぱい買っちゃおう。


「ホテルでさ、何か映画とか見ようよ!あ、あみちゃんが話してくれてたあの怖いやつ。見てみたい。」


「いいね!新しいのまだ見てないから私も見たい!」


前に話してくれた、あみちゃんが家族ぐるみでハマって見ている心霊映像を集めたDVD。マジであったの!?恐怖のビデオ。最新話をレンタルショップで借り、俺たちはホテルに向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る