第20話

そして俺らは帰路に着いた。車を運転しているが疲れと眠気でどうしようもない。どうにかコンビニで購入していたスルメイカを噛むことで眠気をどうにかごまかす。


「明日からどうしよう。不動明王さんが言っていたことを守れば、解決する日が来るってことかな…。」


「…。」


「あみちゃん?」


「…もう終わりだ。」


「ん?どうしたのあみちゃん?」


「お前らはもう終わり。」


その時一瞬で悟った。目を瞑りながら喋っているが、これはあみちゃんじゃない。怖い。どうしよう。


康平は運転しながらとっさにあみの手を握りろうとしながら、恐れつつも話しかける。


「何でこんなことするんだよ!俺らは絶対に負けないし、諦めない!」


あみは康平の手に触れることを極端に嫌がって、無表情でいつつも右手だけ大暴れさせている。康平はあみの暴れている手を運転しながら左手でやっと掴む。その手をあみは腕を力いっぱい上下に動かし振りほどこうとする。その攻防が1分ぐらい続くと突然あみの体の力が一気に抜け、ゆっくりと目を覚ました。


「あみちゃん!あみちゃん大丈夫?どうしたの!?」


あみはとても疲弊し、もうろうとしている。


「ごめん、寝てたのかどうなのか。記憶がない。」


康平は車中で起こった事件をあみに説明した。

お化けは人の体に入って体を操ることが出来るということになる。


「そんなことあったの…本当にごめん…!っていうか熱っ!」


握り続けている康平の手から、まるでストーブに手を近づけているような熱を感じる。


あみちゃんの説明だと、お化けは人の体に入ることが出来るらしい。そのまま入られた人の思考を操ることが出来る。入られた人はそのことに気づかない。霊自体の力の強さや、入られた人の影響のされやすさにより、簡単に操ることが出来る人や、出来ない人もいる。


あみちゃんの場合見えたりする力が強い分、入られやすいし操られやすいってことになるのか。


レンタカーを返却しあみちゃんを家に送り届けるのがまた遅くなってしまった。


「そういえば、ベムとよしえさんどうしてるの?」


「あぁ、車降りてからずっと着いて来てるよ。でも新勝寺に行く前と比べるとかなり距離が遠い。」


「不動明王さんの力のお陰だね!このまま力を強く出来ればどんどん距離を放すことが出来るんじゃないかな。他の不動明王のお寺も行ってみようよ。何か力くれるかも。」


「それ良い考えかも!」


そして俺は少し思いついたことがあった。普通に歩いている振りをして・・全力で後ろにダッシュ!!


-----

「どうしてあいつが不動明王の力を宿すことが出来る…面倒だ。とにかくあの小娘に力を入れ続け、自分から来させるしかないか。」


「私のあの人を独り占めにするなんて許せない。祝詞を唱え続けましょう。」


よしえは歩きながら手を合わせ祝詞を唱え始めようとした瞬間、猛ダッシュしてきた康平の力に押され、後方10mほど吹き飛ばされる。


ベムはすかさず踏ん張るが同じように吹き飛ばされてしまった。


-----


「あみちゃん!あいつらどうなった!?」


「うわっ、二人とも吹っ飛んで行った…。」


よし、思った通りだ。この力が強くしていくことが出来れば、あいつらとの距離をどんどん遠くしてもうまったく近づけさせないようにしちゃえばいいんじゃ。


それから俺らはまた合流し続ける日々が続いて行く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る