第10話

「明日また連絡するから。あの時また始まった頭痛はやっぱりおかしいよ。もしかしたらまだ追って来てるかもしれない。」


「今日は本当にありがとう。前からあそこのイルミネーション行ってみたかったんだ。私も何かあったらすぐ連絡するから。」


何もなければいいけど。疲れた…あみちゃん、大丈夫かな。


康平が運転する車が見えなくなることを確認し、玄関に背を向けあみが話始める。


「中までは絶対に入ってこないで。」


そこには平和教の大柄黒スーツと、首からペンダントを掛けたおばさんが立っていた。


「来てほしいんでしょ?さめちゃんと家族にもし何かしたら行ってやらないし、絶対に許さないから。」


「威勢がいいな。お前は絶対来ることになる。言っただろう?力は入れてあると。」


続いている頭痛が一層痛み出し、今にも吐きそうな気分に襲われる。しかし態度には絶対に出さない。


「じゃ、おやすみ!」


開けた扉を勢いよく閉めながら言い放った。頭痛が酷すぎて立っていられない、すぐにベッドに倒れこむ。


「どうしよう…怖がらせたくないから家族には絶対に言えない。怖い、怖いよ…さめちゃん…。そうだ、あのおばあちゃん助けなくちゃ。」


あみの体から半透明のもう一人のあみがふわりと抜け出し、そのまま天井と屋根を突き抜け10mほど浮いたと思うと、目では追えないほどの速さで飛んで行った。その姿をあみの部屋のベランダから平和教の二人が覗いていた。

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家に戻ると、かずちゃんと絢香がテレビを見ながら盛り上がっている。この時間までいるってことは今日はかずちゃん泊りかな。


「康平、お帰り。遅かったじゃん。」


「ただいまー、本当偉い目にあったよ。」


今日起こったことを二人に説明してみた。


「大丈夫なのその人。」


「うーん、どうだろう。明日また連絡するけど。」


「そうじゃなくってさ、お化けが見えるとか。普通言わなくない?騙されてるんじゃないの?」


「いやぁ、そんな人じゃないと思うけど…。」


「しかも子供いるんでしょ?子供置いて夜まで出かけるなんてありえないし。気を付けたほうがいいよ。」


やっぱりそうなのかな。でもはた目から見たらそう思うのは普通か。こうやってズバズバ言ってもらわないと気づけないんだよね俺って。この二人はしっかりしているし、常識人って感じだし。ちゃんと周りの意見も取り入れていかないとだよね。


「仕事はどんな調子なのよ。 なんか良いの見つかりそう?」


「んー、まぁぼちぼちかな。…正直まだ探してないんだけどね。」


「まだ30っしょ?まだ何とかなると思うし、やっぱり自分の好きなこと見つけたいよね。」


かずちゃんはいつもこうやって元気づけてくれるというか。なんというか。頑張らなくちゃな。


「ありがとう、疲れたから今日はもう寝るわ。」

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