第9話

「あー、びっくりした。本当にこんなことになっちゃってごめんね。」


「いいよ、どんなところなのか私も楽しみにしてたし。」


「一息ついたら、お腹すいてきちゃった。ご飯食べ行こ。」


海沿いを戻り続け、神奈川県に入ると丁度良いファミレスを見つけた。


「このカボチャのデザートピザめっちゃ旨い!ピザ食べ放題なんて珍しいよね。いいとこ見つけたわ。」


「本当だ、美味しい。時代は変わったねぇ、デザートのピザなんて考えもしなかった。」


「どうする、この後。時間めっちゃ空いちゃったね。帰る?それともどっか行く?あ、でもお子さん大丈夫なの?」


「子供は今日母親に面倒をお願いしているから。どうしよっかな。」


あみちゃんのリクエストで、相模湖プレジャーフォレストを目指すことになった。今はクリスマスシーズン。とってもすごいイルミネーションをやっているらしい。あみちゃんはイルミネーションが大好きなんだって。俺は1回も行ったことないし、どんなもんなんだろ。ちょっと楽しみだな。


食事が終わり、車に乗り込もうとキーロック解除する。が、キーが開かない。直接鍵を開け車に乗り込むがエンジンが掛からない。もしかしてバッテリー上がってる?でもなんで。ライトを付けていないのに。


もしかして平和教が俺たちを行かせないように、何かの力でバッテリー切れにさせたとか。思い違いならいいけど、原因が全然わからない。まだ追って来てるのか。


JAFを呼びバッテリーを充電してもらう。ちゃんと保険に入っておいて良かった。気を取り直して出発しよう。


午後6時現地に到着。入口の前から沢山のイルミネーションが輝いている。そして人もいっぱい。そしてそして本当に寒い!


メインゲートを潜ると大きなクリスマスツリー。全体を沢山の電球で飾られ、本当に綺麗だ。奥の原っぱ全体もすべてイルミネーションで埋め尽くされている。意外と楽しめるかも。


やっぱり周りはカップルだらけだ。友達同士で来ても別にいいよね?あみちゃんはさっきからデジカメでじゃんじゃか写真を撮りまくっている。極寒の中を手をはぁはぁしながら、綺麗な光に一喜一憂しながら歩き続けた。


「あ、もしかしたらさっきのおばあちゃん。」


突然進行方向を指さしあみちゃんがつぶやいた。え、どこ?どこよ!?…見えない、見えるわけないか。


「小さくて、着物を着た優しそうなおばあちゃん。さめちゃんのこと笑顔でずっと見てるよ。」


-----

「こんなに綺麗なところは初めて来たわ。連れて来てくれて本当にありがとう。私が着いて来れるのは、ここまでみたいね。ひょうちゃん、絶対にあみちゃんと離れてはならないよ。」


そう言い残し、おばあちゃんはゆっくりと薄くなるように消えていった。

-----


「もうここまでしか来れないって。消えてった。…!!頭が、痛い…。」


あみは頭を抱えながらその場にしゃがみ込んだ。


「大丈夫!?すぐに帰ろう!」


「もうちょっと…まだ丘の上の方…写真撮れてない…、もう来られないかもしれないし…。」


そう言うと立ち上がりとぼとぼと歩いていく。


「行こ、上のほう多分もっと綺麗だよ。もう頭痛くなくなったし、大丈夫。」


一人で行かせるわけにはいかないし、本当に大丈夫なのかな。あのおばあちゃんが消えたとたんに頭痛を訴え始めた。もしかしたらおばあちゃんがここまで守ってくれてたのかな。


まだ終わってないと思ってしまうとまた不安が押し寄せてくる。でも折角こんなところに来られたんだから、最後まで楽しんで行こう。そのほうがあみちゃんも喜ぶよね。


俺たちは一通り散策し、帰宅の途に就いた。日をまたいだ頃あみちゃんを家まで届けることが出来た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る