黒い魔剣の来歴 ~鑑定料、相場の41倍になります~

 文献の再調査は後回しにして、再びエドガーの部屋に上がり込んだ3人。話を聞いてみるとエドガーも、件の挿絵は4ページ分しか見ていないと証言します。


 〈黒い魔剣〉の入手経緯についても質問すると、「1年ほど前、単独ソロで件のオーブ遺跡近くの浅層を探索中、落とし穴の底で目を覚ました時にみつけた」という話が聞けました。



アトランタ:今度は、ウソや隠し事をしている態度ではありませんわね。


ヘキサ:落ちたんだね、穴に。……あいまいな話だなあ。


ポポ:ポポも経験ある。気づくと迷宮の中にいて迷子(経歴表)。


GM/エドガー:「オレも罠を踏んで落ちたぞ。 酷いケガまでしてたのにな。あと〈白い方の剣〉の実物のウワサも知らん……使ってる冒険者がいたら目立つと思う」


ポポ:それで思ったんだけどねー。その魔剣、「実はもともと白かった」んじゃないかなって。魔神との戦いでこう、なんか真っ黒に染まった的な。


ヘキサ:ちゃんと洗ってるかい。


GM:煤汚れや塗装されてる風には見えないです(笑)。


アトランタ:そもそも本当に魔剣なんですの?


GM/エドガー:「ケストナーに鑑定してもらったら、魔法文明時代の強い魔剣だと言われた。特殊な効果は無いらしいが」


ヘキサ:へぇ。ためしに剣を持ってみたいんだが、できるかな。


GM:いいよ。必要筋力24(ずしっ)。


ヘキサ:くっ、勇者たるボクでも持てないとは(ぷるぷる)。


GM/エドガー:「ケストナーと知り合ったのも、この魔剣を鑑定に持ち込んだのが切っ掛けだったなぁ……」


ポポ:ねね、物は相談なんだけど。これさ、一度正式な鑑定に出してみない?


アトランタ:改めて鑑定に出す価値はあるかもしれませんわね。魔神打倒の切り札になるやも。


ポポ:……もっと言うとね。ケストナーっておじさんの鑑定結果は怪しいと思う。


アトランタ:まぁ、想定されるのはケストナー教授ですわね。


GM/エドガー:「なぜそんなことを言う! ヤツほど信頼できる男はいない。都に不慣れなオレをずいぶんと世話してくれたものだ」憤慨。


ポポ:でもエドガーくんがウソついてないなら、黒い剣のページを隠したのは誰かな?


GM/エドガー:「アランという弟子も怪しいだろう!」


ポポ:彼が隠したなら、わざわざポポたちに存在を教える必要がないもの。消去法でケストナーっておじさんしかいなくなるんだよね。


GM/エドガー:「ううむ……」


ポポ:だから他の鑑定結果が知りたいの。それでなんでもなかったら、ごめんなさいします。


ヘキサ:大した説得じゃないか、ポポ!


ポポ:頭が悪いわけではないからね! 時々、脊髄反射で動くだけ(笑)。


GM/エドガー:「……分かった。好きにしろ」鑑定先は冒険者ギルドでも魔術師ギルドでも、ご自由に。魔法文明に関しては都では学究院が一番詳しいかな。相応の鑑定料は必要でしょうけど。


アトランタ:必要な出費ですわね。


ヘキサ:一応、1540Gをこんなこともあろうかと用意している。


GM:鑑定料は……(相場どんなもんだっけ)。「鑑定人のセージ技能レベルの自乗×50G」です。10レベルNPCが上限ね。



一同:!?



アトランタ:それ、10レベルセージの鑑定は5000Gかかりますの? 高っ!


GM:えぇ、なにせ高レベルNPCへの予定ねじ込みですからね。感知の魔法を使ってもらったり、呪いのリスクがある危険物・口止め料・施設使用料、込々。


一同:「なるほど」「確かに」「流石にたけーなぁ」


★ ★ ★


 ……ここ、後から見返すと自分GM、ムチャクチャ言ってますね!


 石化・呪い解除の魔法を高レベルNPCに依頼する場合は、それなりの依頼料が必要かもしれませんが、よく考えれば鑑定師側には貴重なアイテムを買い取れるメリットがあるんだから、もっと安く請け負ってくれるはず。


 SW2.0のシティ作成本『風雲!歌声が響く街』を引っ張り出して再確認すると……なになに? 「魔術師ギルドやマギテック協会に鑑定を依頼する場合、『基準値:13程度/依頼料:120G~』が目安」?


 つまり相場の41倍……超ボッタクリ鑑定料に。ほんとゴメンね!


★ ★ ★


アトランタ:(財布を覗いて)……三人合わせて丁度4000弱ってとこですわね。


ヘキサ:足りへん……。


ポポ:くっ、ポポのレインボーリングを売ればなんとか……。


GM:フランベルジュ級冒険者なら前借りで用意できますよ。あるいは見識判定で、安く引き受けてくれそうなNPC候補を探すとか。(←※おそらくコレをアテにPCを誘導しようとしていたGM)


アトランタ:よっしゃ! ダメ元、うっかりタダで鑑定してくれる野生のスケベオヤジ・セージ17レベルとか、見つかるかもしれませんわ!


ポポ:亀仙〇みたいな?


ヘキサ:あかんかったらアトランタにジャンプしてもらいましょ。(ころころ)……(PCに戻って)ボクの達成値14が最大だね。



 ・賢人学科の研究助手

 ・アウンガルト商会の鑑定士(鑑定に1日)

 ・人工生命研究のセンドア教授(操霊&魔動機専門)


 この3つに候補を絞りました。


 ケストナーの賢人学科は問題外。依頼人であるアウンガルト商会には、魔神の影響・監視なりがある可能性を警戒し、PCたちはセンドア教授を頼ることに。



GM/エドガー:「オレも一緒にゆくぞ」 明るい時間帯だと少々目立って、他の冒険者の視線が辛いけど仕方ない。


アトランタ:どうせいつでも目立ちますわ、貴方。大きいんですもの。


ポポ:それに目立つ度合いで、ポポたちに勝てると思わない方がいい。


ヘキサ:はーっはっはっは!


GM/エドガー:「……それもそうだな」 三人の言葉に、少し笑顔を取り戻すエドガーでした。


***


GM:学究院にゆくと、そう待たされることなく面会が取りつけられます。 センドア教授は、横幅のあるムキムキのリルドラケン。高レベルのコンジャ&マギテックです。「有名冒険者がそろい踏みじゃないか。キミらの依頼なら歓迎だ!」


ポポ:うわー、エドガーくんとあわせて画面内の筋肉密度が上がる。


ヘキサ:魔剣の鑑定を頼みたいのだけど。


GM/センドア:「ワシの専門から外れるが……そこは付与魔力次第かな。少し興味もあるし無償ロハで請け負おう」1時間ほどかかります。


ヘキサ:いいよ。待ち時間の間は、ボクの冒険譚を朗読してあげよう!


ポポ:10分で完全に飽きて居眠りする(スヤァ)。


GM:研究設備とか色々使って(ころころ)達成値19で看破しました。目標値+2されてたけど地力が違う。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

〈聖ラガルドの封印剣〉 基本取引価格:58000G(非売品)

  知名度:14 形状:柄にティダンの印が刻まれた黒い大剣 カテゴリ:ソードB

  概要:魔神の力を吸収して封印する


  魔法文明時代の終焉期に、高位のティダン神官の手によって作り出された魔剣です。刀身には魔神の力を吸収して、魔剣に封じ込める呪文が刻まれています。


  ★現在、吸収能力は起動できない・発動法が不明な状態です。武器としてのデータは〈死に近いグレートソード+2〉相当として扱われます。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


アトランタ:+2魔剣! 強いですわねー!


GM/センドア:「刀身の魔法文字はワシの専門分野でもある、“魔法生物に疑似生命を吹き込む術式”に近いものが見られるな。これは逆に魂を吸い取るものらしい。『悪しき霊をいましめる者なり』……コマンドワードだろうか? 」


アトランタ:ポポの推測通り、力を吸収して黒くなったのかもしれませんわね。


ヘキサ:……。じゃあ、この内容物を出すとどうなるんだ?


ポポ:さぁ。そもそも吐き出せるの? でも、魔神との戦いで切り札になるかもしれないね!


***


アトランタ:しかし、ケストナーは鑑定結果を意図的に隠した線が濃厚ですわね。


ヘキサ:やはり彼には注意すべきだろう。


アトランタ:魔神の狙いも、この剣に封印された力なのやも……。


ポポ:んー。でもそれだと、オーブを取られた時ついでに取られなかったのが変といえば変かな。


GM:(ポポ、鋭い)鑑定が終わって17時半。暗くなって魔動街灯が灯りだす頃。


ポポ:エドガーくん、弱体化しちゃうね(※しません)。


GM/エドガー:「故郷の村では太陽ティダンと一緒に寝起きしてたらから、もう眠いぞ……」ちなみにエドガーくんは首にはティダン聖印を装備してます。腰の多機能ベルトにはハルーラの首飾り聖印を引っかけてる。


アトランタ:ハルーラの聖印は……仲間の遺品でしょうね。


ポポ:あ、そうだ。ティダン神殿の偉い人にも見せてみようよ。


***


 グランドターミナル駅区のティダン神殿を訪ねる冒険者たち。書庫も解放してもらい、魔剣に関する伝承を漁っては見るものの、文献判定は振るわず。しかし、司祭様から聖典に残された伝承を聞くことは出来ました。


 『聖銀の剣によって悪しき霊は斬り祓われ〈黒く染まった剣〉は地上の聖堂に』

 

 『魔神の肉たる〈オーブ〉は地下へと封じられた』


 『何人たりとも〈オーブ〉に触れることなかれ』


***


ヘキサ:……すまない、ボクの頭がもっと良ければ(カッコいいポーズ)。


アトランタ:おそらく文献は目標値16以上。我々にはキツいですわね。


ポポ:うーん、封印された剣もなんで落とし穴に落ちてたんだろ。


GM:~♪(暗くなったし、夜道で野良魔神とのバトルイベント入れよっと)



アトランタ:一旦、エドガーに聞こえないよう声をひそめて……「ページ盗んだのはケストナー教授ですわよね(ひそひそ)」


ポポ:「だろうね(ひそひそ)」


アトランタ:……怪盗、忍び込んで探してきましょうか?


GM:(うおっ)


ヘキサ:リスキーだけど、いけるかな?


ポポ:盗まれた後に処分されてたら空振りだけど、いいんじゃないかな。


アトランタ:何かしら他のヒントもあるかもしれませんわ。エドガーは先に帰してしまってもいい気はしますが……。


ポポ:ここまで来たら一緒にいてもらったほうがいいと思うのだ。


GM:(まぁ重要そうなアイテム持ってればそうなるか)


ポポ:スカウトの無いポポはこの辺りで、エドガーくんと一緒にフラフラしてるね。ご飯でも食べとこうかな……。近場でオススメの店はある?


GM:グランドターミナル駅の上階は高級百貨店です。4階部分は食料品売り場。別地方の物産展とか、買った食べ物を持ち込めるテーブルスペースもあります。


ポポ:じゃあ駅の上の階で適当に何か食べつつ待ってよう。


ヘキサ:そして、ボクたちスカウト組は、抜け出して学院へ。


アトランタ:ツラのいいアホのナルシスト共に任せてくださいまし!


ポポ:言い方(笑)。


GM/エドガー:「今は食欲とか湧かないが……」


ポポ:ポポを一人にしていいの? 何をするかわからないよ? なんと中の人にも何をするかわからん。


GM/エドガー:「……それは、大変だ」怖いってば。


アトランタ:斬新な脅迫ですわね(笑)。エドガーくんには「女性には秘密は付きものですわ」とか言っておけば、よくわからん顔しつつ納得してくれでしょう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る