修羅場

バブみ道日丿宮組

お題:かっこ悪い味 制限時間:15分

修羅場

 部屋の外で数十分待たされて、入っていいよと彼女に言われ、

「えっとこれは……いったいなにかな?」

 目に見えてきたのは、絶境だった。

「料理したんだ」

「えっ、えっ……?」

 どう考えてもその発想にはたどり着けない。

 部屋はかなり散らかってた。料理をしてたという台所には確かにそのものらしいものがあるが部屋の惨状と比べるとかなり薄味。

 散らかってるのは衣服、下着、ゲームのコントローラー、ゲームソフト、えっちな本などなど。

 部屋から出る前は確かにタンスの中、あるいは本棚、洋服棚に仕舞われてた。

「そっちはついでだから」

 そういう彼女の足元には袋にえっちな本が大量に入ってた。

「……そっちがメインじゃないの? ってか、どうして妹属性の本だけ……?」

「あ、甘えるのは私がするんだから、こういうのは見ちゃだめ」

 なら、全部の本を捨てれば……いや捨ててほしくない。

「入手困難のもあるから、返して欲しかったりするんだけど……駄目かな?」

 ふんふんと鼻息が荒い彼女は、目が血走ってるようで怖い。

 何か気に触ることをしただろうか……いや気に触ることもがあったからか。

 何にしてもここは僕の部屋であって、彼女の部屋ではない。

 僕のものは僕のものといおう。絶対権利はあるはず、なければならないことだ。

「私がいれば、こういうの必要ないでしょ。違う?」

「違わないけど、ほらアイドルの本ってレアリティあるよね? 未来で高くなるかもしれないし」

「じゃぁ、今古本屋に売ってきて」

 えっと……話が通じてない?

「今はそんな値段しないよ」

「いいから、これの売却価格で旅行行こう?」

 笑顔が怖い。

 袋を押し付けられた僕は、どうしたものかと思考を巡らせる。

「と、とりあえず、ご、ご飯食べてからでいいかな?」

 最終的にたどり着いたのはそれだった。

 食べてる間に対応手段を考えようという先延ばし作戦。

「うん、いいよ。たくさん、たべてね」

 部屋になんとか座れるスペースを作り、テーブルを設置すると、彼女がその上に料理を置いた。

 彼女が作ってくれたのはラザニアだった。いい匂いがしてる。

「た、食べづらいなぁ……?」

 ラザニアの味がわからないくらいに彼女は僕を見てる。

「食べ終わったら一緒に売りに行こうね」

 どうやら回避することはできなそうだ。

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修羅場 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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