6.シゾフレニア

曰くありげな女主人は

"どうぞよろしくね"

とだけ言った


時間に詳しいかげろうは

若葉色の羽をぴん、と立て


30度でお辞儀をすると

(まるで病室)

(人と会わせるのは控えたほうがよさそうだ)

と黙った


カーテンに染みがついた

クリーニング屋に電話する


"あの……お部屋のランプが壊れてまして"

修理屋に来てもらう


意図の汲めない輩から郵便が届き、波乱の予感がする


俺だったら捨てるね

突っ返してやりたいよ


"ねえねえあの大きな箱"

──うるさい


給料並みにしか働かないぞ

手が焼けるったらない

ばかばかしい

背中合わせの毎日


煙たいと訴えがあり、部屋に入れば書き損じの手紙が焦げていて


『病気をしたことで、得たものがありました』

ぬるい話は貴女も嫌いか


台所で

労働を嘲笑うようにトマトがけらけらと転がるのを

見せたいと思った


背中合わせの毎日


飼い殺しの檻に抜け道を作りたい

それが届いていない滑稽な現状

知らなくたって気づかなくたっていい


誰かが水と油だというのなら

それも本当だろう

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