4.指輪は呟く

書けるなら、つたえたいよ

たった今が、丸い過去の再出発点


ひとつふたつとぜんぶにした、手袋をまた、ひとつに合わせて貴方へ返したい


花嵐、小さな鐘の音が通りすぎるまで

頬をこぼれる笑みは

次の夜もふるえるはずだった

涙の跡を消し去った


ほんとうに星のようにまるい儘、青い光をちりばめたい、

こころは滴

温かな貴方の声を

うしなってしまうなら

そう

古い友情に話しかけた


ビーズの装飾をはずした片手がうつむいた

冷たい夜も

片方の手であの時の

感情の糸のもつれを

はずせたら

壁を叩いた痛みをわすれたら

こんなふうで良かったと思える?

いちど丸めた地図のばして、点と点、駅と駅繋ぐ線をぐーんと引いてみた


──小石つかんだ指先はあぶなげに、すこしだけ、波に浚われた


もう、忘れていてもいいから

貴方のことば、きかせて

葛藤を浮き彫りにする午後が一番いい

若い憂鬱、愚直、良心、呵責、

水道管に残る、思惑みたいなミネラル

始末、もう昔だといえたのなら


マグカップをからにして

繰り返す生活が

季節と共に深まりをとりもどす

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