15.街角で

そのとき雨を呼んだのは私じゃなかった

だが、渦中にいたそんな私より今にも倒れそうな人がサンシェードの下に現れた時

体の中から

風が吹いた

魔法は使えない

余り物のパンで拵えたサンドイッチを

お腹をすかした人の手に押し付けたら

ガラスの海面がオレンジ色

波の記号は何も知らないふりをして

缶の中のクリップのように混ざりあっている


季節の移ろいを溶かし込んだ匙の先のような月を見たか

明日全く同じ味のパンを焼けないことをパン屋は気にしない

ひとつひとつの巡り合わせは、胃を満たし元気を取り戻すまでの小人の乗法

誰かへ辿り着いていつかまた誰かが抱き締めてゆくかもしれないじゃない

風の話を

けして信じていた訳じゃないけれど

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〈花の種〉 渚鳥 @sudori

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