11.コンラート大橋防衛作戦


[帝都 帝国軍本部 会議室]


 会議室に"青の花"が到着しても、いつものように出迎えるものは居なかった。

会議が始まっても、暗い表情のまま、皆、一様に下を向いている。

あの巨大な化け物を相手にする為の逆転の一手など思い付くはずもなく、時計の針が進んでいった。


 蒸し暑い、どんよりとした空気が部屋を包み込む。

誰もがただ自国の破滅を待つだけだった。


 しかし、その直後ドアが開き、身が引き締まるような外の冷たい空気が流れ込んでくる。


イガルルフタ2世:「遅れて済まない、ただ今参った」


 その蒼い瞳は、見たものすべてがひれ伏すような冷たさを有しており、このような状況においてもまるで絶望などしていなかった。

当然の勝利だけが、彼の目にはまるで映っているかのようで、臆する様子など毛ほどもない。

慌ててこの場のすべての兵士たちが立ち上がり、敬礼をする。


イガルルフタ2世:「よい、座れ。作戦の概要を話す」


 言われるがまま、兵士たちは着席する。

そこにいたのは一匹の獅子だった。

食されることを待つだけの家畜たちの目付きが一変する。

イガルルフタ2世という存在は、その場にいるだけですべての人間を奮い立たせるような、そんな独特な空気感を放っていた。


イガルルフタ2世:「まず、初めにではあるが、巨竜を落とす算段はある」


 兵士たちから驚きの声が上がる。

しかし、それは信じきったようなものではなく、疑念混じりのものだった。


イガルルフタ2世:「貴殿らが信じられないのも当然だ。本来ならばこのようなところで使う予定のなかった、一度限りの兵器だからな」


 そのような兵器は当然耳にしたことはない。

一度限りならばとその理由にも頷けなくはないが、確証もない。


フリーマン:「おいおい、そんなに悲観するなって、陛下の言うことは本当だよ。今、丁度手配していたところだ」


 フリーマン大佐も遅れて入ってくる。

いつも通り飄々とした態度で、こちらも巨竜を恐れる様子などなかった。


フリーマン:「ただし、この手段は少々時間がかかる。そこで、お前たちには時間稼ぎを頼みたい」


イガルルフタ2世:「貴殿らも確認したと思うが、コンラート大橋にできる限りの防衛設備を配備している。それを活用し兵器が起動するまで防衛に徹してほしい」


フリーマン:「この会議が終わり次第、防衛施設の応援へ向かってくれ」


イガルルフタ2世:「この作戦は貴殿らにかかっている、期待しているぞ」


 そう言い残すと、イガルルフタ2世とフリーマン大佐は会議室を去り、残った兵士たちもすぐに自分の担当する任務に向かうこととなった。


マーキュリー:「ふぅ…」


エックス:「なんかすげー雰囲気の人だったな」


シノ:「……」


 シノは銃に弾を込め直し、準備を終える。


マーキュリー:「これじゃあ折角帝都に戻ったのにゆっくりできないわね」


ジャンヌ:「たしかにあの人がいれば、なんとかしてしまう。という雰囲気はあるよね」


エックス:「あの竜を倒せれば、少しはゆっくりできるかもなー」


ジャンヌ:「いえ…たぶん、ゆっくりできませんよ…。そのあとは、共和国への反撃に忙しくなると思います」


クアム:「おまえたちはここ育ちだったのか?」


マーキュリー:「ええそうよ」


ジャンヌ:「うん」


エックス:「一応な」


クアム:「そうなのか。いいなっ!」


シノ:「…お前ら、無駄口きいてないで準備しろ」


マーキュリー:「えええ…、髪を整えるくらいの時間はあってもいいでしょう?」






[帝都 帝国軍本部 廊下]


リック:「俺たちの任務は…資材を補給所から受け取って、そのままコンラート大橋で防衛設備の設置だな」


 君たちが廊下の片隅でこの後の打ち合わせをしていると、懐かしく、麗しい声が耳に届く。


ベルナデッタ女教皇:「みなさん、お久しぶりです。お変わりはありませんか?」


リック:「おぉ! ベルじゃないか! めちゃくちゃ久し―――」


ベルナデッタ女教皇:「…ゴッド・フィスト!」


 ベルナデッタ女教皇はリックの顔面にストレートパンチを放つ。

君たちも当然ながら彼女はあのような話し方をせず、この手段のほうが彼女らしいと思うだろう。

思わず笑みがこぼれる。

君たちにとって"ベル"という人物は忘れるはずもない大切な友人だからだ。






[10年前 回想 帝都 イドリッツ学校 初等部]


ノーマ先生:「さて、2時限目の授業はここまでとします。お昼休みとしましょう」


 その言葉を聞くや否や、クラスメイトは君たちしかいないというのに、うるさいほど教室に元気な声が響く。

イドリッツ学校は小さな学び舎のため、年長から年少までみんなが同じクラスで勉強していた。


エックス:「zzz…」


シェリー:「今日は何食べようかなー」


 シェリーは机の上にドライフルーツをばらまく。


リック:「いいなー! シェリーまたお菓子持って来たんだー!」


シェリー:「えへへー、このために森でつんできたんだよ!」


ジャンヌ:「エックス、おひるだよ。おきてー」


マーキュリー:「エックス。ね な い の!」


 マーキュリーはエックスの耳を引っ張り、たたき起こす。


エックス:「痛たたたた、やめろマーキュリー!」


ジャンヌ:「マーキュリー、かわいそうだよ?」


マーキュリー:「いまから稽古でしょう? エックス」


 シノは窓際でいつものバカ騒ぎを眺めている。


エックス:「だってよ…日の光が気持ちよくて」


リック:「みんなー! サッカーしようぜ!」


ジャンヌ:「おおお! サッカーやる!」


エックス:「サッカー! 俺もやるぞ!」


シノ:「しょーがねぇな、付き合ってやるよ」


マーキュリー:「えええ? サッカー?」

「私はエックスと射撃訓練する予定だから、ね? エックス」


エックス:「う…そうだったな、忘れてなかったぞ」

「マーキュリーが忘れてたかどうかテストしてたんだ」


マーキュリー:「ふふっ、そうでしょ。勝負するんでしょ」


エックス:「あんなピコピコしたやつに俺が負けるわけないだろ、今日こそは勝たせてもらうぞ!」


マーキュリー:「ふーん言うじゃない」

「っとまぁそう言うとリックが可愛そうだから。今日は仕方なくお付き合いしましょうか。勝負はまた後日にしましょう」


シノ:「またボール取られても泣くんじゃねーぜ、リック」


リック:「な、泣かねーよ!」


ノブナガ:『蹴鞠か、懐かしいな』


ジャンヌ:「わーい。みんなで遊ぶと楽しいよ」


リック:「それじゃあみんなグラウンドに…」


 教室のドアから出ようとしたとき、君たちはふと視線を感じるだろう。

窓越しに女の子が一人、ちょうど目から上を出して、こちらを覗いている。

はしゃぐ君たちのことを少し羨ましそうに、じっと見つめていた。


ノーマ先生:「おや…? あなたは?」


???:「…!」


 先生が窓からの視線に気が付き、そちらの方向に歩いて行くと、少女は慌てて体を隠す。


らびっと:「おい! なんか小娘がいるぞ~!」


ノーマ先生:「ベルナデッタ様ではありませんか、どうしてこのようなところに?」


ジャンヌ:「ベル姉、なんで? ここにいるの?」

「はっ!? …ベルナデッタさま。どのようなごようでこちらに?」


らびっと:「へへっ、なかなか整った顔してるじゃねえか」


エックス:「ん? 誰だ? 見たことないな」


 観念した様子で彼女は顔を出すと、くぐもった声でつぶやく。


ベル:「だって…楽しそうだったんだもん…」

「…ずるい! 私いっつも教会でお祈りしてるのに!」


 くぐもった声は、子供特有の喚声となり、ノーマ先生へと感情をぶつける。

それでも、ノーマ先生は優しげな表情のまま彼女に問いかけた。


ノーマ先生:「教会から抜け出してきた来たのですか? それは褒められたことではありませんね」


ベル:「…このまま教会に連れ戻すの?」


ノーマ先生:「うーん…そうですねぇ…」


 先生はわざとらしく考えた素振りをする。

不満気に顔をむくれさせるベルナデッタを彼はなだめるように続ける。


ノーマ先生:「もし、教会での務めがただ嫌になって抜け出してきたならば、すぐに連れ戻します」


ベル:「そんなぁ…」


ジャンヌ:「あの…もう少しだけ…ベルね…ベルナデッタさまをこちらに居させてください」


シノ:「あ? んだよ、やりてーならおめーも入れよ」


ベル:「…でも…連れ戻されるし…」


らびっと:「おいおいセンセー。まじかよ。このピッチピチなやつを連れ戻すだぁ?」


 がっくりと、うなだれるベルナデッタにノーマ先生は言葉をかける。


ノーマ先生:「…ですが、ここは学び舎です。学びを得に来たというなら、返すわけにはいきませんね」


らびっと:「ハッ! わかってんじゃねーかセンセー!」


ベル:「…!!」


ジャンヌ:「さすがノーマ先生!」


ノーマ先生:「ひとまず、一緒に給食はいかがですか? 先ほどからお腹が鳴っていますよ?」


ベル:「あっ…」


 ベルナデッタは顔を赤くする。

恥ずかしい気持ちをごまかすかのように窓を飛び越え、みんなに挨拶する。


ベル:「私、ベルナデッタ! ベルって呼んでね!」


ノーマ先生:「こらこら…ちゃんと玄関から入って…って聞いてませんね、はぁ…」


エックス:「ベルっていうのか、俺はエックスだ、よろしくな!」


シノ:「応! ベル、オレはシノ! よろしくな」


 ジャンヌはベルナデッタが嬉しそうにしているのを、若干涙を含めて見ている。


ノブナガ:『ボトリオスフェリヒドロフラン=リアノダンジテルペン=ダンシェンスピロケタールラクトン=ノブナガだ。よろしく』


リック:「俺はリックだ! よろしくな!」


ベル:「うん! よろしくね!」


らびっと:「俺はそうだなぁ。マーきゅんからは"らびっと"って呼ばれてるなぁ。まぁ好きに呼んでくれぃ」


ジャンヌ:「よろしくお願いします。ベルナデッタさま…」


ベル:「ジャンヌも別にここなら好きに呼んでいいんじゃない?」


ジャンヌ:「そう…だね、ベル姉。ここは公式の場じゃないもんね」


シノ:「ん? なんだジャンヌ、知り合いかよ」


ベル:「ふふふ、何を隠そう私はジャンヌのお姉ちゃんなのです!」


ノブナガ:『確かに似てるもんな』


エックス:「へ、姉? ちっちゃいしそうは見えなかったわ」


ベル:「うるさいやい!」


マーキュリー:「シェリー、お客様だって」


シェリー:「お客さーーん! これたべる?」


ベル:「お腹すいてたしいただくわ!」


マーキュリー:「こらこらシェリー。自己紹介の時間みたいよ」


シェリー:「シェリーはシェリーなの!」

「よろしくね! ベルちゃん!」


マーキュリー:「マーキュリーよ。あのうるさいうさぎさんが何かいってたきがするけど」


ベル:「ありがとうね! シェリー!」


らびっと:「うるさいってなんだうるさいいって!」


ベル:「へぇ! 珍しいわねしゃべる人形なんて!」


 ベルはらびっとを引っ張って遊ぶ。

らびっとからは悲鳴と糸の千切れる音が聞こえる。


らびっと:「あいたたたたたたたたたあああああああああ!!」


ノブナガ:『子供の人形遊びのようだな』


マーキュリー:「ふふっ、すごいでしょ。お父様が作ったのよ」


ベル:「うん! すごいねこれ!」


らびっと:「おい説明なんかしないで助けてくれよ…!」


シノ:「おいおい、あんまり乱暴してやるなよ。壊したらマーキュリーが泣いちまう」


ベル:「あぁ、ごめんごめん、じゃあ返すね」


らびっと:「いたたた…!」


ジャンヌ:「ふふふ、でも信じられません。あの真面目なベル姉が教会から脱走するなんて」


ベル:「えー、そりゃあだってあれだけ毎日お祈りさせられてたら嫌になるよー」


ジャンヌ:「ベル姉も、遊びたいもんね」


ベル:「さて、ドライフルーツいくつか食べてお腹もちょっと満たされたし…」

「遊ぶんでしょ! 参加するわ!」


マーキュリー:「シェリー、サッカーする?」


エックス:「そうだ、サッカーだサッカー! ボール借りてくるぞ!」


リック:「おう! サッカーするぜ!」


ジャンヌ:「サッカーというのはですね…」


 ジャンヌはベルにサッカーについての説明を始める。


ベル:「なるほど、手は使っちゃいけないのね」


マーキュリー:「…やっぱり私はパス。美容にならないし」


リック:「おいおい、人数足りなくなっちまうよ!」


マーキュリー:「ふふっ。撃ち抜かれたいようね」


ベル:「というわけでマーキュリーも参加ね!」


マーキュリー:「え?」


シノ:「なんだマーキュリー、負けるのが怖いのか?」

「なら仕方ねーなー」


ノブナガ:『泣くとうるさいからな』


エックス:「そうか…無理をしなくてもいいぞマーキュリー」


ベル:「あら? そうだったの? だったら…」


マーキュリー:「あのね…言っておくけれど勝ち負けはこだわらないし」


シノ:「いいんだ、みなまで言うな! お前の気持ちはわかった」


ノブナガ:『あぁ、そうだ。虐めはかわいそうだ。やめてやれ』


ジャンヌ:「あ…あの…マーキュリー。出来たら…一緒に遊んでほしい」


エックス:「勝ち負け関係なく楽しもうぜ、な」


シノ:(ちっ、エックスめ。もうちょっとからかってやろうと思ったのに)


リック:「折角なんだしみんなでやろうぜー、なぁやろうぜー」

「なぁなぁ」


マーキュリー:「というよりシェリーがあんな感じだから、やっぱり私は教室にいるわね」


 マーキュリーがそういってシェリーの方へ目をやると、シェリーはいつのまにかボールを持ってグラウンドの真ん中で待機していた。


マーキュリー:「あれ…シェリー?」


ノブナガ:『人数は足りたな。別にいいぞ』


シェリー:「なにー? 早く遊ぼうよー!!」


マーキュリー:「…」


シノ:「人生諦めも肝心だぜ?」


マーキュリー:「はぁ、わかったわよやればいいんでしょ」


ジャンヌ:「ふふふ」


シノ:「よーし、そうこなくちゃな!」


ベル:「やったぁ!」


ジャンヌ:「ベル姉。みんなとてもいいひと達でしょ?」


ベル:「ええ、そうね!」


 それぞれがダイスを振った結果、エックス、ノブナガ、リック、マーキュリーの奇数チームとシノ、ベル、シェリー、ジャンヌの偶数チームが結成された。


ノブナガ:『はっ、勝てるわけがなかろう。年季が違うのだよ』


マーキュリー:「ちょっとの差じゃない…」


ノブナガ:『どうだろうな』


シェリー:「そんな鎧来てたら動きずらいもん! 負けないよ!」


ジャンヌ:「ノッブって…たまにおじいさん臭いときがありますよね」


マーキュリー:「キーパーやるし…ってリック??」


リック:「キーパーなら任せろ!」


マーキュリー:「絶対私のこと走らせたいだけでしょ!」


エックス:「動かねーと太るぞ」


マーキュリー:「はぁもう絶対走らないし…ていうか射撃訓練してるからふとらないしぃ~」


シノ:「はっ! 負けねーぜエックス」


エックス:「サッカーは得意なんだ、今から負けたときの言い訳の練習をしとくんだな」


シノ:「言ってろ」


ジャンヌ:「シェリー、シノ、ベル。みんな楽しんでいくよー」


ベル:「よくわかんないけど任せなさい!」


シノ:「やるからには勝つ」


ノーマ先生:「はーい、では試合開始ー!」


 最初にボールを取ったのはエックスだった。

ドリブルで数メートル、ゴールに近づき、ノブナガにボールをパスする。


ベル:「なかなかすばしっこいわね…でも!」


 しかし、ベルナデッタはその動きを読んでいたのか、リフティングするノブナガからボールを奪う。


エックス:「ノブナガのリフティングが破られた!」


ジャンヌ:「ナイスガード! さすがベル姉!」


エックス:「勘がいいなベル!」


シノ:「やるじゃねーかベル!」


ノブナガ:「ちっ」


 だが、ノブナガも負けてはいない、ベルナデッタがシノへパスをしようとするものの、そのボールを取り返し、ドリブルでゴール前へと駆け抜ける。


エックス:「頼んだ、ノブナガ!」


 ノブナガは勢いをつけてそのままボールを蹴り飛ばす。

放たれたボールは、強い回転がかかったままアーチを描いてゴールへと向かった。


ジャンヌ:「ここは止めさせてもらうよ!」


 キーパーであるジャンヌは身を挺してボールを止めると、ベルナデッタへと投げ渡す。


リック「やっべぇ! こっち突っ込んできやがった!」


 ベルナデッタはその場からシュートを決めようとする。

そのボールはゴールの隅を狙った的確なシュートだったが、ギリギリのところでリックが受け止める。


エックス:「ナイスリックー!」


リック:「あ、危ねええええ!」


ベル:「な、なかなかやるじゃない!」


エックス:「ジャンヌ、お前の姉ちゃん普通に強いぞ!」


シノ:「惜しかったぜベル!」


ベル:「ごめんシノ! そっち抜けた!」


シノ:「気にすんな! 次狙ってけ次!」


マーキュリー:「はぁはぁ…。サイアク…あっちにボール行ったんだけど」


 和気あいあいとした、楽しい時間が過ぎていく。

しかし、それもつかの間、リックはエックスにボールをパスし、その場からエックスはシュートを放つ。

だが、距離もあってかそのシュートは軽く、あっさりとジャンヌに止められてしまう。


シノ:「流石に無理あんだろエックス」


 さらにカウンターでボールがシェリーのもとへと渡り、それをシノにパスする。


ベル:「シェリー! シノ! やっちゃえ!」


 しかし、それでもリックはその一撃を受けとめ、マーキュリーへとボールを渡す。

完全にフリーとなったマーキュリーがゴール目前までボールを蹴りながら走る。


ジャンヌ:「ベル姉が見てるからね」


 ジャンヌが気合を入れ直し、構えようとしたとき。

マーキュリーがすかさずシュートを放った。

そのボールにジャンヌは反応できず、ボールはゴールの中へと吸い込まれていく。


エックス:「おおおおおおおおおしゃあああああああああ」


リック:「ナイスだマーキュリー!!」


シノ:「ちくしょう!」


シェリー:「お腹すいたー」


マーキュリー:「はぁはぁ…もう二度とやらないんだからぁ…」


ジャンヌ:「くっ…マーキュリー。まさかそこでシュートするとは思わなかったよ」


ベル:「もっかい!もっかいやるんだから!」


ノーマ先生:「さて、皆さん、盛り上がっているところすみませんが、そろそろご飯にしますよー」


シノ:(ぐぬぬぬぬ…)


ノブナガ:「はっ」


エックス:「俺達のチームワークの勝利だ」

「悔しかったらまた遊びに来いよベル!」


ベル:「あったりまえじゃない! 勝つまでやるわ!」


シノ:「あーくそ! やめだやめ! あ~腹減った。さっさと飯にしようぜ」


ジャンヌ:「ふふふ。ベル姉が楽しそうでにっこりです」


 みんながサッカーをひとしきり楽しみ、教室に戻ると給食が既に届いていた。

食べ盛りの君たちのために、シチューとパンが多めに用意されていた。

デザートにはプリンが一人一個ついている。


 エックスは一瞬で給食を食べ終わらせ、余ってるプリンを獲りに走りだす。


マーキュリー:「あー! エックスずるい!」


シノ:「おっとエックス。そうはいかねぇぜ」


 エックスの前にシノが立ち塞がる。


エックス:「くそ、少し遅かったか…」


シノ:「あめーんだよ、おめぇの魂胆は見え見えだ」


ジャンヌ:「リックはいいの? プリンだよ?」


リック:「いやー、だってなぁ…あいつら目がマジなんだもん…」

「俺はこの一個をゆっくり楽しむことにするぜ…」


ノブナガ:『くだらん争いよ』

『そんなことをしている暇があったらさっさと食事を終わらせるんだな』


 そういうとノブナガは教室の端の方で壁の方向き、兜を脱いで食事を始めた。


ジャンヌ:「ベル姉は、食べられないものとかあります?」


ベル:「食べれないものは特にないけど…何これ…ぷりん…っていうの?」


ジャンヌ:「うん。おいしいけど、ごはん食べ終わってから食べるものなの」


ベル:「ふーん、そんなものなのねー」


ジャンヌ:「ボクたちも、ごはんが冷める前に食べましょう」


シノ:「おいエックス! さっきの続きだ! このプリンは勝負して勝った方のもんにしようぜ」


エックス:「いいぜ、何で勝負するんだ?」


 シノとエックスが言い争っている間に、こそこそとシェリーはプリンのもとへと隠密しながら近づく。

しかし、その途中でシノに見つかり、猫のようにつまみ上げられてしまう。


シノ:「おいこらシェリー! おめー抜け駆けすんな!!」


シェリー:「ちくせう」


エックス:「あぶねえ、抜け駆けされるところだったぜ」


ジャンヌ:「いつもこんな感じなんですよ、ベル姉」


 そんな会話の最中、マーキュリーは食事に夢中になっているリックのプリンをこっそりと盗み取る。


リック:「さーて、シチューもパンも食べ終わったしプリンを…」

「って…あれ…ない…! どこ行った! 俺のプリン!」


ジャンヌ:「リック、もう食べたんじゃない?」


リック:「誰だよ…! 俺のプリン持ってったの! 返せよ…! たった一つの俺のプリンなんだぞ!」


 リックがプリンを探している最中、シェリーはよだれ垂らしながらノブナガのもとへ近づく。


シェリー:「のぶながぁぁー」


ノブナガ:『なんだ』


シェリー:「プリンちょうだい?」

「代わりにご飯あげる!」


ノブナガ:『なるほどな。いいぞ』


シェリー:「やったー! ありがと!!」


ノブナガ:『構わん』


シノ:「おいマーキュリー、オレのカバンを後ろの壁際まで置いてくれ」


マーキュリー:「え~」


ベル:「しかしみんな食べ終わるの早いわね…ちゃんと噛んでるのかしら….」


ジャンヌ:「よく噛んでないと思いますよ。でも、ここは別にマナーとか気にしないでいいんです」


ベル:「ふーん…さて、私も、ぷりんってやつを頂こうかしら」


ジャンヌ:「うん、召し上がれ」


 マーキュリーは渋々と言った様子で、シノの鞄を壁際までもっていく。

シノはその間にノートから2ページを抜き取り、丸めて玉にする。


シノ:「こいつで、あのカバンのボタンへ三回先に当てた方の勝ちにしようぜ」


エックス:「いいのか? そんな楽勝な勝負でよ」


シノ:「おいおい、オレの腕を舐めるんじゃねぇぜ」


 エックスは絶対にプリンを我が物にしようと、力いっぱい玉を投げる。

放たれた直球は彼のすさまじい食への執念が乗り移ったかのように、ボタンへとぶつかる。

二回目もその勢いに乗り、力強い玉がボタンへと命中する。


エックス:「よし、後1回だ」


シノ:「ち、やるな」


 しかし、シノの負けず嫌いもあってか、繊細なコントロールで玉を的へと命中させる。

エックスは剛、シノは柔、と言ったように一進一退の攻防が繰り広げられていた。


シノ:「おらおら」


エックス:「くそ、油断したか…!!」


 お互いに得点は二点。

最後の一投となり、両者は一斉に球を投げる。

シノの正確無比な玉はボタンへと吸い込まれていくように飛んでいった。


シノ:「もらったぜ!」


 シノの玉が当たるかと思われたその時、エックスの放った渾身の玉がシノの玉を捉える。

なんとエックスが放った玉には意図せずではあったが、勢い良く回転がかかっており、空気の抵抗を押しのけ伸びるように的へと向かってきたのだ。

その勢いに押し負けシノの玉はあっけなく弾き飛ばされ、そのままエックスの玉が的へとぶつかる。


シノ:「うっそだろ!? そんなのありかよ!!」


エックス:「うおおおおおおオオオオオオーーーーーーーーーーーーーー!!!」


ジャンヌ:「エックス。食事中にうるさい!」

「ベル姉の食事を見るのに集中できないでしょうが!」


エックス:「…すまん」


シノ:「ちっ、ほらこいつはお前のもんだ」


エックス:「あんがとよ、いい勝負だったぜ」


シノ:「ああ、今度は負けねえぜ」


 シノは敗北を認め、残ったプリンを渋々と言った様子で渡す。

エックスはその場で勝利の美プリンを舌の上に転がし、満面の笑みを浮かべる。

そんな盛り上がる二人を背にベルナデッタは新たなプリンを求めて、暗躍を始める。


マーキュリー:「リック。平民の貴方にプリンがあると思って?」


リック:「犯人お前かぁ!!」


マーキュリー:「ふふっ、さーて、私のプリンはと…」


マーキュリーはそう言いながら、リックから奪ったプリンを食べようとするも、そこにプリンはすでになく、先ほどのリック同様に周囲を血眼になって見渡す。


マーキュリー:「!?」


ベル:「ジャンヌ…! これ、すごくおいしいわね!」


マーキュリー:「ちょっ…。私のプリンが…」


リック:「いや俺のだよ」


マーキュリー:「リックのものは私のもの。私のものは私のもの…」


ベル:「あら? そういうルールだと思ってたわ」


シノ:「リック、取られたお前の負けだ」


エックス:「強い奴がより多くのプリンを食えるんだ…」


シノ:「敗者は黙って負けを認めろ」

「マーキュリーもな」


マーキュリー:「ぐぬぬ…」


ジャンヌ:「ベル姉。このプリンも食べる?」


ベル:「うん! 食べる!」


リック:「いや…だからそれ俺のだからなぁ!?」


ジャンヌ:「リック、うるさい!」


リック:「えぇ…」


シノ:「男がめそめそ言ってんじゃねーぞ」


リック:「えぇ…?」


シェリー:「リックもう食べたってジャンヌ言ってたもん」


リック:「えぇ…!?」


ベル:「んー! おいしい!!」


シノ:「かーっ、負けた負けた。今日は調子わりーなー」


 シノはそういって窓際の自分の席に組んだ足乗せ、ふて寝を始める。


ベル:「仕方ないないわねリック、一口ならあげても良いわよ」


リック:「いや…だからそれもともと俺の…」


マーキュリー:「私のだしー」


エックス:「要らねえなら俺が貰うぞ」


シェリー:「シェリーの!」


ジャンヌ:「ちがうよ。ボクがベル姉に渡したやつだよ」


ベル:「ふーん、文句言うなら渡さないわよ」


リック:「いただきますーーッ!!」


マーキュリー:「リック…情けないわね…」


ジャンヌ:「リック…いいなぁ」


 チャイムが鳴り、昼休みと給食が終わりを告げる。

教室では、すでにノーマ先生が授業の準備をしていた。


ノーマ先生:「さて、皆さんお昼休みも終わった事だし、午後の授業を、始めますよ? 道徳の授業です」


シノ:「うーっす」


ベル:「えー、私、普通の授業が良いんだけど…」


マーキュリー:「ええ…プリンの作り方のほうが将来性あるんじゃないかしら」


ノーマ先生:「そう言わずぜひ聞いてください。普通の授業よりもよっぽど大切なことなんですから」


ノブナガ:『倫理観には自信があるんだがな』


エックス:「腹一杯食ったら眠たくなってきた…」


ジャンヌ:「ベル姉、みんなで授業受けると楽しいですよ」


ノーマ先生:「さて、今日の授業の内容ですが…」


 そういうとノーマ先生は黒板に文字を書き始める。

チョークで書かれたのは"どうすれば平和な世界ができるのか"という議題だった。


ノーマ先生:「…皆さんも知っての通り、我らがペルセドル帝国と隣国のファルジア共和国は停戦協定中です」

「歴史の授業でもやりましたが、"ウルカニア侵攻"では多くの戦死者が出ました…」

「いつか、皆さんの大切な友だちや家族が同じようにいなくなる日が来るかも知れない。だから、あなたたちにも考えて欲しいんです」「どうすれば、みんなが笑って過ごせるのかを」


シノ:「んなもん簡単だろ、傷つける相手が居なくなりゃ誰も傷つかねぇんだから、敵になる奴全員ぶっ潰せばいいだけじゃね?」


ノブナガ:『そうだ。天下を統一すればいい』


マーキュリー:「ふふっ、ノブナガ。それいいじゃない」


ノブナガ:『逆らう者は皆敵だ。殺してしまえ』

『そのために日々稽古をして、力をつけているのだろう』


リック:「えー、でも天下統一するにしてもその過程でいっぱい人が苦しむぜ?」


ノブナガ:『やむをえない犠牲だ』


エックス:「皆苦しむなら戦争なんてしなきゃいいのにな」


マーキュリー:「じゃあ聞こうじゃない。リックは考えがあるの?」


リック:「えー…俺かぁ?」

「誰だって同じように、本当は戦争なんてしたくないと思ってると俺は考えてるんだけどなぁ」


シェリー「zzZ」


シノ:「んなもんかねぇ? だったらなんで戦争が無くならねーんだよ」


リック:「んー、なんでだろうなぁ…お互いに争いたくはないはずなんだろうけど…」


マーキュリー:「ふーん、だからプリンとられるんじゃないの?」


リック:「あぁ…そうか。プリン…ってうるせえよ!」


ベル:「相手にも譲れないものがあるだろうし、仕方ないんじゃないの?」


ジャンヌ:「譲れないものかー」


ノブナガ:『それはどうだろうな』


シノ:「あれだろ? 戦争って言ってみりゃ国規模になった喧嘩だろ? 喧嘩ってーのは同じレベル同士でしか起こんねーんだよ」

「だったら、相手を圧倒してわからせりゃ争う気もなくなるだろ」


エックス:「それじゃあ相手が笑えなくね?」


シノ:「別にオレの知らねー奴がどうなろうと知ったこっちゃねーよ。つーか、どんな環境で笑うかなんてそいつ個人の問題じゃねーのか?」

「裕福だから笑うのか? 貧しいから笑わないのか? そんなんそいつ次第だろ」


 シノは一瞬マーキュリーの方を見ながら言葉を続ける。


シノ:「…恵まれた環境でだって笑えねー奴は居るし、貧しいからって笑ってる奴もいる」

「要はそいつ自身がどー生きたいかって話じゃねーのか?」


エックス:「自分が楽するために誰かを不幸にするのか? 俺はそんな生き方したくねえなー」


ノブナガ:『空想論だな。犬にでも食わせた方がましだ』


シノ:「じゃあお前ならどーすんだよ、エックス」


エックス:「俺か?」

「…………わからねえ!」


シノ:「んだよそれ」


エックス:「戦争起こしてでも欲しいものなんて俺にはないしな」


シノ:「ふーん」


ノブナガ:『所詮人間。自分さえよければ良いのだよ』


ジャンヌ:「やっぱり譲れないものがあるからなのかな…」

「たとえば、プリンが食べたいってのも譲れないものの一つなのかもしれない」


マーキュリー:「プリン食べたいから。戦うって?」


ジャンヌ:「うん」


マーキュリー:「譲れないもの…馬鹿馬鹿しい」


ジャンヌ:「それが大人の世界だと。おいしいもの。きれいな服。よりよい生活になるんじゃないかな」


マーキュリー:「ふーん、じゃあ戦争が起こる理由って簡単なのね」

「誰かが狙ってるプリンを守りたいように、国が"そうしたい"って思うから戦争が起こる」

「じゃあ。良い生活を手にしようと思うのがいけない。そう思ってしまうから戦ってしまう」

「であるなら。そうね」

「みんなリックになればいいんじゃない?」


リック:「え? 俺?」


ジャンヌ:「どういうこと? マーキュリー」


マーキュリー:「みんな弓射る前に矢をへし折る人になれば。そもそも戦おうなんて思わないでしょ」


シノ:「ん? でもよマーキュリー」

「さっきお前にプリン取られたリックは悲しそうだったぜ? 間違いなく笑っちゃいなかったな」


マーキュリー:「そ、それは…ほらリックが平民だからいけないのよ」


リック:「結局一口しか食えなかったしなー」


ベル:「ふふっ、一口食えただけでもありがたいとおもいなさい」


ジャンヌ:「ベル姉からプリンをもらえるなんて…戦争です! リック!」


シノ:「…ん? リック、お前さっき一口食って嬉しかったか?」


リック:「うれしいはうれしいけどよ…だってあれ本来全部食べれたんだぜ?」


シノ:「ほ~、でも嬉しかったのか」


リック:「まあ食えないよりはなー」


シノ:「んー、なら別に欲しいモノ取られてもそのあとちょっと貰えりゃ人って喜ぶもんなんだな」


リック:「いや、プリン取られたことに関しては許さねえよ!?」

「…許さねえからな!?」


マーキュリー:「ほんとにね!」


リック:「最初に俺のプリン取ったのはお前だよ!」


マーキュリー:「リック。ベルナデッタにいいなさい」


ベル:「だってー、なんかみんな取り合ってたしー」


シノ:「ん~今回のお題がみんな笑えることってーんなら、ほしいプリンは奪って嬉しいし、ちょっとおすそ分けすりゃ向こうも嬉しいしでいいんじゃね?」


ノーマ先生:「さて、この辺で良いでしょうかね?」

「実は、この問題には答えなんてないんです」


シノ:「えー、んだよそれ」


ジャンヌ:「先生。答えのない問題なんてあるんですか?」


ノーマ先生:「ええ、だからこそ、あなたたちはずっと、どうすれば平和になるのかを考えなければならない」

「この問題の答えは、ぜひ自分で考えてみてください」


 授業の終了を告げるチャイムが鳴り響く。

君たちはノーマ先生に挨拶をして家路に着く事だろう。


 ベルナデッタはその後も隙を見つけては学校へ遊びに来るようになった。

仲間が一人増え、笑顔の絶えない毎日が続いていった。


 そうして君たちが過ごした日常の中で、いつの日だったか、ベルナデッタが自身の決意を君たちに話していたことを思い出す。

夕焼け空の下で彼女は君たちにこう告げた。


ベルナデッタ女教皇:「…私ね、みんなのいるこの国が好き、だから、何があっても守れるようになりたいんだ」


 遠い昔に君たちと誓った約束は、今でも忘れることはない。






[帝都 帝国軍本部 廊下]


エックス:「久しぶりだなベルナデッタ! 何か月ぶりだ?」


クアム:「教皇様…」


シノ:「…はぁ」


 シノは溜息をつき、壁に寄り掛かかりながら目を瞑る。


ベルナデッタ女教皇:「…ったく、女教皇として面子があるんだから人前でその呼び方するなっていったでしょ!」


ジャンヌ:「ベルナデッタ様。周りに人の目はございません。大丈夫です」


マーキュリー:「お久しぶりです。ベルナデッタ女教皇」


リック:「ってぇ…。いくら何でもいきなり顔殴ることないだろ!! 暴力女!」


ベルナデッタ女教皇:「あら、次はデイブレイクが良いかしら?」


 暴力女という言葉に反応して、笑顔のまま指をボキボキと鳴らす。

しかし、明らかに青筋が走っている顔を見ても、リックは余裕そうな表情を浮かべていた。


リック:「へっ…俺が訓練キャンプで何を学んできたと思ってやがる…!」


 膝を地面につく、肘を曲げて頭を地面にこすりつける。


リック:「はっはっは! 訓練キャンプでどれだけ教官に謝ってきたと思ってる! このくらいの土下座、軽いもんだぜ! すいませんでしたーッ!!」


ベルナデッタ女教皇:「うむ、分かればよろしい!」


 誰かが噴き出したと同時に、ベルもこのやり取りが懐かしくなったのか、先ほどの顔と打って変わって笑顔になる。

ひとしきり再会を祝って笑った後、ベルは少し心配そうにあなたたちに言葉をかける。


ベルナデッタ女教皇:「とりあえず、みんなも元気そうね」


マーキュリー:「ふふっ。当然」


エックス:「お前も相変わらずだな」


ジャンヌ:「ふふふ。懐かしいですね」


ベルナデッタ女教皇:「で、あんたたち、ケガとか大丈夫なんでしょうね?」


ジャンヌ:「うん。怪我したけど、もう治ったよ」


リック:「はーい! 顔に大ケガを負いました!」


ベルナデッタ女教皇:「あんたのはツバでもつけときゃ治るわよ…」


マーキュリー:「うわぁ…リック情けな…」


エックス:「バカは風邪引かないから大丈夫だ」


ベルナデッタ女教皇:「エックスあんた…相変わらずね…」


ジャンヌ:「大変だったけど、全員無事だよ」


 シノの脳裏にはヴェルン要塞で自分たちが全滅した光景が浮かんだのか、苦い顔をして言葉を挟む。


シノ:「………ま、ノブナガが自分の腹ぶっ刺したくらいだな」


ベルナデッタ女教皇:「はぁ!? ちょっと! 大丈夫なんでしょうね?」


ノブナガ:『問題ない』


 ベルナデッタは安堵の息を漏らして、話を続ける。


ベルナデッタ女教皇:「活躍の噂は聞いてたけど、健康第一なんだから、ケガとかしたらすぐに治療するのよ」

「あとちゃんとご飯も食べるのよ、ムカつくことにリックのご飯はおいしいから大丈夫だとは思うけど」


リック:「それ誉めてんのか…?」


ベルナデッタ女教皇:「誉めてるわよ! こんなの世の中だから、ちゃんとした生活ってわけにはいかないだろうけど…一応あんたたちの心配してるんだからね?」


ジャンヌ:「ベル姉は優しいですね」


マーキュリー:「ベルナデッタせんせー。リックがプリンつくってくれませーん」


リック:「いや…ほら…戦争終わったら…な?」


エックス:「献立のメニュー決定権をいつも独占してまーす」


リック:「俺が作るからそうなるに決まってるだろ!」


エックス:「俺は毎日肉を入れろって言ってるのに…」


リック:「確保できるわけないだろ!」


エックス:「…そう…だな」


 エックスはノブナガの騎獣の方を見つつリックへ言葉を返す。


ノブナガ:『なんだ。買い取るなら構わんぞ』


ベルナデッタ女教皇:「…ほんと、アンタたち相変わらずね…」


マーキュリー:「ベルこそ大丈夫なの? 戦争も激化してるからなにか強要とかされてない?」


ベルナデッタ女教皇:「…教会も今人手不足でね、怪我した人を治療する為にみんな出払っちゃってるから、私も少しでも力にならないと、と思ってきたのよ」


ジャンヌ:「ベル姉も頑張ってるんだね」


マーキュリー:「そう…教皇が出ないといけないくらい深刻になってるのね」


ベルナデッタ女教皇:「一応女教皇って身だけど、私だけが教会に籠ってるって訳にもいかないわよ」

「何より、みんなが頑張ってる中で何もしないってのは私が嫌だし」


リック:「…」


ジャンヌ:「うんうん、でも。ちゃんと自分の体調は整えてね。ベル姉は頭脳派だから。あんまり無茶しちゃだめだよ」


ベルナデッタ女教皇:「分かってるわよ、ジャンヌもこいつらのこと頼むわよ」


ジャンヌ:「うん。任せて」


シノ:「………なぁ、教皇様よ。聞けるうちに一つ聞きてーことがあるんだ」


 シノは窓の外を眺めながらベルナデッタに問いかける。


ベルナデッタ女教皇:「何よ、シノ、改まって」


シノ:「………今この状況を経て、お前の思うみんなが笑って過ごせる平和な世界って…どんなもんかなって思ってな」


ベルナデッタ女教皇:「…そうね」

「…私は、私の守れる世界を守るわ、それが、例えどんな犠牲を払うことになっても」


シノ:「……そうか」

「…悪いがオレは任務の準備がある。共和国のクソ野郎共をぶっ殺さねーといけねーからな…じゃあな」


ベルナデッタ女教皇:「…うん! 久々にあんたたちの顔見たら元気出たわ」


らびっと:「おいおい! 外にあのおぞましいデカブツが来てるってのに!」


ベルナデッタ女教皇:「あんたたちも今から任務でしょう? ほら、行った行った!」


リック:「おい! 殴るだけ殴っておいてそれかよ!」


ベルナデッタ女教皇:「殴られ足りないならまた今度殴ってあげるわよ! ほら、時間は待ってくれないわよ!」


マーキュリー:「ベル…」


ジャンヌ:「あっ…ベル姉…ちょっとだけいいかな?」


ベルナデッタ女教皇:「なによ? ジャンヌも早く行った方がいいんじゃないの?」


ジャンヌ:「ドラゴンも来てる。ここで死ぬ気はないけどさ。もしかしたら、もう会えなくなるかもしれない…だからさ…もし、ベル姉がリックのことで何か思うことがあるとしたら、お話しておかないと、後悔することになるかもしれない」


ベルナデッタ女教皇:「…あぁ、そのこと」

「いいのよ、ジャンヌ、それならもう済んだことだから」


ジャンヌ:「そうなの? まぁ、それなら、いいけどさ」


ベルナデッタ女教皇:「そうそう、さて、あなたも色々気をつけなさいよ?」


ジャンヌ:「うん。またね。ベル姉」


エックス:「実際忙しいしな。また会えてうれしかったぜベル!」


マーキュリー:「ねぇベル」


ベルナデッタ女教皇:「なに?」


マーキュリー:「その…」

「…ううん、なんでも」


ベルナデッタ女教皇:「あら、そう? じゃあ、行ってらっしゃい」


 早く行けと君たちの背中を強く押す。

いつもよりもその腕には力がこもっているような気がした。


 親友との再会もつかの間、巨竜討伐に向けて君たちは軍本部から追い出されるかのように補給所へ向かう。

温まった心が冷めないように、駆け足で。


らびっと:「おめーよ…」

「いいのかよ。もしかすると"もう会えない"んじゃねえの」


 マーキュリーは何も答えず、黙ってらびっとの口塞ぎ、先へ急ぐ。

君たちが去ってすぐ、ベルナデッタの元へとイガルルフタ2世が姿を見せる。


イガルルフタ2世:「…もう良いのか?」


ベルナデッタ女教皇:「…はい。十分すぎる程、あいつらからはずっと元気をもらってますから」

「だから、みんながいるこの国を守りたいって、決意したんです。あの時から、私の意志は変わっていません」


 ベルナデッタは気丈に振舞っていたが、その声は震えていた。

死への恐怖か、友と二度と会えなくなることへの恐怖か、あるいはその両方か。


イガルルフタ2世:「…そうか」


 イガルルフタ2世は、ベルナデッタの様子を理解してもなお、表情を変えることはなかった。

たった一言だけ、彼女に言葉をかける。


イガルルフタ2世:「大儀であった、必ずやこの国を勝利に導いて見せよう」


ベルナデッタ女教皇:「…はい、この国に神のご加護があらんことを」


 ベルナデッタもその言葉に対し、女教皇として言葉を返す。

その言葉は、はっきりと決意のこもった声だった。






[帝都 大通り]


 補給所から帰った大通りでは、兵士から職人まで様々な人たちが忙しそうに走り回っていた。


 作戦の決行まであと7日。

ここを守り切らなければ、間違いなくこの戦争は敗北するだろう。


 今まで亡くなった者たちのためにも必ずここを死守せねばと、全ての国民が自分のするべきことを成そうとしていた。

そんな、夏の日差しが照る中で、君たちを呼ぶ声が聞こえる。


ステラ:「お兄ちゃん! お姉ちゃん!」


 暑い気候の中待っていたためか、その少女は汗を流しながら君たちに抱きついてくる。


ステラ:「良かったぁ…生きてて本当に良かった…」


 汗と一緒に涙が地面を濡らす。

ステラは君たちのことがよほど心配だったのか、抱きしめる両手を離そうとしなかった。


ジャンヌ:「約束は守るって言ったでしょ」

「ほら、みんな無事だよ」


ステラ:「うん! …よかったぁ!」


らびっと:「会いたかったぞ!」


 ノブナガとシノはその様子を一瞥して先へ進もうとした。

その時、遠くからフリーマン大佐の姿が目に入る。

フリーマン大佐もまた、君たちの姿を見て声をかけてきた。


フリーマン:「よう! "青の花"…って、おや? その子は?」


 ステラはフリーマン大佐に驚いたのか、君たちの後ろに隠れる。

シノは足を止めて大佐の方を向き、敬礼する。


ジャンヌ:「うげっ…大佐殿」


エックス:「ステラはこの前保護した子だぞ…ですよ!」


 シノを見習い、思い出したかのようにエックスも敬礼をする。


マーキュリー:「はい。スペタンサルで保護した子です」

「…その、ちょっと訳ありで滅入ってたので否応なく」


フリーマン:「なるほどねぇ…お嬢ちゃんも訳ありって感じか」


 君たちがステラの素性を話すとフリーマン大佐の表情は哀れみに満ちたものへと変わる。

フリーマン大佐は屈んでステラと目線を合わせた後、優しく言葉をかけた。


フリーマン:「ステラちゃん、おじさんの手を見てくれるかな?」


ステラ:「…? 何もないけど…」


フリーマン:「おっと、こいつは失礼! 大事なものを出し忘れていた!」


 フリーマン大佐はわざとらしくそう言い放つと、差し出していた手にもう片方の手をかざす。

その手を開くと、そこには飴玉の入ったかわいらしい袋がいくつか乗せられていた。


ステラ:「わぁ…! お菓子だ!」


フリーマン:「俺の十八番でね、かわいい女の子は大体これで落としてるんだ」


リック:「いや…なんかそれすごい誤解生みそうですけど…」


フリーマン:「誤解? いやいや言葉通りの意味だぜ?」


 フリーマン大佐はいつも通りの様子で言葉を受け流す。

ステラは目の前のお菓子に興味津々といった様子で話をまるで聞いていないようだ。


ステラ:「えっと…これ…」


フリーマン:「もちろんあげるよ、だって君のために俺が"魔法"で取り出したからね」


ステラ:「わーい! ありがとう!」


 すっかりステラはフリーマン大佐に心を開いたようで、お菓子を受け取ったあとは物怖じせずに話を続けていた。

久々に見たステラの笑顔を見て、君たちも安堵することだろう。


フリーマン:「その荷物だと"青の花"は今からコンラート大橋に向かう最中か?」


シノ:「…はっ! その通りであります」


エックス:「防衛設備建設の手伝いをすることになってる…ます」


フリーマン:「そうだな、俺は今から民間人を保護している地区に行くわけだが…ステラちゃんも一緒にどうだい?」

「ここも、もうじき危なくなるから、おじさんがエスコートしてあげよう」


ステラ:「え…でも…」


フリーマン:「ほらほら、君がお兄ちゃんとお姉ちゃんを心配するように、お兄ちゃんとお姉ちゃんも君のことを心配してると思うぞ? なぁ、"青の花"?」


マーキュリー:「はぁ…流石に人と殺りあってるところを見せたくはないわね」


シノ:「……大佐に連れて行ってもらえ」


ジャンヌ:(まぁ…大佐はとても怪しくて、不審な人だけど、今のところ悪い人ではないからなぁ)

「大丈夫だよ。ステラちゃん」


クアム:(一緒にいたいけど…)


シェリー:「シェリーも戦えないからちょっと遠くで見てるんだよー! 一緒に行くと危ないから、守ってくれるとこ連れてってもらったほうがいいよ!」


エックス:「大佐のとこなら安全だろうしな、連れてってくれるってんならそうしてもらえ」


らびっと:「安心しな。こんな頼りない男じゃなくて俺がまもってやるからよぉ…」


シノ:「…マーキュリー、そいつを黙らせろ」


マーキュリー:「あんたはこっちでしょ」


 マーキュリーは、ステラの元へ向かうらびっとの耳をひっぱり、制止する。


らびっと:「イテテテテテ…!!」


ステラ:「…ねぇ、良い子にしてればちゃんと帰ってきてくれる…?」


リック:「おう! ちゃんといい子にして待ってるんだぞ!」


ステラ:「うん、わかった。じゃあちゃんと良い子にしてる!」


ジャンヌ:「また、約束だね」


クアム:「あ、ステラ…」


ステラ:「どうしたの? クアム」


クアム:「いや……なんでもない…」


ステラ:「? そっか」


フリーマン:「てなわけで、ステラちゃんは任せてくれ、俺がしっかり送り届けよう」


クアム:「ステラ!」

「…また遊ぼ」


ステラ:「…うん!」


マーキュリー:「よろしくお願します」


エックス:「お願いするぜ…ます!」


 フリーマン大佐はステラの手を引いて歩いていく。

ステラは、姿が見えなくなるまで、ずっと君たちに手を振り続けていた。


ステラ:「あ…そういえば返すの忘れちゃった…」


 ステラはポケットから弾丸を取り出し、握りしめる。


ステラ:「…もうちょっとだけ…借りてよう」


 角を曲がり、少し人気がなくなった場所でフリーマン大佐はステラに話しかける。


フリーマン:「…それにしても、ひどい話だよなぁステラちゃん」


ステラ:「…?」


フリーマン:「"君のお父さんの命を奪った人たちが、君のことを助けようとする"なんてさ」


 フリーマン大佐のその表情は、先ほどとは真逆な、悪意に満ちた笑みだった。


 それから数日後、コンラート大橋にて巨竜を率いた共和国軍と帝国軍が全面衝突。

大勢の死者、負傷者を出したこの戦いは、この戦争が"コンラート戦記"と呼ばれる由縁となった大きな戦いとなる。






[決戦前 コンラート大橋 城門にて]


 大地が揺れる。遠くから地鳴りが迫ってくるのを肌で感じる。

帝国を守る最後の城門、その頂でイガルルフタ2世が叫ぶ。


イガルルフタ2世:「兵士たちよ、よくぞ恐れずにこの場にとどまってくれた」

「諸君らが根を下ろした国の主となれたことを誇りに思う」

「我々の守るべきものはなんだ」

「家族か、恋人か、それとも友人か」

「そう、諸君らが心に描いたものを含めての国だ、我々の帰るべき場所だ」

「ここで今、我々が立ち上がらず誰が守るというのだ」

「希望は絶望を知る者の胸にこそ沸くものだ」

「例え、今、我々の進む道がいばらの道だとしても」

「必ずその先に希望はある」

「その意志は"奇跡の種"となり、この国に新たな実を結ぶだろう」

「諸君らの命は消して徒花ではない」

「その身体で、その命で、"奇跡の花"を咲かせてみせよ!」


 兵士たちが雄たけびを上げる。地面がもう一度大きく揺れる。

巨竜はすでに目の前に迫っていた―――。






[決戦 コンラート大橋]


 コンラート大橋の入り口にて衝突が起こる。

共和国兵の勢いはすさまじく、第一防衛線にいる兵士たちも次第に飲み込まれていく。


帝国兵士:「くそっ…囲まれた…だがこれだけは撃たせてもらう!」


 帝国兵士は巨大なバリスタを操作し、魔法の行使を防ぐために作られた対巨竜用拘束弾を装填する。

巨竜の口元に狙いを定め、引き金を引く。

放たれた弾は蜘蛛の巣状に広がり、巨竜の口を塞ぐ。


帝国兵士:「帝国に栄光あれ!!」


 周囲の共和国兵に切り伏せられ、帝国兵士は橋の下へと落ちていく。

その間にも"青の花"は着々と巨竜を足止めする準備を進めていた。


 バリスタに乗り込むシノとエックス。

巨竜をこれ以上進ませまいとお互いに拘束弾を放つ。


エックス:「やっぱり単純な武器が一番なんだよな!」


マーキュリー:「それは負け惜しみ?」


エックス:「ま、負けてねーし」


マーキュリー:「時代は銃よ。弓なんて原始人の武器じゃない?」


 そう言いつつ、マーキュリーは近づいてきた兵士の頭を撃ち抜いた。

その横でノブナガは魔動機術【スモーク・ボム】を足元へ打ち込み、迫りくる共和国兵の視界を奪う。

魔動バイクと知覚共有しているノブナガには、煙の中にいる共和国兵の位置が手に取るように分かるのだ。

前が見えなくなった敵兵を一人ずつ、確実に仕留めていく。


 ならば、と共和国兵も妖精魔法【サモンフェアリーⅢ】を行使し、魔法による知覚でノブナガを捉えようとする。

煙の中が怪しく光ったかと思うと、炎が渦巻き、その中から2mほどのトカゲの妖精"サラマンダー"が出現する。

サラマンダーはノブナガに飛び掛かり、鎧ごと体を食いちぎろうと炎を纏った牙を突き立てる。


ノブナガ:「ふんっ!」


 ノブナガはその一撃を意に介さず、片腕で受け止める。

突き立てた牙は金属の籠手を溶かし、皮膚へと食い込み、流れる血が滴るより早く妖精から発せられる熱波によって蒸発していく。


 しかし、噛みついたということはノブナガの間合いに入ったということである。

即座にノブナガはランスを短く持ち直し、サラマンダーの頭へ削ぐような一撃を放った。

近距離でその切っ先を躱そうとしたサラマンダーは回避しきれず、その一撃を受け、牙がへし折れる。

サラマンダーは体制を立て直そうと後方へ飛び退き唸り声をあげる。


 煙の外にも熱が広がっていく。

エックスとマーキュリーもすぐさまノブナガの援護に回る。


マーキュリー:「ちょっ…前見えないんだけど」


ジャンヌ:「二人とも、<蝙蝠の耳飾り>持ってるでしょ?」


エックス:「なんかあっちから聞こえる思ったら、そういうことか!」


 そう言ってエックスは、耳飾りから発せられた超音波が反射してきた方向へと矢を放つ。

しかし、煙を引き裂き、放たれた矢は何もない場所へ突き刺ささり、妖精から感じ取れる強力な熱波も健在だった。


エックス:「あれぇ!?」


マーキュリー:「やっぱ弓矢は時代遅れだわ…」


 その様子を見て、銃のほうが優れていると言わんばかりにマーキュリーは妖精に向かって引き金を引く。

煙に穴が開くと同時に、サラマンダーの胴体にも風穴が空き、体勢を崩した。

その隙をノブナガは見逃さず、一気に間合いを詰めて≪必殺攻撃≫を繰り出す。

見事に急所を捉えたその一撃により、妖精はその姿をとどめていられず、たちまち消滅する。


―――その時。


 帝都を包み込むように光の柱が現出する。

温かな光が君たちを照らし、柱の中心からは、隆々とした体躯の甲冑を纏う巨人が現れる。

右手に剣、左手に太陽を持つその姿を見て、君たちは正しくその存在が"太陽神ティダン"であると認識するだろう。


 太陽神は巨竜を睨み付けると共和国の兵士ごとその剣で薙ぎ払う。

大勢の敵兵が川底に落ちていく中、その一撃を巨竜は体で受け止めた。

そのまま大きく咆哮すると、巨竜は大剣を払い退け、すべてを飲み込むような大きな口を開いて、大牙を太陽神の首もとへ突き刺す。


 大剣を投げ捨て、太陽神は大牙の主を引きはがそうとするが、その巨体が動くことはなかった。

ならば、と、左手に掲げる太陽を竜の腹めがけて思い切り叩き込む。

直後、巨竜の体は業火に包まれ、見る見るうちに肉が溶けていった。


 火の粉が降り注ぐ中、悲鳴を上げて敵兵が撤退していく。

最後の肉片を残らず焼き尽くすと、骨となった巨竜と組み合ったまま、太陽神も力なく川底へと沈んでいくのであった。

太陽神の姿が蒸発するように消え、光の粒が降り注いでは溶けていく。


 その美しい光景の中、ベルナデッタがこの奇跡を起こしてみせたのだと理解し、そして、彼女の死についても悟った君たちは、ただ立ち尽くすばかりだった。

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