8.シノの独白2


[スペタンサル 近郊の森]


 巨竜から逃げ切り、負傷したノブナガが起きるまで一息つく。

平常心を保つため、いつものルーティンである武器の手入れを始める…。

しかし、手が震えて思うように作業が進まない…。


 巨竜せいだ…話には聞いていたが、間違いない…圧倒的な存在感を放つそれはオレ達に追ってきた。


 共和国兵士の足止めを喰らいながら、どうにか竜を振り切り…今に至る…。


 100年前にあった蛮族共の大侵攻<大破局>…。

ここティニドラ島では巨竜の力を借りて蛮族の駆逐に成功した…。

そして巨竜は地底深くで眠りにつき、共和国はその教えを守っているという。


 共和国のクソ野郎共、まさかこの戦争に竜の力を使おうってのか…。

人と人との生存と尊厳を掛けたこの戦いに…許せねぇ。


 しかしあの竜、噂に聞いていたほどの強さではなかった…いや、圧倒的な強さは感じたがだいぶ動きが鈍かった…。

本領を出せていない、そんな感じだった…オレ達では絶対に勝てない、そう痛感させられた…。


…あの威圧感、今思い返しても手が震える。

撤退中に照準がズレなくて本当に良かった…。


……どうやらノブナガが起きたようだな…合流地点へ向かうとするか。


…オレは、弱い。

弱いままでは救えない……。

もっと強くならなければ…救えない…。


力が無ければ……救えない…。

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