7.ペルセム街道撤退作戦
[スペタンサル 町の外れ]
門をくぐり、スペタンサルから次の目的地である国境付近へ歩き出す。
軍の指令により、国境付近まで上がった前線で戦うためである。
これからさらに戦争は激化するだろう、自分達はもうここに帰ってこれないかも知れない。
そんな緊張感が泥のように足取りを重くする。
それでも、その中を一歩、また一歩と君たちは歩みを進める。
これ以上悲しむ人増やさないために。
少女の涙をもう見なくて済むように。
そうやって君たちが歩き続けると、後ろからスペタンサルで見た兵士が追いかけてきた。
息を切らしながら、君たちの方へ駆け寄ってくる。
兵士:「"青の花"か!? たった今、"ハト"による伝令が入った!」
「にわかには信じがたいが…共和国の兵士が巨大な竜を連れてこちらへ向かってきているらしい」
リック:「竜って…100年前に蛮族を駆逐したときに居たって言われてるあの巨竜か…!?」
兵士:「ああ、どうやらそのようだ。現在は帝都を目指して一直線に歩いてきている」
リック:「じゃあ…このままだとスペタンサルも危ないんじゃないか!?」
兵士:「…スペタンサルにはもう敵兵が流れ込んできている。どうやら前線が共和国側へ上がったときにそこに伏兵として忍ばせていたらしい」
「既に住民の避難は開始している、間に合えば良いのだが…。それと"青の花"にも新たな伝令が来ている」
兵士は懐から伝令書を取りだし封を切る。
そして声に出して内容を読み上げる。
兵士:「君たちは住民の避難が終わるまでスペタンサルに残り、進軍してきた共和国兵士の足止めをせよ」
「避難した住民は森の中のキャンプ地で保護する。合流地点はペルセム街道を通って地図にかいてあるポイントだ」
ノブナガ:『了』
耳を澄ませば遠くの方から地鳴りが聞こえる。
心の底から冷えていくような恐怖心が君たちを襲うだろう。
ジャンヌ:「これが竜の足音なんですか? 見えていないのに、ここまで聞こえるなんて」
マーキュリー:「うそでしょ…」
シノ:「…共和国のゴミ虫共、ついにトチ狂いやがったか…」
エックス:「竜なんて、本で読んだ別大陸の冒険譚みたいな話だな」
マーキュリー:「えぇ、そうね。本の中で収まってくれたらよかったのにね…」
リック:「とにかく、急がないとまずそうだな…」
ノブナガ:『さっさと行くぞ』
ジャンヌ:「ボクたちの任務は共和国兵士の足止めですよね」
シノ:「……」
(妙に嫌な胸騒ぎがするな…)
君たちは急いでスペタンサルへ戻るのだった。
[スペタンサル ステラの家]
家の外では悲鳴や怒号が飛び交う。
誰かが助けを呼ぶ声が、そこら中から聞こえてくる。
その中で、ステラと母親は逃げ出すための身支度を整え、家を離れようとしていた。
ステラの母親:「急いで、ステラ!」
母親がステラの手を握って玄関へ向かう。
その刹那、扉が蹴破られ、共和国の兵士が一人武器を構えて入ってくる。
咄嗟に母親がステラを庇うように抱き抱える。
共和国兵士:「…女と子供だけか…おい、外へ出ろ」
兵士は剣を使って二人に外へ出るように合図する。
母親は警戒しながらもステラの手を引いて外へ出ようとした。
しかし、ステラはその手を振り払い、兵士に向かって小さな体で飛びかかった。
ステラ:「返してよ…お父さんを…お父さんを返してよ…!」
抱えていたぬいぐるみを地面に投げ捨て、兵士の足を必死に叩く。
自分の手が赤くなって血が滲んでも、その手を止めることはなかった。
共和国兵士:「おいこのガキ…! 抵抗するならば子供であっても容赦はしないぞ!」
兵士は構えていた剣を振り上げる。
小さな命を奪おうとする刃先が怪しく光った。
母親が飛び出し、その腕を間一髪で押さえ込む。
絶対に離してはならないと、必死な形相をしたままステラに言葉を投げ掛ける。
ステラの母親:「早く逃げなさい!」
ステラ:「やだ! お母さんも一緒じゃないと!」
ステラの母親:「早く! "お母さんに何があっても、あなたは生き延びて"って、約束したでしょう!?」
組み付かれた腕を兵士が振り払い、切っ先が母親へと変わる。
ステラの母親:「…!」
ステラ:「やだ…! やめて! やめてっ…!!」
その声は届かない。
無慈悲にもその刃は母親の首を確実に捉え、鮮血が飛び散る。
ステラ:「あ…」
少女は足元に転がった"それ"を拾って走り出した。
振り向かずに、ただただ遠くへ逃げ出した。
悲鳴や怒号がこだまする。
誰かが助けを呼ぶ声は、いつの間にか聞こえなくなっていた。
[スペタンサル 南門]
君たちがスペタンサルへ戻ると、そこは既に戦場と化していた。
帝国兵が住民をかばいながら共和国兵と交戦している。
街の建物はいくつも倒壊し、血を流したまま動かなくなった人が辺りに転がっていた。
ノブナガ:『市街地戦だな』
マーキュリー:「リック、シェリー。安全なところへ。フォローをお願い」
リック:「あぁ、任せろ!」
シェリー:「うん!」
ジャンヌ:「避難誘導と、怪我人の治療は任せて」
シノ:「……テメェら…何してやがる」
目に見える敵兵の頭部を的確に狙い、シノはトリガーを引く。
シノ:「ちっ、クソが!」
ジャンヌ:(ステラちゃんたち…無事逃げられているといいのだけど…)
エックス:「共和国軍の足止めは任せとけ!」
マーキュリー:(ここは戦場。情はいらない。ここにあるのは殺すか殺されるかだけ)
マーキュリーが魔動機術【グレネード】を行使すると、耳に着けていたピアス型のマギスフィアが形を変えた。
らびっと:「グレネード。準備完了だ!」
マーキュリー:「了解らびっと。ファイア!」
無心のままに敵兵目掛け、【グレネード】を放つ。
その直後、爆発が巻き起こり、辺りに火が燃え広がる。
"青の花"は住民が北門へ向かえるように、残った兵士と協力して敵兵を蹴散らしていった。
周囲からはもう声が聞こえなくなり、住人の半数が避難したのを確認すると、自分たちにも撤退命令が下る。
地鳴りが次第に大きくなる。
君たちはペルセム街道へと走る、振り向くと巨竜がスペタンサルを踏み潰し迫ってきた。
[ペルセム街道]
???:「…も~~~~っ!! 邪魔だなぁーーーーー!!」
真語魔法【ファイアーボール】を共和国兵に向かって放つタビットの姿がそこにあった。
ジャンヌ:「ここは危ないです! 民間人は逃げてください…って…え?」
ノブナガ:『先にいってよいか? 後ろがつかえているのだが』
エックス:「すげー! 初めて見たぜシン=ゴ魔法!」
シノ:「………」
マーキュリー:「タビット…?」
???:「んな!? 敵の援軍か!!」
シノ:「…我らは帝国軍所属"青の花"だ」
ジャンヌ:「タビットさん! 所属と名前は!?」
???:「お…オイラ?」
ジャンヌ:「はい! 帝国の方ですよね?」
クアム:「オイラはクアム・トリスティーチア、スペタンサルで警備をしていた者だ」
らびっと:「うさぎ! うさぎだと!」
クアム:「んなっ!? ぬいぐるみが喋った!?」
らびっと:「ははっ! 超有能うさぎ型マギスフィア! らびっと様だ!」
クアム:「らびっと…。よ、よろしくな?」
ジャンヌ:「ボクはジャンヌ。クアムちゃんよろしく。後ろには巨竜。前には共和国兵。いきなり厳しい状況だけど、まずはここをみんなで乗り切ろう!」
エックス:「俺はエックス! ダイエーユーだ! よろしくな」
マーキュリー:「マーキュリーよ。よろしく」
クアム:「ジャンヌとエックス、それとマーキュリーか、よろしくな! そうなんだよぉ~オイラもそれで困ってて…」
「お前たち"青の花"なんだよな?? オイラもお前たちを援護するから助けてくれないか?」
ノブナガ:『いいだろう。働け』
クアム:「なっ…お前、キビシイな…」
ノブナガ:『口調は昔からだ。気にするな』
シノ:「…誇り高き帝国兵は仲間を見捨てない、遅れるなよ…」
クアム:「…頑張るよ。なんてったってオイラ………と、今はそんな状況じゃなかったな」
"青の花"とクアムは自己紹介を終え、先へと進む。
その途中、何かに気が付いたリックが、一人呟く。
リック:「…あそこのテントの上…ずっと鷲がうろうろしてんな…」
エックス:「余裕があったら覗いてみるか?」
マーキュリー:「じゃあエックスは餌になりなさい、私は先行くから」
ノブナガ、ジャンヌが前に出て敵の注意を引き付ける。
エックス、シノ、マーキュリーは矢弾を放ち、敵兵を蹴散らしていく。
クアム:「おまえたち……撃つの好きだな」
シノ:「……お前も魔法撃ってるだろ」
クアム:「なっ! …"灯台元暗し"だよ」
ジャンヌ:「クアムちゃん、難しい言葉知ってるんだね!」
クアム:「オイラ、魔法を学ぶために色々勉強したんだ」
そんな会話をしている間にも正面にいる敵兵の数は減っていく。
後方から迫りくる巨竜に追い付かれないように、駆け抜ける。
クアム:「は~~…さすが青の花だなぁ」
ジャンヌ:「望んだわけじゃないけど一応"青の花"なんて、名乗ってるんだもの。名に恥じないように努力はするわ」
ノブナガは騎獣が敵を薙ぎ払っている間に、マーキュリーに操霊魔法【ファナティシズム】を行使した。
マーキュリーの瞳に闘志が宿る。
ノブナガ:『さっさと働け』
マーキュリー:「まぁありがたく受け取っておくわ」
エックス:「この前、本で読んだぞ。つんでれってやつだ」
クアムが再度【ファイアーボール】を行使する。
火球が浮かび上がり、敵兵を一掃していく。
エックス:「これが攻撃魔法か!」
マーキュリー:「ふーんやるじゃない」
ジャンヌ:「これを切り抜けたら、クアムちゃんも交えておいしいもの食べようね!」
らびっと:「やるな! 俺のほうがちょい上だけどね!」
クアム:「ハハ、オイラも負けてられないな」
撃ち漏らした敵兵が、クアムへ襲い掛かる。
エックスがすぐさまカバーに入り、矢をつがえる。
エックス:「ゼロ距離で撃てば…矢は外さねええええええ!」
放たれた矢は、見事に敵兵の心臓を撃ち抜いた。
クアム:「な…アグレッシブな戦い方だなっ」
湖にかかる橋を皆が駆け抜ける。
どこからか飛んできた弾丸がクアムの左肩を貫いた。
クアム:「うがっ…!」
さらに敵兵が、ジャンヌに向けて矢を放つも、その堅い鎧に阻まれる。
クアム:「お…お前全然痛くなさそうだな」
ジャンヌ:「そんなことよりクアムちゃん大丈夫ですか?」
クアム:「…」
肩を抑えていた手を下ろし、
クアム:「…ごらんの通りだ」
間髪入れずに襲い来る敵兵を、ジャンヌがその身を持って制止する。
ジャンヌ:「さぁ、クアムちゃん! ボクごと巻き込むのです!」
クアム:「う、恨まないでよ~~~…?」
ジャンヌ:「大丈夫。ボクには神様が付いているから」
クアムは片目を瞑りながら敵兵めがけてジャンヌもろとも【ファイアーボール】を放つ。
先ほどよりも強力な爆炎が対象を焼き払う。
敵兵が燃え、橋から落ちていく中、ジャンヌは何ともないといった表情で親指を立てる。
ジャンヌ:「グッドジョブです。クアムちゃん」
クアム:「ハハ。…えっと…ありがとう」
マーキュリー:「これも戦略の内ね…」
ノブナガ:『あいつには明智の才がある』
ジャンヌは神聖魔法【キュア・ウーンズ】を行使。
二人の傷を癒し、態勢を立て直す。
クアム:「おぉ…これが神聖魔法か!」
ジャンヌ:「うん。神様の力だよ」
(あれ…タビットって神様の声が聞こえないんだっけ)
その横を駆け抜けるノブナガの気迫に押され、敵兵は慌てた様子で矢を放つ。
しかし、彼はその一撃をものともせず、敵兵にランスを突き刺した。
クアム:「鎧の…あいつも痛くなさそうだな」
マーキュリー:「あいつ、放っておいても死なないから大丈夫よ」
クアム:「そうなのか」
マーキュリー:「中身も堅いし、参っちゃうわぁ」
マーキュリーはため息を吐く。
ノブナガはそんな言葉には耳を傾けず、木の向こうへ走る。
その先にはテントから森羅魔法【イーグルビジョン】を行使する敵の指揮官が居た。
姿を見るや否や、ノブナガは指揮官にランスを振り下ろした。
あとを追うエックスは、ノブナガが走っていった方向から違和感を覚える。
エックス:「おいおいなんかあっちにいるぞ!」
マーキュリー:「…バカが1周回って鋭くなってる?」
クアム: 「…はっ! 茂みに敵兵がいる!」
クアムが指をさした方向から、隠れていた狙撃兵が姿を現す。
彼はクアムに向かって弾丸を放つ。
その一撃は足元で跳ね、土煙を上げた。
クアム:「うわっ!」
シノ:「……走るぞクアム、死にたくなければついてこい」
クアム:「わ…わかったっ! えっと誰だったっけ…」
シノ:「……シノだ」
クアム:「シノ! シノって言うのか」
隠れていた敵兵に撃たれながらも、ノブナガを筆頭に"青の花"は敵の指揮官と交戦を始める。
指揮官が森羅魔法【フリージングブレス】を行使した。
それに合わせて狙撃兵の一撃がジャンヌに放たれ、彼女は気絶する。
想定外の危機にエックスが動く。
エックスはポーチからアウェイクポーションを取り出し、ジャンヌに振りかける。
エックス:「起きろジャンヌ! 大丈夫か?」
マーキュリー:「ふーん、バカなりに用意してたものがあるのね」
ポーションの効果を受けたジャンヌは意識を取り戻し立ち上がるが、傷は深いようだ。
ジャンヌ:「あ…あれ…ボク…何をしてたっけ。ありがとうエックス。お姉ちゃんしっかりするね」
「すみません。ジャンヌ・ポワティエ、戦闘に復帰します」
エックス:「2年前に買ったやつだけど…効果あったようでよかったよかった」
ジャンヌ:「えっ…消費期限は?」
エックス:「書いてないから大丈夫だ!」
マーキュリー:「ジャンヌ、お腹痛くならないでね…」
ジャンヌが倒れていた間にもノブナガは指揮官と交戦を続ける。
強力な森羅魔法の前に、ノブナガは少しずつではあるが押されていく。
らびっと:「これは…まずいんじゃないか!?」
合わせて狙撃兵がノブナガを撃つが、かろうじてその一撃は急所から外れる。
らびっと:「危機一髪だぜ」
マーキュリー:「らびっと」
らびっと:「おっと、OKだぜ」
らびっとがそう言うとマーキュリーは【グレネード】を放つ。
テント周辺を炎がつつみ、その炎の中でノブナガが指揮官にとどめを刺す。
ドワーフであるノブナガには炎が効かないことを知っての連携だ。
待ち伏せしていた敵兵は、指揮官を失い蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
"青の花"はその様子を確認し撤退を再開するも、ノブナガだけはその場に残る。
部隊のしんがりを務め、狙撃兵の前に立ちはだかるためだ。
シノ:「…ノッブ、あとは任せた」
ジャンヌ:「…ノッブ、先にポイントに行ってるからね」
クアム:「み…みんなっ、あの、ノッブって人はいいのか!?」
マーキュリー:「あいつなら大丈夫でしょ」
「ここで死人出すほうが、彼にとって恥よ。あいつしぶといし、踏まれても死なないでしょ。今はここを去る事が、あいつにとって本望よ」
ジャンヌ:「うん。大丈夫。"青の花"はボクたちだけじゃないから」
「リックとシェリーもいて、全員で"青の花"なんだ」
エックス:「ノブナガ、死ぬなよ!」
湖の向こうから巨竜と敵兵が迫りくる。
ノブナガは皆が撤退したのを確認すると、狙撃兵との一騎打ちを止め、自身の腹にランスを突き立てる。
狙撃兵:「き、貴様何をしている!?」
しかし、これは彼の策だった。
最後の力を振り絞って地面に文字を書く。
ノブナガ:『貴様らに捕まるくらいなら死んだ方がマシだ』
狙撃兵:「ふん…。捕虜になることを嫌ったか…」
ノブナガの推測通り、狙撃兵はその場を去る。
彼への注意が無くなった頃合いを見て、森の中に潜んでいたリックとシェリーが飛び出す。
リック:「今だ! シェリー! ノッブを回収するぞ!」
シェリー:「わかったよー!」
後方から敵兵が追走してくることはなかった。
薄暗い森の中で、迷わぬようキャンプ地点を目指す。
不気味な鳴き声がどこからか聞こえる。
どこまでも続いているかのような深い森は、君たちの行く末を暗示しているかのようだった。
[スペタンサル近郊の森]
クアム:「…はぁ……はぁ」
「もう追ってこないみたいだな」
ジャンヌ:「そうだね。なんとか、なったねぇ」
シェリー:「みんなお疲れー!」
マーキュリー:「シェリぃいいいい」
シェリー:「まーきゅりぃぃぃいいい」
マーキュリー:「うぅ…ここは天国」
エックス:「お疲れ! ノブナガはどうだ?」
リック:「ノッブも容態は安定してるし、もうそろそろ目も覚ますだろ」
ジャンヌ:「さすがリック! ノッブのこと任せて正解だったね」
らびっと:「はは! たいしたやつだ! まぁオレのほうがしぶといけどな!」
クアムはみんなの前に移動して頭を下げる。
クアム:「あの…まずジャンヌだっけ。さっきは巻き込んですまなかった」
ジャンヌ:「どうしてクアムちゃんが謝るの?」
クアム:「巻き込めって言われたけど、オイラ、ドラゴンが来てて焦ってたから手加減できなくてよぉ」
ジャンヌ:「あぁ、それならボクだって焦ったよ。あんなでかいドラゴンなんて見たことないもんね」
シェリー:「シェリーもびっくりしたー! ちょっと気になって近づいたら怖かった」
ジャンヌ:「だからこそ、ボクはクアムちゃんに感謝してるんだよ?」
マーキュリー:「シェリー…もう、下がってっていったのに。まぁそれでノッブが助かったからいいけど」
シェリー:「リックに任せようとも思ったんだけど、シェリーも"青の花"の一員だもんね! みんなが頑張ってるからシェリーもがんばる!」
マーキュリー:「もぉ…怒ってやろうって思ってたのに…」
ジャンヌ:「もう! シェリーはいい子だなぁ!」
ジャンヌはシェリーを抱きしめ、子供をあやすかのように頭を撫でる。
クアム:「…それで、おまえたち、ステラっていう髪の毛がピンク色の子を見なかったか?」
シノ:「………」
クアム:「"青の花"なら何か知ってるんじゃないかと思ったんだけどよ…」
ジャンヌ:「えっ? ステラちゃんのこと…知っているの?」
マーキュリー:「…?」
マーキュリーはステラという名前を聞き、クアムの方に振り返る。
エックス:「クアムもステラを知ってるのか? うまく逃げれてるといいんだがな」
クアム:「あぁ、オイラ、ステラと友達なんだ」
「オイラ一般市民の避難誘導してたんだけど、その時にも見当たらなくてよ…」
シノ:「………オレたちがスペタンサルに戻った時には、見かけなかったな」
クアム:「そうか…」
エックス:「俺も見てねえなぁ…今から探しにもいけねえし、避難してくれてることを祈ろうぜ」
クアムは悲しい顔をして俯く。
リック:「俺たちも前線に出ようとしたところに丁度声がかかったからなぁ…スペタンサルで起こったことはなぁ…」
シノ:「……オレは"眼"が良い、共和国のクソ野郎共の脳天をぶっ飛ばしながら探しては居たが…」
「…ただあの子は1人じゃない、母親がついてやっていた筈だ…。上手く逃げていてくれればいいのだが…」
クアム:「そうだな…」
ジャンヌはクアムの手をつかみ優しく語る。
ジャンヌ:「大丈夫だよ。ステラちゃんは賢い子だから、きっとこの先の避難所にお母さんと一緒に逃げてるよ」
クアム:「なっ!? え…と」
「オイラには家族とかも居ないし、友達って言えるのもステラくらいだから」
「あいつに何かあったらって考えるとよぉ……オイラ…オイラ…」
マーキュリー:(また厄介ものを抱えたわね…)
シノ:「……残念だが、今のオレ達に出来るのは…無事を祈るくらいだ……」
ジャンヌ:「大丈夫。クアムちゃんがそんな顔してたら、ステラちゃん心配するよ」
クアム:「…そうだな」
シノ:「…これは戦争だ。無慈悲に、そして簡単に人の命なんてのは消し飛ぶ。これは紛れもない事実だ…。お前はその残酷な世界を見せられたら……どうするつもりだ?」
クアム:「そんなこと言われてもな……シノの言葉には答えられないぜ」
シノ:「…そうか…いや、変なことを聞いた。忘れろ…」
マーキュリー:「ふぅん」
リック:「…どっちみち、この先のキャンプにはいくんだ。そこで安否は…わかるだろ」
クアム:「…そうだな…! 確かにそこに行くのが一番だな」
「奇跡を起こす"青の花"と一緒に行けばきっと悪い方には転ばないだろっ」
ジャンヌ:「奇跡かぁ、青の花ってさ、いまでこそ、花言葉は奇跡だけど、昔は不可能って花言葉だったんだよ」
クアム:「けど…お前たちは奇跡を起こしたんだろ?」
ジャンヌ:「でもね、当時の人が頑張って頑張って頑張って、青い花を作ろうとしたんだって、その結果できたのが青の花」
「だから、ボクにとって奇跡っていうのは頑張った証であり、ご褒美なんだよ」
エックスは感心したような表情を浮かべる。
クアム:「そっか。じゃあオイラも手始めにキャンプ地まで頑張って走ってみるか!」
リック:「ちゃんと先導はするから、突っ走るなよー」
クアム:「了解だ!」
マーキュリー:「シェリー、もう少し歩くわよ」
シェリー:「わかったーー!!」
マーキュリー:「ノッブもいい加減に起きなさい…」
リック:「ノッブ…頼む…お前をもう一度担いで走れる気がしねえ…」
ノブナガ:「…どうやら回収してくれたようだな。ありがとう」
普段喋ることのないノブナガが声に出して礼を言う。
リック:「ヘヘ、任せとけって!」
エックス:「しゃべった…!?」
シノ:「……やっと起きたか」
ジャンヌ:「ノッブ、もう起きて大丈夫なの?」
シェリー:「武器も頑張って持ってきたんだよ!」
ノブナガ:『ありがとう』
受け取ったランスをウェポンホルダーに固定する。
マーキュリー:「はぁ全く、世話が焼けるわ…」
ジャンヌ:「ノッブ、死にかけたんだから。今日は安静にしてね」
マーキュリー:「ジャンヌ、それはあなたもでしょ。リーダーがたまたまアウェイクポーション持ってたから助かってるけど」
ジャンヌ:「んー。ボクは全然へーきだけどなぁ。うぅ…安静にしてるの飽きるよぉ」
マーキュリー:「人のこと言う前にまずは自分のこと見なさいよ…全く…はぁ、これだからジャンヌは」
ジャンヌ:「えへへ。マーキュリーにお小言言われるの嬉しいです。みんな生きててよかった」
クアム:「えと、ノッブだっけ。さっきは助かったよ。ありがとう」
ノブナガ:『我の名前はボトリオスフェリヒドロフラン=リアノダンジテルペン=ダンシェンスピロケタールラクトン=ノブナガだ。覚えておけ』
シェリー:「やだ」
クアム:「お…おぉ…よろしくな?」
「改めてオイラはクアムだ。昔から魔法を学んでて、見ての通り真語魔法使いだ」
ジャンヌ:「ようこそ! "青の花"へ! …であってるよね?」
シノ:「………オレたちは皇帝陛下より"青の花"を賜った部隊だ、同行出来ることを光栄に思えよ」
クアム:「ハハ。確かに光栄だな」
マーキュリーはクアムを囲ってるみんなを遠目から見る
マーキュリー:(…全く、馬鹿馬鹿しい。いや…、使えるべきなものは使って損はない…けど)
エックス:「俺はエックス=トゥーサウザンドシックストゥエンティーフォーだ。気軽にエックスと呼んでくれ。ダイエーユーでもいいぞ」
ノブナガ:『もう一度名乗っておこう。我はボトリオスフェリヒドロフラン=リアノダンジテルペン=ダンシェンスピロケタールラクトン=ノブナガ』
『長いからノブナガだけで構わん。騎兵をしている。やはり名残か、何かに乗らないと落ち着かなくてな』
クアム:「えぇっと…エックスに……あーーーえーーー…ノッブ!」
ジャンヌ:「ボク。ジャンヌ! よろしくね!」
クアム:「ジャンヌ。よろしくな」
ジャンヌ:「クアムちゃん、ほんと可愛いね。しかも強いなんて完璧だね」
リック:「俺はリック、戦闘以外なら任せてくれ!」
クアム:「リックか。リックもよろしくな」
「あと…そこの木で寝てる子は…」
シェリー:「んー?」
「ふぁぁあーあ、おきてるよー」
「シェリーふぁぁああーあ…」
クアム:「シェリーって言うのか。よろしくな」
マーキュリー:「ほらシェリーあくびしたら何いってるのかわからないじゃない…」
シェリー:「でもちゃんとクアム分かってくれたよー」
クアム:「おまえはマーキュリーって言ったっけ?」
マーキュリー:「ええ、戦場で名乗ってたの覚えてたのね。よろしく」
クアム:「こちらこそよろしくな」
シェリー:「あ、シェリーも戦闘できないのー! 占いなら任せてね!」
ジャンヌ:「とっても良く当たるんだよ」
クアム:「占い…か。すごいな」
リック:「飯とかなら…俺も自信あるぜ」
ジャンヌ:「リックのご飯は世界一」
クアム:「飯…っ!!!」
ジャンヌ:「毎日ごはん作ってほしいくらいだよ」
クアム:「オイラ、自分の作った飯しか食べたことないから、いつか食わせてくれ」
リック:「あぁ、良いぜ!」
ジャンヌ:「落ち着いたら女性陣で一緒にお風呂入ろう! ね、クアムちゃん」
クアム:「オイラ、男だぞ!」
ジャンヌ:「…えっ?」
クアム:「え?」
マーキュリー:(えっ?)
ノブナガ:(見るからにオスだろう。見てわからないのか)
クアム:「オイラ…男だよォ!」
ジャンヌ:(くっ…あざとかわいい)
シノ:「…はぁ」
シノは興味無さげに銃の手入れをしている。
マーキュリー:「エックス。ちょっと話あるんだけど」
エックス:「……ん? なんか言ったかマーキュリー」
マーキュリー:「はぁ、さっき共闘したとはいっても、このまま面倒みるの?」
らびっと:「ははーん、マーキュん。さては余計なこと思ってるな!」
マーキュリー:「黙れ」
エックス:「クアムの魔法には助けられたしなー、このまま一緒に組んで戦えたら心強いな、うん」
「まあクアムにも自分の所属する場所があるだろうし、キャンプまでの仲になるんじゃねえかなぁ」
マーキュリー:「まぁそれならいいけど、このままあの子にかまうのは…」
「…いやいいわ。エックスに言っても仕方ないし」
エックス:「おいおいなんだよ、気になるじゃねーか」
「なんだよ、俺がバカだからか? マーキュリーは頭いいんだから俺に分かるように説明してくれたっていいじゃねえか」
マーキュリー:「ふん! せいぜいそのない頭で考えなさい!」
エックス:「えー」
マーキュリー:(なんでこんな根も知れない奴と一緒に行動しなければいけないのよ)
クアム:「なななっ、喧嘩はやめてくれよぉ」
マーキュリー:「喧嘩じゃないし。愛情表現よ。こういうの好きだからね。ね? エックス」
エックス:「マーキュリーはいつもこんなんだから気にしなくていいぞ!」
クアム:「そうなのか…」
マーキュリー:「はぁ違うし…!?」
エックス:「それより教えてくれよぉ~なぁたのむよぉ~」
「なぁマーキュリー、どうして教えてくれないんだ?」
「俺バカだからわかんねえよ、頼むよマーキュリー」
「教えてくれよぉ~なぁたのむよぉ~」
「話してくれよ、今晩のおかずやるからよ」
「マーキュリー! せめてヒントだけでもくれよ!」
マーキュリー:「ふん! 知らないっ!」
リック:「うっし、じゃあそろそろ行こうぜ、ステラちゃんの安否も気になるし!」
クアム:「了解だ!」
エックス:「ああ、もうそんな時間か」
リック:「俺が先行する、後ろは任せたぜ」
ジャンヌ:「うん。いつもだけど、期待してるよリック」
シノ:「……お前ら、あんまりはしゃぐなよ…警戒は怠るんじゃねえ…」
整備が終わった銃を担いでシノも歩き出す。
シェリー:「最後尾の警戒はシェリーの仕事なのだー」
ノブナガ:『話は終わったか…ならさっさと行くぞ。時間は限られているからな』
クアム:「オイラも帝国の軍人だからな。しっかり仕事はするぞ」
君たちはキャンプ地へと向かう。
ステラの安否を信じて―――。
======================================
[成長]
PC1
エックス/冒険者Lv5
HP:28/MP:14
シューター5Lv
スカウト3Lv
エンハンサー1Lv
戦闘特技
《ターゲティング》
《狙撃》
《武器習熟A/ボウ》
錬技
【キャッツアイ】
武器:ヘビーボウ
防具:なし
PC2
ノブナガ/冒険者Lv5
HP:33/MP:17
ファイター5Lv
エンハンサー1Lv
ライダー3Lv
戦闘特技
《武器習熟A/スピア》
《両手利き》
《武器習熟S/スピア》
錬技
【キャッツアイ】
騎芸
【高所攻撃】
【チャージ】
【騎獣強化】
武器:ノーマルランス
防具:プレートアーマー
騎獣:ホース
PC3
ジャンヌ/冒険者Lv5
HP:33/MP:27
プリースト5Lv
ファイター2Lv
戦闘特技
《魔法拡大/数》
《魔法拡大/すべて》
《MP軽減/プリースト》
武器:ヘビーメイス
防具:チェインメイル、タワーシールド
PC4
マーキュリー/冒険者Lv5
HP:31/MP:24
シューター5Lv
マギテック2Lv
セージ2Lv
エンハンサー1Lv
戦闘特技
《ターゲティング》
《武器習熟A/ガン》
《両手利き》
錬技
【キャッツアイ】
武器:トラドール、デリンジャー×2
防具:ソフトレザー
PC5
シノ/冒険者Lv5
HP:29/MP:24
シューター5Lv
マギテック2Lv
スカウト1Lv
エンハンサー1Lv
戦闘特技
《ターゲティング》
《狙撃》
《鷹の目》
錬技
【キャッツアイ】
武器:トラドール
防具:クロースアーマー
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