第22話『集いし想い』
「――解……放っ!!」
死角からの一撃。
それを最大限生かす為、誰にも悟られることなく力を貯め続けていた信吾。
力を貯めている間、信吾は完全な無防備状態となるが、これまで全員の関心はセルンという巨大ロボットを操る七輝とそれと相対するサーカシー&堕ちた千手観音に向けられていたため、問題はなかった。
かくして、最大限まで高められた不意の一撃が完成する。
「斬人さん……元の世界のみんな……そして、この世界の平和を愛する人たち……僕に力を貸してくださいっ!!」
その拳に全ての力を乗せ、サーカシーへと間合いを詰める信吾。
この時、初めてサーカシーが迫る信吾に気付くが。
「――? あーらららららら? お雑魚ちゃん二号じゃないですか。お仲間がピンチになってから登場するなんて遅くな~~い? てっきり僕ちん、お前ちゃんはガクブルガクブル震えて引っ込んじゃったのかと思ってましたがねぇぇ? ケキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャ」
常に狂気に支配されていて、且つセバーヌ以外に負けたことがないサーカシーはその余裕な態度を崩さない。
このタイミングで信吾が拳を握りしめながら自分に向かってくるという事が何を意味しているのか。考えようともしない。
それは、何をされようとも自分は敗北しないと心のどこかで確信しているからだ。
ゆえに、次に繰り出されるであろう信吾の一撃を躱すなどサーカシー的には論外。考えもしない。
躱す、つまり避けるという事は逃げるという事。
それは相手の何かを恐れているからこそのものだ。
自身が最強であると自負するサーカシーは卑怯な手段も使う時は使うが決して逃げる事だけはしない。
「これが僕の……みんなの想いを乗せた最初で最後の一撃……届けぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
光り輝く信吾の拳。
乗せられた想いの強さを表すかのような眩い光。
それをサーカシーは「ふふん」と鼻歌交じりに右の
「あらら~~。皇帝に暴力なんていけない子ですねぇぇぇぇぇぇ? こんな貧弱な一撃――」
余裕で受けきろうとするサーカシー。
しかし……まだ終わっていない。
「と……ど……けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
「こんな……貧弱な……貧弱な一撃ぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
ジリジリとサーカシーを押す信吾の拳。
サーカシーにとってはとるに足らないはずの相手である信吾。
その拳に乗せられた想いとやらもサーカシーからすれば所詮は弱者共の想いだ。
しかし、一点に乗せられた想いを馬鹿にすることなど本来誰にもできない。。
弱者といえど、数多もの想いが溜めによって十全に乗せられた信吾の拳は重く、強い。
乗せられた想い。それを乗せた者達は誰も彼もサーカシーには及ぶべくもない弱者だろう。それは間違いない。
だが、そんな弱者たちの想いでも……いや、弱者の想いだからこそ。
たくさん集まればサーカシーという最強のラスボスにも……届くかもしれないっ!
「届け……届け届け届け届け届け届けぇぇっ!! 僕たちの想い……喰らえぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
「こな……クソ……この雑魚が……雑魚がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
光る閃光。
振りぬかれた拳。
つまり――
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「いんぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
サーカシーのおざなりすぎる防御を突破し、信吾の渾身の一撃がサーカシーの顔面へと突き刺さる。
そのまま信吾の拳は降りぬかれ、光の残滓と共にサーカシーが無様にも天空へと舞い上がる。
「――――――――――――」
天空へと舞い上がったサーカシー。
彼の身体は身じろぎ一つすることなく空中を踊り。
その短すぎる踊りの終わりと共に、地面に『べちゃっ――』と墜落する。
「――はぁ……はぁ……はぁ……」
たった一撃。
信吾が練りに練った一撃。
その一撃によって、遂にサーカシーは倒されたのだった――
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